第28話
チアside
部屋の掃除を終えジュンセの部屋に戻ると、ジュンセが浮かない顔をして家へと帰ってきた。
C「ジュンセおかえり。」
私はそんなジュンセの元に駆け寄り、ジュンセの顔色を伺うとジュンセは突然、私をギュと抱きしめて声をあげ泣き始めた。
C「ジュンセ?どうしたの急に……」
ジュンセの背中をトントンと撫でるようにそう問いかけると、ジュンセが声を震わせながら言った。
J「ぅう…み…みんな…忘れてた…」
C「え?」
ゆっくりと身体を離して流れる涙を吹きながら聞き直すと、ジュンセの目からは更に涙がポロポロと溢れ出す。
J「…みんなの…記憶の中に…チビがいなかった…」
嗚咽まじりにそう言ったジュンセはまた、泣きじゃくり私をギュッと抱きしめる。
私はそんなジュンセの涙が止まるまでただ、頭と背中を撫でてあげた。
C「落ち着いた?」
ジュンセの涙が止まった頃、私はジュンセの前に水を置いてあげると、ジュンセは鼻を真っ赤に染めてその水をゴクゴクと飲んだ。
J「急に泣いたりしてごめん…チアだって辛いのに…」
C「大丈夫だよ…人間は泣くの我慢すると死んじゃうんでしょ…?」
J「そうだね…実はさ事務所に行ったら…みんなチビのこと覚えてなくてめちゃくちゃ悲しくて…チアの顔見たら我慢の限界だった。」
そんなジュンセに私が微笑むとジュンセの肩に頭を預け、ジュンセの大きな手を握った。
C「…そっか…それは悲しいな…でもさ?みんなの記憶の中にチビちゃんは生きてないかもしれないけど…私たちの中には永遠に生きてるじゃん…ずっとずーっと…そうでしょ?」
私はジュンセと繋いだ手を膝の上でトントンとしながらそう言った。
J「そうだね……」
C「また、いつか……会えるよ…私はそう信じてる…だって私たちのために舞い降りて来てくれた子だよ?絶対また会えるよ…チビちゃんに…」
私はそう言って微笑むと涙で少し腫れたジュンセのまぶたにキスをした。
3か月後
私とジュンセはチビちゃんとの思い出が詰まるマンションから引っ越した。
それは私の住む部屋の名義人がソウヤさんであった事と同時に……
「ジュンセさん!!元練習生の女性と交際中という事ですが!!本当ですか!?」
J「事務所を通してください。」
メディアに私たちの関係がバレてしまったから。
有名人が元練習生と恋愛していることへの世間からの興味はもの凄く、練習生をしていた私はすぐに特定され、ジュンセはもちろん、私までもがメディアから追われるようになった。
もしかしたら、私たちの関係はソウヤさんがリークしたのかな…なんて私は心の中で思っていたけどジュンセは絶対にあの人じゃない。あの人には俺たちの関係をリーク出来ない理由があるからね。とそう言ってジュンセは難しい顔をしていた。
さらにセキュリティーの強いマンションに引っ越してからはメディアからの攻撃もおさまったが、そんな日々を送っていたせいか私の体調は日増しに悪くなっていき、ストレスから食事を受け付けないようになっていった。
J「チア…少しでも食べなよ…」
C「いらない……少し横になるね…」
私はベッドのうえで横になる事が多くなりまるで、自分の体が自分の物ではないような感覚に陥る事が多くなった。
この頃から夜の寝つきも悪くなり精神的にも不安定になっていった。
ジュンセが仕事に行ってる間、テレビに出ているジュンセを見かけると突然、今すぐに会いたくなって涙がとまらなくなったり、共演者のなかにジュンセをじっと見ている女の人がいたりしたら、自分でも抑えきれないほどの怒りがこみ上げてくる。
C「なんなの!!あの女の人ずっとジュンセのこと見てた!!」
J「そう…かな?でもあの人、旦那さんいるし…変な意味では…」
C「なんなの!?あの女の人の肩を持つんだね!?」
J「いや…そういう意味じゃなくて…」
C「もういい!!ジュンセなんか知らない!!」
私は自分の感情をコントロールすることが出来ず、些細な事でジュンセにそうやって当たる日が多くなっていった。
そして、そんな自分が情けなくて…
なんであんな言い方しちゃったんだろう…
なんで大好きなジュンセと一緒にいるのにこんなに苦しいんだろ…
なんで…なんで…
という気持ちに包まれ私はベッドに横になったまま自分を責めて泣くことが多くなった。
C「私…どうしちゃったんだろ……」
まるで自分が自分じゃなくなってしまったようで、私はそんな不安に押しつぶされそうになりながらギュッとジュンセの匂いがするパーカーを抱きしめては涙で溢れる瞳をそっと閉じた。
つづく
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