第15話 依頼を請ける
固まったマギルを無視したゼロ達は……
(さっきの男、見たか?)
『……うん、……それで……Sランク、だよね?』
(ああ、逃げた奴と違って強そうだったな。スキルの数が今まで会った中で一番多かったな)
『……それでも、……お兄ぃの……方が多いし、……凄いの……』
鑑定でマギルのステータスを見たら、スキルが5個もあったのだ。
全てが通常スキルといえ、今まで会った中では一番多かった。
でも、欲しいと思えるスキルはなかった。
だから、多いとはいえ、積極的に襲おうとは思えなかったのだ。
「街を見回ると言ったが、宿屋、服屋、武器屋はもう見付かったし、ギルドに戻るか?」
「はい。さっきの男がもういないといいのですが」
「そうだな。いきなり聖騎士にならないかと勧誘されるとは思わなかったな」
「私も驚きましたが、ゼロ様なら当然の結果かと」
「持ち上げるね〜。まぁ、断ったし、興味はないことだったからな」
「ゼロ様は誰かの下に付くのは良しとしないでしょう?」
「ハハッ、わかっているじゃないか!!」
自分のことをよく知るようになったなと思うゼロ。
それでも、ゼロに着いていくと言うフォネスは案外と大物かもしれない。
「時間も経ったし、あの男はもういないだろう」
「そうですね」
ギルドに戻ってきたゼロ達は依頼がある掲示板に向かった。
「ふむ、討伐系にするか?」
「はい。その方が自分達にとっては簡単ですからね」
「よし、ほどほどに高いのを選ぶか」
掲示板の中から、いい依頼を見つけ、ゼロはそれを剥がす。
「これなら簡単だな」
「あ、それなら高いですしね」
ゼロが選んだのは、『ゴーレムの核を集める』依頼である。
詳細では、ゴーレムの胸にある核を集め、一個で3000ゼニ。量は決まっていなくて、何個でも構わないらしい。
この依頼に決め、窓口に持っていくことに。
「ゼロ様とフォネス様、依頼ですか?」
「ああ、これを頼む」
「……これはゴーレムの依頼ですね。お二人方は、武器を持っていないのですが、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。前に狩ったこともあるからな」
「え、そうなんですか。経験がおありなら、安心ですね。期限はないので、頑張って下さい!」
依頼が決まり、前に行った岩山のとこでゴーレムを狩ることになった…………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
少しだけ、時間が戻る。マギルの方では…………
「おーい、ここで固まっているなんて、どうしたの?」
「……………………はっ!?」
目の前には、勇者と魔術師の女性がいた。
声を掛けられて、目が醒めたマギルだったが、ゼロがいないことに気付いた。
「……はぁ、もう行っちゃったか」
「へ、誰が?」
魔術師の女性、テリーヌが声を掛けていた。
さっきまで誰かと話していたと言うこと? と。
「いや、先に飯が食べれるとこに行こう。そこで話す」
「いいけど……?」
何の話になるのか、想像出来ないカズトとテリーヌだった。
そして、喫茶店に移動した勇者パーティ。
「それで、何があったの?」
「悪い知らせじゃないよね?」
「違う。ただ、個人のことだから問題ないが、逃がした魚が大きくて落ち込んでいたわ……」
マギルは肩を落として、ため息を吐いていた。
「大きな魚?」
「ああ」
大きな魚とは、ゼロのことだ。新人冒険者になったばかりで、それほどの実力を持っていることに、興味が惹かれたのだ。
そして、二人にも、ギルド内で起こったことを話した…………
「へぇ、そんな人がいたんだ……」
「凄いね、Cランクを赤子扱いするほどなんて……」
やはり、二人も感嘆していた。新人冒険者になったばかりでその実力は凄いというか、異常だと感じたのだった。
「だろ? 有望そうに感じたから、聖騎士の勧誘をしたんだが……」
「フラれたわけね」
「ああ……」
この国にとって、聖騎士とは、有望な職種である。普通なら、入れないし、王宮の人から推薦がない限り、なる可能性がないのだ。
だが、ゼロは断った。
「まさか、断られてしまうとは思っていなかったから、しばらく思考が止まっていたわ……」
「あら、育てるのは勇者だけでは、もの足りないかしら?」
「おいおい、そんなことを言うなよ……、ただ、勇者にもライバルが必要だと思ったし、一緒に育てれば刺激し合うことも出来るだろ?」
勇者のためと言う理由もあったようだ。歳も近いし、実力も問題なかったように感じられたからだ。
「なるほどね、ライバルが必要なのは同意するわ。だけど、そのゼロと言う人、勇者と変わらないぐらいの素質があったの?」
「ああ。断言は出来んが、あの時は細身で力負けしてなかった。
つまり、身体強化に関するスキルもあるだろうし、使っても使っていなくても、見た目は変わってなかった。そこがポイントなのさ」
「ええと、どういうことですか?」
話についてこれない勇者が質問してきた。テリーヌは理解しているようだった。
「じゃあ、身体強化するならどうイメージする?」
「身体強化ですか、僕なら筋肉を増幅かな?」
「それだったら、普通だけど、筋肉が増えてムキムキになってしまうのよ」
「そして、慣れない筋肉で動きの邪魔になってしまう」
「確かに……。ということは、他に強化するとこが?」
「そうだ。ゼロは筋肉そのものを強化してなかった。細身だったからな……」
つまり、強化する場所は別のところにあると言いたいのだ。
それは……
「神経だ」
「……神経ですか?」
「そうよ、反動は大きいけど、動きは筋肉程に阻害されないし、反射神経も強化されるからね」
「なるほど……、でもそれがポイントとの繋がりが……?」
「ああ、神経を強化するのは難しいんだ。繊細な魔力のコントロールが必要になる」
「つまり、ゼロと言う人は魔力のコントロールに優れていると言いたいのね」
この世界では、魔力の使い方が重要であるのだ。強いスキルを持っていても、魔力の使い方を知らなければ、上手く使えない。
マギルは、ゼロが魔力のコントロールに長けていると見抜いたのだ。
さらに、反動もあるのに、使った後も息切れもなく、疲れた様子はなかったから、長く使い馴れていると思えた。
「そうなんだ。ゼロと話したよね? どんな人でしたか?」
「あー…、うん、言いにくいが……傲慢かな? いや、わかりやすく言えば、自分が優先の考え方をしているって感じだったな」
「……へ?」
「あと、従者に見える亜人の女性が『主』と言っていたから、何処かの貴族だと思うが、そこは答えてくれなかった」
「そうなんですか……」
「ああ。でも、聞く耳はないとは言えないから、そんなに悪い奴じゃないと思う。
俺にしたら、ゼロより従者の方が危険そうだったな」
フォネスとは少ししか話していないが、わかったことは、ゼロのためなら、何でもやると言う覚悟を感じたのだ。
もし、ゼロが命じたら、殺しでも喜んでやるだろう。
「あとは、お前と同じ黒髪に黒目だったぐらいかな?」
「僕と同じ?」
「ああ、探せばたまにいるからそんなに珍しいとはいえないけどな」
これでマギルが知るゼロのことは話し終わった。
「ゼロのことはわかりましたが、もし会ったらどう接すればいいのでしょうか……? なんか、想像出来なくて……」
「ははっ、確かにな!」
「大丈夫なの? ゼロはいいけど、従者の方は危険だと思うでしょ?」
「うーん、ゼロのために動く奴みたいだから、ゼロと対立しなければいいんじゃねぇか?」
「……それはそうね」
主に何も害を与えないなら、従者もこっちには興味を持たないだろう。
「俺はまだ諦めたわけじゃないからな!!」
「私達に害がないなら、任せるわよ」
「ゼロか、会ったらどうなるかな……」
話を聞いて、少し怖そうだなと思うが、同じ黒髪に黒目であるよしみで、会って話をしてみたい気持ちもあった。
その後、ゼロ達はギルドに向かっていたが、勇者達は別のところにいたため、会うことはなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここはある城にて…………
「ほぅ、オズールが死んだか?」
「はい。反応が消えていたので、その通りかと思います」
「ハッ、元とはいえ、第八の名を汚しやがって!!」
その広場には、魔族の男達がいた。三人だけだった、外には数えられない程の数がいる。
その三人の中、魔王と呼ばれる男が立った。
「オズールが死んだことに、こちらの被害はないが、我等に敵対する者が現れたということだ」
魔王は側にいる男を呼び寄せ、指令を出す。
「倒した者を調べてこい」
「はっ、第五の配下であるアリトスが命を懸けて、情報を手に入れて参ります!」
「よし、行け!」
命じると、アリトスは命令を達成すべき、広場から消えた。
「ふふっ、服従するなら、許そう。だが、敵対なら死だ!」
魔王ラディアはそう言葉を残し、姿を消した…………
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