第15話 崖の道で
朝になりシズフェ達は出発する。
まだまだ、カラバ王国への道は遠い。
火の番を長くしていたノヴィスとノーラは馬車の中で今も寝ている。
ちなみにマディアは先に進むほど道が悪くなるので、馬車に酔って寝ている。
レイリアはそんなマディアの世話をしていたりする。
そして、馬車に乗り進んでいる時だった。
「何だこりゃ!? ここを登るのかよ!!?」
馬車を操っているケイナが驚きの声をあげる。
声に驚いたシズフェが幌の中から先を見ると崖が見える。
道はそんな道を沿うように続いている。
歩いて行く分には良いが馬車が通るのは大変そうであった。
「これは、すごいわね。良くこんな崖に道を切り開いたわね……」
シズフェは崖にある道を見て驚く。
元はただの崖だっただろう。
そこに道を切り開くのはかなり大変だったはずだ。
「確かにな……。普通にやったらかなり金がかかるだろうな。だが、そんな事を考えても仕方がねえ。何とか登ってやるよ」
ケイナは覚悟決めると馬車を動かす。
御者としての腕の見せ所だ。
道を踏み外せば崖に落ちるだろう。
「がが、頑張ってね……。ケイナ姉。落ちないでね」
シズフェはそっと身を乗り出して道と崖を見る。
ほんのちょっとでもズレたら車輪が落ちそうである。
シズフェ達ならば命は助かるだろうが、馬は無事では済まない上に馬車は確実に壊れる。
それは避けたい。
シズフェはドキドキしながらケイナの操縦を見守る。
そんな時だった。
シズフェの耳に微かに人の声が聞こえる。
それは助けを求める声であった。
「あれ、何か声が聞こえねえか?」
ケイナも聞こえたのかシズフェに言う。
「うん、私も聞こえた。誰か人がいるのかもしれない!? 行って来る! ケイナ姉はノヴィスとノーラさんを起こして!」
シズフェは馬車を飛び出し声がした方へと向かう。
「ちょ!? 待て! シズフェ! 1人じゃ危険だ! おい起きろノヴィス! ノーラ!!」
後ろでケイナが呼び止める声が聞こえるがシズフェは構わず走る。
「風よ私を運んで!」
シズフェは魔法を唱えると体が軽くなるのを感じる。
崖を飛ぶように駆けあがり、声がした方へと急ぐ。
声には切羽つまった感じがしたので急ぐ必要があった。
「えっ、何これ!?」
シズフェは声がした現場に来て驚きの声を出す。
そこにいたのはシズフェより少し小さいだけの巨大な蜘蛛であった。
シズフェは過去に
しかし、それでも油断できない相手だ。
「た、助けて……」
見ると丸まったクモの糸から人間の足が見える。
声がするところからまだ死んではいないようだが、このままでは危ない。
シズフェが近づいて来た事に気付いたのか
「その人を離しなさい!!」
シズフェは腰に差した剣を鞘から抜いて叫ぶ。
尻の部分を高く掲げるとシズフェに向けて糸を飛ばしてくる。
シズフェはそれを横に飛んで避ける。
よく見ると
近づくのは危険であった。
魔法の剣ならば粘性のある糸でも問題なく斬れるだろうが、本体がいる限り糸は絶え間なく出してくるだろう。
まずは本体を叩かねばならない。
「雷精よ! 敵を撃って!
シズフェは剣を持っていない左手を蜘蛛に向けると魔法を放つ。
掌から黄色く光る玉が現れると
直撃すると
雷弾はたとえ相手を倒す事が出来なくても、相手を電撃で麻痺させる事ができたりもする。
その間にシズフェは魔法剣で糸を斬り裂きながら
シズフェは飛び上がると
あまり、強くないようでシズフェは安心する。
シズフェは
呻き声が聞こえるので、まだ死んではいないみたいだ。
「大丈夫ですか!?」
シズフェは剣で
近づいて繭のようになった糸を斬ると中から囚われた者が姿を現す。
無精ひげを生やした30歳ぐらいの男性である。
男性はシズフェを見ると驚いた顔をする。
「おお、美しい……。女神様ですか……。私はエリオスの園に行けたのですね……」
そう言うと男性は目を閉じてそのまま動かなくなる。
善人は死ぬと神々の住まうエリオスの園に行き、悪人は魔王の支配するナルゴルの地に堕ちる。
それが、一般的に言われている事であり、
「ちょ、ちょっとしっかりしてください! 私、女神じゃないし! 気をしっかりもって!!!」
そう言ってシズフェは男性を揺さぶるが起きない。
シズフェの声が崖に響くのだった。
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