第6話 ソノフェンの王宮
1つの都市や町が1つの国であるのが普通である。
都市を作る事を考えた時、その立地は重要である。
水源や耕作地の確保も大切だが、まずは魔物から守りやすい土地である事が重要である。
一番良いのは防御に適した丘である。
あまりにも高い丘は良くないが、ほどほどの高さがあると良い。
そして、そんな丘の縁に沿って柵を作る事でさらに防衛をしやすくする。
ある程度暮らせるようになったら柵を補強し城壁へと変える。
こうして1つの国が出来るのだ。
ソノフェン王国の王宮も丘の上にあるのはその名残である。
最初に丘の上に集落を作り、市民の数が増えた事から丘の下に都市を広げたのだ。
丘の上にある街には王宮や神殿が等の都市の重要な施設があり、またもしもの時は市民を丘の上に避難したりもする。
朝になるとソノフェンの騎士が迎えに来て、シズフェは王宮へと向かう。
仲間達は付いて来ていない。
シズフェのみだ。ケイナやノヴィスは礼儀作法等を知らず無礼な態度を取ることがある。また、2人だけにさせておいても何をするかわからないので他の仲間も連れてこれなかった。
シズフェは石で補強された道を歩く。
天気は良かったので雨具は必要ない。
雨が降りやすい水の季節でなくて良かったと思う。
丘の上に上ると神殿が正面に見える。
エリオスの神々を祀る神殿は城壁と共に重要な場所だ。
国の建造物の中でもっとも大きく作られ、中にはエリオスの神々の像が立っている。
エリオスの神々は世界の中心であるエリオス山の上にある天宮に住み人々を見守っている。
そのエリオスの神々の中でももっとも重要な像は国ごとに違うが、一般的に神王オーディスとその妻である神妃フェリアである事が多い。
神々の王オーディスは法と契約を司り、多くの国が子どもが成人するときにその国の法を守ることを神殿でオーディスに誓わなければならない。
誓う事でようやくその国の市民として認められるのである。
また結婚をする時はオーディスの妻である結婚と出産の女神フェリアに神殿で誓い、子どもが生まれた時は神殿で健やかに育つようにフェリアに祈り、親等の親族が死んだときも神殿にてフェリアに報告する。
神殿の最高司祭は王が代理をするか、その親族がなる事が多く。
その報告を元に国は戸籍を作るのである。
シズフェは今は滅んだ故郷で、何度も神殿に連れて来てもらった事を思い出す。
やがて、目的の王宮は神殿の隣でありそこへと向かう。
ソノフェンの王国は豊かな国なので王宮もかなり立派であった。
入ると王宮で働く者達が一斉に頭を下げる。
(やっぱり、慣れないなあ……)
シズフェは周囲を見ながら歩く。
この王宮で働く使用人がシズフェに頭を下げている。
神々から選ばれた者は権威が王や貴族と同等か上である。
だから、頭を下げられるのは普通の事だ。
しかし、シズフェは貴族の生まれではなく、戦乙女に選ばれてから1年も経過していない。
元は普通の市民の生まれであり、普通の少女だ。
そのため、誰かに頭を下げられるような事はなかったのでどうしてもなれない。
シズフェはやがて、ある1室に通される。
(うわっ!! すごい美男子!!)
シズフェは部屋に入り、そこで待っていた人物を見て思わず声を上げそうになる。
そこで待っていたのはシズフェと同年代か少し年上の男性だ。
その男性はすらりとした体形で、整った美しい顔立ちをしている。
明るい髪に日に焼けた健康そうな肌、一目見ただけで多くの女性を虜にするほどの美男子であった。
「お待ちしておりました。戦乙女殿。ヴィナンと申します。お会い出来て光栄です」
美男子はそう言って頭を下げる。
(この方がヴィナン王子? 噂通りの美男子だわ)
シズフェは王子を見る。
ヴィナン王子は周辺諸国で噂される程の美男子であり、多くの女性の憧れの的だ。
もちろん、シズフェも噂を聞いてはいたが、目の前の王子を見て噂が誇張ではないと納得する。
ヴィナン王子は穏やかな笑みをシズフェに向ける。
その笑みに思わず見惚れそうになるのを何とか堪える。
(これは世の女性達が騒ぐのもわかるわ)
シズフェは本気でそう思った。
「シズフェリアです。ヴィナン王子様。どのような御用事でしょうか?」
シズフェは用意された椅子に座ると早速要件を聞くことにするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます