第3話 ソノフェン王国

 夜の闇がソノフェン王国を包み込もうとしていた。

 夜は魔物の活動が多くなる時間だ。

 そのため魔物を避けるため人々は城壁の中に入り一夜を過ごす。

 城壁の上には篝火が焚かれ、夜の闇から都市を守ろうとしている。

 城門の近くには宿屋が立ち並び、多くの人が行き交う。

 通りの影では客引きが旅人を誘い、怪しげな露天商が非合法なものを売っている。

 通りには活気があり、夜の怖さを紛らわそうとしているようだった。

 シズフェが耳を澄ますと弦楽器を奏でる吟遊詩人の歌声が聞こえる。

 吟遊詩人は歌と芸術の神アルフォスを信仰し、各地を旅して物語を歌う。

 吟遊詩人の歌う物語には様々なものがある。

 神話、騎士譚、恋愛もの。

 今歌っているのは神話である。

 歌の内容はこうだ。

 かつて世界はエリオス山に住まう光の神々が治めていた。

 人々はそんな光の神々の元で豊かに平和に暮らしていた。

 その時代を人々は黄金の世界と呼ぶ。

 しかし、そんな黄金の世界は突然終わりを告げる。

 魔王モデス率いる闇の神々がどこからともなく現れ世界をわが物にしようとしたからだ。

 魔王モデスは空を闇で多い、地上には数多の魔物を放った。

 神王オーディス率いる光の神々は闇の神々と争い、天上で神々の戦いが始まった。

 戦いは長きにわたり行われたが、決着はつかなかった。

 戦いは拮抗し一日の半分のみ太陽が照らし昼となり、半分は夜となった。

 夜には光の残滓である月と星が地上を照らす。

 それが現在の世界だ。

 人々は黄金の世界と対比するように今の時代を暗夜世界ダークナイトワールドと呼ぶようになった。

 夜の世界では魔王が放ったゴブリンやオーク等魔物が闊歩し、人々を襲う。

 人々はそんな魔物から身を守るため都市に城壁を作りその中で暮らし始める。

 今ではほとんどの人が城壁の中で生活するようになった。

やがて一つの都市が一つの国となるのが一般的になり、城壁の中とその周辺が一つの国の領域である。

 人間の国は広い地上の各所に点在し、街道でつながっている。

 ソノフェン王国もそんな国の一つである。

 ミノン平野の東の開けた土地にあり、広い耕作地を持つソノフェン王国は多くの人々が住んでいる。 

 市民の数は2万近くあり、大国と言えるだろう。 

 そんなソノフェン王国は大街道沿いにあり、東の地から豊かなアリアディア共和国に向かう者はこの国を通るのが普通だ。。

 そのためかこの国は多くの旅人が訪れる。

 当然旅人が多いので宿屋も多い。

 普段宿屋に宿泊するのは交易商人とその使用人がほとんどである事が多いが、今日は自由戦士の方が多いらしかった。

 シズフェが窓から外を除くと腰に剣を携えた戦士達が歩いているのが見える。

 日中に行われたゴブリン退治のため多くの自由戦士がこの国に来ているのだ。

 宿屋の1階は食堂兼酒場になっている事が多く、自由戦士達が食事のために集まっている。

 シズフェ達はそんな食堂の一つにいるのであった。















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