下着転生~女性用下着に転生した私は、幸せを見つけられるのか?~

ももぱぱ

第1話 おしゃれな形で色は黒。ただしサイズはXO

※以前投稿していたものです。カクヨムコンの間公開しております。


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(はて? 何が起こった? よくわからない? 私ば誰だ? ゆっくり思い出してみよう。

 私の名前は班津白良ぱんつはくよ、40歳、独身、童貞。よし、悲しい現実だがここまではいい。住んでる場所は……どこだ? 家族は……いるのか? 職業は……ダメだ思い出せない。

 思い出せないものは仕方がない。次は現状把握だ。身体は全く動かせない。周囲の状況もよくわからない。わかっているのは、何かにぶら下がっているのではないかということだけだ)


 そしてこの状況が続くこと数分、いや数十分、もしかしたら数時間かも。とにかく時間が経つにつれ、だんだんと状況を把握できるようになってきた。

 なぜかと言うと、どういう原理かはわからないが、自分を俯瞰できるようになったからだ。


 さて、どうやら私は今、某百貨店の女性用下着売り場にいるようだ。なぜか商品パンティのひとつとして。

 もしこれが最近流行りの転生なのだとしたら、私は神に断じて抗議をしたい。


 なぜサイズがXOなのかと!

 

 考えてもみてほしい。女性とお付き合いするならば、見た目よりも性格で選ぶだろう。だが、ことに自分がパンティになるとしたら、綺麗な女性を求めるに決まっているではないか!

 いや、少々言い過ぎたか。40歳童貞なら普通の女性でも大満足だ!


 しかし、綺麗な女性に履かれる可能性が、XOというサイズのせいで低くなっていることは、神とて否定できまい。


 まあ、神への文句は後回しにするとして、もっと詳しく状況を確認してみるとするか。

 私は今、パッケージングされ、頭(?)の上にあるフックで銀色のバーに吊るされているようだ。そして、残念なことにその銀色のバーには、しっかりとXOと書かれた札が取り付けられている。


 この状態で自分の周辺をしばらく観察していたのだが、私の3つ左隣のMさんや2つ隣のLさんは、よく売れているようだ。手にする女性も8割方普通以上と見受けられる。普通の基準は私の主観ではあるが。

 一方、私の左隣のXさんは未だにひとりしか売れていない。持っていったのはなかなか立派な体格の女性だった。

 ちなみに私の右隣はいない。つまり、私が最も大きいサイズというわけだ。


 そして、このXOとは滅多に売れることがないのであろう。私と同じ銀のバーに吊るされているものがいないことからも明らかだ。

 つまり、私のサイズを求めてきた最初の女性が、私のご主人様となるわけだ。あれ? 女性が来るよね? まさか、今流行りのトランスジェンダーさんとか来ないよね?

 いや、もちろん私はそっち方面にも理解がある方だとは思うけど、ことにパンティになったからには言わしてもらおう、ピッチピチの状態でアレを押し付けられたら発狂する自信があるぞ。


(おわ!?)


 期待と不安に胸が支配されていたところで、突然視界が切り替わり、前方へとスッと引っ張られ、それから持ち上げられた。

 緊張のあまり閉じてしまった視界を恐る恐る開けると、目の前に現れたのはものすごい美人のお姉さんだった。


 私は嬉しさのあまり、天にも昇るような気持ちになった。その後、何だかすごく綺麗にラッピングされていたような気もするが、そんなことはどうでもいい。美人のお姉さんに選んでもらえた私は勝ち組だ。これからその幸せを満喫させてもらおう。




 そんな私の期待を知ってか知らずか体感で数日間、私の封印が解かれることはなかった。これはいわゆる焦らし作戦ということか? 勝負所で私の出番となるのか?

 そんな気持ちで悶々と待つことさらに数日、ラッピングされてしまってからは、俯瞰的に見ることもできなくなってしまった私に、ようやくその時が訪れたようだ。


 ラッピングされたまま持ち出された私は、そう遠くない場所まで連れて行かれ、そのまま誰かに手渡されたようだ。



 何 だ か 嫌 な 予 感 し か し な い 



 何も見えないまま、何者かにお持ち帰りされた時の私の心臓(?)は、さぞかしロックなリズムを奏でていただろう。


 ズシンズシンと聞こえる足音を気のせいと言い聞かせ、私は神に祈った。


(どうかサイズが合いませんように)


と。


 しかし、その祈りは打ち砕かれる。


 私の封印を解き、この布となった身体を解放したのは、まさに暦練の戦士もかくやといった風貌の女性であった。


 そこから地獄のような日々が始まった。何せこの女性、格闘技でもやってるのかってくらい体格がよかったのだ。実際、柔道をやってたのだが、彼女の巨大に臀部には、残念ながらXOの私でも少々役不足だったようだ。


(アイタ! アイダダ! ウギァァァァイダイィィィィィ!!!)


 そうこの女性は私を履く時、無理やり引き伸ばして履くのだ。なぜか残っている五感だが、温もりを感じる前に痛みが全てを塗り潰す。


 おまけに幸か不幸か、履かれたときに視点は俯瞰視点に戻るようだ。そこは逆だろうに。


 だがパンティとは恐ろしい、そんな地獄の日々が続いていくと、この痛みにもだんだんと慣れていくのだよ。それに痛みに慣れ、余裕が出てきたところで、私は気がついてしまったのだ、彼女が私を履く時に、必ず会う男性がいることに。


 その男性は、彼女が所属する柔道クラブのコーチだった。彼女よりも一回り大きな身体。力強く、それでいて優しい手。そして何より、自分の体格にコンプレックスがある彼女に普通に接してくれる。そんな彼に彼女が惹かれるのは至極当然だったのかもしれない。

 僕が見るに彼もまんざらではないような気がした。


 あっ、今、柔道着の隙間から見えた私の一部を凝視していたな。


 そんな彼と彼女の関係を、私はいつしか応援するようになっていた。私を最初に脱がすのは彼しかいないと。


 だが私は、そんなささやかな願いの結末を見届けることはできなかった。


 とある日、彼女はいつもより気合が入っているような気がした。荷物もいつもより多いし、普段つけないゼッケンのようなものも見える。

 ああ、なるほど。今日は柔道の大会なのだな。そうなると当然気になるコーチも来るわけで……


(アー、イタイイタイ。いつもより強めに引っ張っております)


 いつも練習しか見てなかったから知らなかったけど、彼女はものすごく強かった。それこそ、オール一本勝ちで決勝戦に進んでしまうくらい。


「私はこの大会で優勝できら、コーチに告白するんだ」


 決勝戦前の彼女の独り言に、僕は彼女を全力で応援することに決めた。


 決勝戦の相手は強かった。姿形は見えないが、今までにないくらい強く揺さぶられ、彼女は苦戦しているようだった。

 防戦一方の彼女は徐々に疲れが見え始め、ふと体勢が崩れたその時だった。道着の隙間から対戦相手の手が、彼女の後ろの腰を掴もうと迫ってくるのが見えたのだ。


(後ろの帯が狙われているぞ!)


 思わず私は心の中で叫んでいた。聞こえるはずなどないのに。


 だが彼女は、まるで私の心の声に反応したかのように、くるっと身体を反転させ、地面に背中をつけるように倒れ込み、覆い被さるように倒れて来た相手のお腹を足の裏で受け止め、そのまま頭上の方へと投げ飛ばしたのだ。

 そう、俗に言う巴投げだ。


 起死回生の巴投げが決まったその時だった。審判の『一本!』と言う掛け声とともに、何かがぶちんとが切れる音がしたのは。

 恐る恐る音がした方を見ると、パンティのゴムが切れていた。力んだせいで膨張した彼女の筋肉に、散々引き伸ばさられたゴムが耐え切れなかったのだ。


 ゴムの部分が切れた激痛で、私の意識はだんだんと遠のいていき……『コーチ、優勝しました! 私、私、コーチのことが……』


 彼の答えを聞く前に私の意識は遠のいていき……









 次に目を覚ました時、私はまたあの百貨店の下着売り場にいた。


 今度はシンプルな形で色は白。ただしサイズはSだ。


 次はどんなご主人様に出会えるのだろうか?

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