嫌われ令嬢ミリシャは隣国王子に愛される!!
蒼本栗谷
追放後に愛されるミリシャ
「きゃあああ!!!」
「あっ……!」
目の前でペアルさんが階段から落ちていく。私は手を伸ばして助けようとしたけど、ペアルさんは階段から転がり落ちていった。
「ペアルさん!!」
ペアルさんに公爵様、アリート様が近寄る。
「ぺ、ペアルさ――」
「ミリシャ!! これは一体どういうつもりだ!」
「え――?」
アリート様が私に向かって怒る。ど、どうして……?
ペアルさんが震えながらアリート様にしがみついた。
「ミリシャさんが、わたくしを突き飛ばしたのです……。アリート様に気に入られてるから、調子に乗るなって……!!」
ぺ、ぺリアさん……何を言ってるの? 貴方が勝手に落ちて私は助けようとしただけなのに。
誤解を解こうと口を開く。
「ち、ちが……私は、助けようと――」
「黙れ! ミリシャ、今までのお前の行為、目を瞑ってきたがもう我慢できない! この国から出ていけ!!」
「え……? ま、待ってください! 今までの行為って、どういう事です!?」
「とぼけるな! ぺリアにした事を忘れたのか!!」
アリート様が私に向かって怒る。私は彼の言っている事が理解出来ない。だって、私、ぺリアさんに何もしてない……!! 私がぺリアさんに嫌がらせを受けてた事しか思いつかない!
頭が混乱してくる……。
ちらりと見えたぺリアさんの顔。その顔は笑ってた。嘲笑うかのように。
嵌められた――?
「ミリシャ! 早くここから出ていけ!」
「アリート様、話を、話を聞いてください!」
「黙れ! おいお前ら! こいつを街の外に連れて行け!!」
アリート様の言葉に兵隊さんが私に近づいてくる。やだ、いやだ。私、悪くないのに!!
思わず走ってその場から離れる。走ってたら涙が出て来て、もう、嫌になった。
走って、走って、走って。私は城から飛び出していた。
そしたら、目の前に人がいた。誰だろう。涙でよく見えない。でも、いっか。私、もうこの国に居場所なんてないから。
「待って!」
「っ……離して!」
その人に腕を掴まれた。やだ、やだ、やだ。
涙で前が見えない。呼吸が、上手くできなくなる。
「大丈夫、大丈夫。落ち着いて」
「はな、して」
「そんな状態の貴方を放っておけない」
「うううう……」
背中を撫でて、落ち着かせてくれる。どうしてここまで親切にしてくれるの? 私、私。
「ごめ、ん、なさい」
「謝らないで。大丈夫だから。大丈夫、大丈夫」
いきなり抱きしめられた。温かいぬくもり。王宮で冷たい目を向けられたり、嫌がらせされたりとは全く違う、温かさ。
抱きしめていいのかな、この暖かさに身を任せていいのかな。目の前の人はずっと大丈夫だって、言ってくれる。
震える手で抱きしめ返す。声を、押さえられない。
「うわあああん! わたし、わたし、わるくないのに!! どうして、どうして!!」
そこからはよく覚えてない。色んな事を目の前の人に吐き散らして、その後は疲れて眠ってしまった。
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目を覚ましたら、どこかの部屋だった。ベッドの上で私は寝ていて、見たことない部屋。ここは何処なんだろう?
混乱して首を傾げていたら、部屋の扉が開いた。そこにいたのは、隣国のアクタ様だった。
「え、アクタ様?」
「目が覚めましたか。無断でここに連れて来てしまい、申し訳ありません」
「えっ、と、大丈夫です」
「安心してください。ここには貴方を傷つける者はいません」
視線を泳がせていたら、アクタ様がそう言った。私、そんな事アクタ様に言った覚えないのだけれど……。も、もしかして泣いてる時に言っちゃってた!?
「あ、あの、申し訳ございません!」
「謝らないでください。――ミリシャさん。実は言いたい事があるのですが、いいですか?」
アクタ様は私に近づいて手を取った。な、何が起きるの?
「僕と、結婚していただけませんか? 貴方に一目ぼれしました」
「……え」
いま、なん、て……? け、結婚? アクタ様が? こんな綺麗な人が? 私に?
優しさを感じる笑みを浮かべながらアクタ様は私を見る。
「わ、私はアクタ様に相応しくないです! そ、そんな事言われても……!」
「それは関係ありません。駄目ですか?」
「え、えっと、あの、その……」
見つめてくる視線が恥ずかしくて、顔が赤くなって、言葉に詰まっちゃう。
「ふふ、かわいい」
私の様子を見てアクタ様が笑った。その顔が、凄く幼く見えて、可愛い人だなぁと思った。
それを見て私は、この人と一緒にいたら楽しいんだろうなぁと思えた。こんなに幼く笑うから、きっと、楽しい。
捨てられたら捨てられたで、それでお終い。でも、この人はずっと愛してくれそう。
「私で、よければ」
「! 本当ですか! ありがとうございます!」
笑うアクタ様に思わず涙が出てきた。こんなに喜んでくれるなんて、幸せだなぁ。
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その後私は正式にアクタ様の嫁になった。アクタ様のお父様は、婚約に凄く驚いていた。アクタ様のお父様が言うには、アクタ様は人を恋愛的に好きになった事がなかったらしい。
それを聞いて凄くびっくりした。恋愛経験とかありそうな人だろうなぁと思ったのに、それすらなかったなんて……。
「ミリシャさん。散歩に行きましょう。今日はいい天気です」
「はい!」
アクタ様は忙しくても毎日私の元に通ってくれる。それが、とても幸せだった。
そういえば、風の噂でアリート様とぺリア様が破滅したという噂を聞いた。でも、もう私には関係ない。
私は今、幸せです。
嫌われ令嬢ミリシャは隣国王子に愛される!! 蒼本栗谷 @aomoto_kuriya
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