第6話 燃える村
ゼロ達はモンスターを見付け次第に、狩りまくっていた。
出会った魔物は、ゴブリン、オーク、ワイルドドッグ、シマキャットの四種類だ。
フォネスはゼロと違って食事と睡眠に、休憩も必要なので、ゴーストの時と違って狩った数は少ないが、欲しい物は手に入れた。
そう、スキルだ。
ステータス
名称 ゼロ
種族 幼霊体(ゴースト)変異種
称号 ”同種の敵”
スキル
希少スキル『知識者(チシキモノ)』(名称 レイ)
(鑑定・統合・思考空間)
特殊固有スキル『魂吸者(スイトルモノ)』
(吸収・回復促進)
通常スキル『熱寒耐性』、『無痛感』、『魔力操作』、『魔力察知』、『精力強化』、『魔力隠蔽』
手に入れたのは二つ。オークから『精力強化』でシマキャットが『魔力隠蔽』だ。
”同種の敵”と言う称号があったが、意味はわかるだろう。
この前、ゴーストを沢山倒していたからな……
(『精力強化』ね……、オークらしいが、使うことはあんのか?)
男なら嬉しい能力だと思うが、今のゼロに必要なのかは…………否だ!
理由は、この身体にある。生殖器は見た目にはあるが、尿意が湧かないのに、アレを出せるのかだ。
だったら『賢者タイム』で試せばいいじゃないかと思う人はいるかもしれないが…………
もう一つ、忘れてないかね? そうだろ! 先程の理由もあるが、自分にとってはこの理由が問題なんだ!!
…………つまり、
レイの前でヤレと!?
そういうことだ。 今はレイと一緒で一つの身体になっている。
ゼロにはプライバシーなんて、無いに等しい。
ゼロが見るものは、全てレイにも伝わる。
なら、アレをやる時も必ず、レイに伝わるんだぁ!! 無理だ!! 妹の前でアレをやれと言われて、出来る人なんてごくわずかだろう……。
いや、いても駄目だろうが…………
『……何か考えていると思えば、そんなことか……』
(いや、やっちゃ駄目だろ!? 人としては!)
『……お兄ぃは魔物……』
レイはいと冷静に突っ込んでいた。
さらに、とんでもないことを言ってきた。
『……私は気にしないから、やれば?』
(ちょっ!?)
なんてなことを言う妹なの!?
『……今更だし』
(……は?)
…………愛する妹は、何て言ったの? その言葉だと……
『……私が寝ている隣でシコシコとしていたら、普通は起きる』
(……………え?)
『……見慣れているし、今更、だからね……?』
(イヤァァァァァ!! お、起きていたの!?)
前の世界では、いつも離れ離れに寝たことはない。
妹が一緒に遊んでからはなかなか離れてくれなかった。
兄は気にしなかった。だが、風呂もトイレも離れてくれなかったのが悩みの種だった。
何故なら…………
アレが出来ないのだ!!
あの時は思春期に入っており、やる人も増える歳だったのだ。
なかなか一人になれない兄だった。トイレだったら普通なら一人になれるが、妹は頑として一人になろうとはしなかった。
なら、風呂も同じだとわかるだろう…………
で、ようやく一人になれるとしたら、妹が寝た時だ。
しかし! それさえも妹が指を握っていて離してくれない。
つまり…………
寝ている妹の側でやるしかなかったのだ…………
わかるか!? 俺は露出趣味を持ってないし、妹を起こさないように静かにシコシコする心情を!!
(って、見られたのかよ……、気付かなかったぞぉ……)
『……うん。だから、やっても気にしないよ……? もう一度言うけど、今更だから……』
(お婿さんに行けないぃぃぃぃぃ!!)
『……大丈夫、私が貰う。グッ……』
漫才みたいな会話になっていたが、しばらくして…………
(もういいや……、『精力強化』の検証は止めだ!! あとは『魔力隠蔽』か)
すぐに立ち直ったゼロ。次のスキルは便利だとわかる。
『魔力隠蔽』があれば、近くでなければ『魔力察知』で見付かることはない。
『……これがあれば、不意打ちしやすい』
(うんうん、『精力強化』はいいとして……、スキルを二つ手に入れるとは運がいいな!)
スキルを手に入れ、休憩が終わるまでのんびりしてから次を探すことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……ん? 七、八……いや、十以上か?」
「えっ、それだと集落か村とかではないですか?」
「こんなに多いなら、集落か村で間違いないな」
十ぐらいと反応があった。それなら、初めての集団戦になりそうだな……と考えた。
静かに近付いてみると、ゴブリンの村だとわかった。
(見付けた。これぐらいなら、俺達でも勝てるだろう)
『……スキル持ちは無し』
(え〜、こんだけいて、スキル持ちは0だと?)
『……うん、どうする……?』
(こんだけいるとチマチマとやってられないな。よし、思い付いたことをやるか!)
思い付いたことと言うことは、フォネスとの共同作業だ。
「フォネス、纏めて消すぞ」
「え、どうやってですか?」
「いいから、その耳を貸しな」
ゼロは敵にばれないように声を小さく、耳にこれからのことを説明し始める。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「よし、準備はいいか?」
「う、うん!」
フォネスは今、出せるだけの鬼火を発動した。これだけでは、村を燃やし尽くせない。
せいぜい、家を2、3件程度だろう。
(そこで、俺が魔素を燃料として注ぎ込む!!)
『……操作は、任せて』
フォネスは、鬼火を発現することに力を注ぎ、ゼロは威力を高めるために、今まで吸収した一部の魔素を注ぐ。
レイは巨大な焔を魔素でコントロールして…………
「今だぁぁぁぁぁ!!」
ゴブリン達はこっちに気付いて、逃げようとするが、もう遅かった。
共同作業で出来た”火炎砲破(インフェルノ)”を村に向けて落とした。
ただの大きな火玉だが、威力も範囲も調整されて、広場のように作られた村に落とし、村にあった家、ゴブリン達は消え去った。
広場の所々は燃えているが、木が集結している所は調整していたので火が飛ばないようにしたから無事になっている。
(よし、全滅した!)
『……わー、パチパチ……』
ゼロは結果に満足していたが、フォネスはこの威力に驚いていた。
「…………はっ!? こ、これを二人だけで……」
「そうだな……」
厳密には、三人だが、レイのことは言っていないので、同意だけにした。
「いつかは、これくらいは出せるようになってもらうぞ」
「は、はい! 頑張ります!!」
フォネスは目標が出来、ゼロ様のために頑張ろうとやる気を出していた。
『……お兄ぃ、すぐにここを離れた方がいい……』
(あ、そうか。こんな爆発音があったら集まる可能性があるな)
「おい、急いでここから離れるぞ」
「あ、はい!」
二人は急いで元ゴブリン村から離れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ゼロ達が焼き尽くしたゴブリン村から離れた場所では…………
「おい!? さっきの音はなんだったんだ!? あの煙はぁ!?」
「凄い音だった……、耳が痛い……」
叫ぶ筋肉質の男、耳を痛がる魔術師の女。
「大丈夫か? しかし、爆発音に聞こえたが、こんな場所で爆発を起こす魔物はいたか……?」
心配する冒険者の男。
「いや……、いねぇぞ! ここは初心者の狩場だぞ!? そんなのがいたら危ないだろ!!」
男二人と女一人のパーティが話し合っていた。
「魔物だったら危険だな……、このことをギルドに言うべきだな……」
「そうしようよ!!」
「そうだな……、お前は強いが、まだ冒険者になったばかりだからな」
「そうよ! 勇者がいきなり強い魔物に出会って死んだら駄目だよっ!!」
そう勇者と言われた男は、少し苦笑して、言う。
「そうだね、俺は日本から召喚されたばかりだからね……」
日本から召喚された勇者、転生したゼロとレイ、その交わりが何を起こすのか、誰も知らない…………
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