聖女召喚


「ようこそいらした、異界の聖女よ!」

(…ここはどこ?)

いつの間にか頭痛は和らいでいるが目を開けるとそこには中世の宮殿のような光景が広がる


豪華絢爛な部屋の奥にある玉座から王らしき人物が立ち上がり

興奮を表しながら瑞音に声をかける


周りを見回すと礼装を纏った貴族たちも興奮を抑えきれないようでいる


王冠を被る人物が口を開ける

「ここはレイギスという国の首都にあるクレタリア城、

 私は国王のファルエリオ二世じゃ」


(?レイギスなんて国は地球にないはず。

 まさかこれって)


「国のさらなる発展のために

 古文書に記載されておった聖女召喚を行わさせてもらった」


(あちゃー、これあれだよ、異世界召喚てやつ)

心の中で頭を抱える瑞音



「いろいろと急な話だが

 とりあえず確認のためにステータス確認の水晶を使っていただきたい。

 おい用意しろ」


「はっ」


女官が命令を受けて走って取りに行く


「何か飲み物を彼女に出せ」


メイド服を着たものが淡い色をした水を持ってくる


「毒などは入っておらぬ

 ただの果実水だ」


瑞音は恐る恐る口を付け飲む


(ほんのりリンゴ?みたいな味がする

 不思議な飲み物だけどそれならリンゴジュースで良くない?)


そんなことを考えている瑞音に対して

王と宰相はほくそ笑んでいた


(召喚が正しく行われるか半信半疑だったが渡りに船だな。

 一回きりだが我が国の禁書庫にこれほどのものがあるなら父も黙らずに

  使えばよかったものを)

 


(えそうですね王様、

 これで近隣諸国との戦もこちら側の有利な状況で終戦できます。

 もちろんそれだけではなく利益は腐るほどに出ます)



玉座の隣にいたシルエットの細い男が王の問いかけにこたえる

ぼそぼそ話しているようだが

(全部聞こえているんだよな~

 こういう場合は帰れる試しがないって稽古仲間のオタクっ子が言ってたな

 聞かれたらどうしようなんて考えてないんだろうな)




「お持ちいたしました、手をかざしていただければ確認できます。

 それと、余計なこととは思いますがこの指輪をしていただきたいです。

 虚偽の報告を防ぐためです。

 決して疑うわけではないのですが、ご協力をお願いいたします」


宰相はすこし睨み、圧をかける



(はいはいやればいいんでしょ、やれば)


 言われたとおりにする瑞音、

 手をかざすにつれて、薄いプレートのようなものが浮き上がる



_____________________________________

名前 ミズネ クシナダ (櫛灘 瑞音)

性別 女

年齢 17

職業 巫女 (JK)

種族 人間

Lv 25


HP  500

攻撃  250

攻撃魔力 400

回復魔力 1500

速度   350

信仰心 -9000   


スキル.....................


_____________________________________


(これはいいんじゃないか?)

自分のステータスを見て感心する



「お名前、レベル、職業、信仰心の順で教えてください」


「私は櫛灘 瑞音、レベルは25」


「クシナダ ミズネ様、レベルは25」

 女官が瑞音の言葉を確認するように復唱する


「ご職業はやはり聖女ですか?」


「???聖女じゃなくて巫女ですが?」


「で、では、信仰心のほうはいくらでしょうか?」

「-9000ですね」


女官の顔は何とも間抜けな顔になり

宮殿内の温度が急激に下がったように感じられる





(あれまずい?)


瑞音の言葉を聞き、周りに立っていた取り巻きの貴族が騒ぎ立てる


「聖女ではない?」

「私たちが代償をあんなに払ったのに?」

「信仰心がマイナス?まさか聖女ではなく、密教や邪教の信徒では?」

「悪魔の使いだ!主神のマリテネアス様を信じていない!」


(まさかこの人たち巫女を知らない?

 まぁそれもそうかHENTAI国の日本が生み出した文化だからね!)



「静まれ!王の御前であるぞ」


王族派の貴族たちは不満そうに口を閉ざす


「巫女?我が召喚を命じたのは、だが?

 まぁ職業も信仰度も問題だが一番重要なのは何ができるかである。

 ミズネ殿、貴殿は国の全域を覆うほどの結界や死者の蘇生はできるのであろうか」


(結界?それに死者の蘇生?

 そんなことできたら今は国家公安かなんかしらの秘密結社につかまって

 ホルマリン 漬けになっちまうよ!)


「ええと、その。無理ですが」


「なんということだ」

王は玉座から崩れ落ち嘆いている




その一言で貴族は怒号を挙げる、処刑にすべきと



「静まらんか!いいか皆このことは最重要国家機密とする。

 後日改めて、代償の補填をどうするかの会議を行う

 それまでは各々牙をおさめよ!」

宰相は王の代わりにそう告げる


「そこの女はどうするんだ!」


パッとしない一人がそう投げかける


「この女は邪教のものと判断し、東の大陸に放棄する。

 これでよいな?」


「ちょっと待ってください。

 帰ることができないんですか?」


一斉に瑞音のことを見るたくさんの人たち


宰相は首を振って答える


「それはできない、一回だけの片道切符のようなものだ、

 聖女召喚の儀を行ったのに来たものが聖女ではない他の職業で

 しかも信仰心が0でなくマイナスときた。

 残念ながら危険なものを我が国に生かしておくことはできない」


「そんな」


「ウィーントハイム!彼女をどこかのの大陸へ転送しろ!」



「宰相、さすがにこの転送はできません。

 17歳ではありますが、職業が望んだものと異なり

 信仰心がマイナスとはいえ、彼女も人間です。

 生きる権利があると思います」


(いいぞイケオジ!

 そのまま交渉にまで行ってくれ!

 そして安寧な生活をgive me!)

精悍な顔つきをし、ローブを羽織った男が反対の声を上げる


「貴様逆らう気か?

 貴族としての責務を果たせ」


宰相が激を飛ばす



「ですが!」

「くどいぞ!」


こぶしを握り怒りをこらえるウィーントハイム

歯を食いしばり耐え、振り返って瑞音を見る


「すまない、残念だが私は君に残酷なことをしなくてはならない。

 幸運を祈る、テレポート」



魔法陣が瑞音の足元にでき発光する


(まさかそんな急展開ってある?)



気付けば一瞬にして森の中に立っていた



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聖女?私は巫女ですが?[聖女じゃないから追放されたので自由を求めて生きていきます] 水酸化銅水溶液 @poiuytrewq213

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