第5話
ジュンセside
ゆっくりと振り返ったソウヤさんは俺たちを見て一瞬眉をひそめた…気がした。
S「オートロックの指紋認証はそのままだったけど…ここの暗証番号…変えた?」
ソウヤさんはそう言って扉を指差しながら問いかけた。
C「え…あぁうん。防犯でね。今日は仕事だったんじゃ…?」
S「連絡取れなかったから心配で寄ったんだ。」
そんな2人の親密な会話の途中、俺は軽く頭を下げて2人の横を通り過ぎ、自分の部屋の暗証番号を押そうとしていると…
S「ジュンセくんもここのマンションなの?」
何度か歌謡祭での表彰式でプレゼンターとして出演していたソウヤさんとアーティストとして出演していた俺は共演をしていたものの…ほんと…顔見知り程度…
そんな中、ソウヤさんの方から親しいかのように声をかけられ内心、俺は戸惑う。
J「偶然…引っ越してきたんです…じゃ俺はこれで……。」
S「そう…その子は?」
俺の腕に抱かれているチビを見てソウヤさんが問いかける。
J「えっと…」
C「子役目指してる親戚の子を預かってるんだって!ジュンセと同じ事務所に入るかもしれないんだって!」
そう言ってチアが助け舟を出してくれて俺に合図を送った。
J「そ…そうなんですよ…」
S「へぇ〜可愛い顔してるもんね…ジュンセそっくり。」
そう言ってソウヤさんがチビに手を伸ばした瞬間、チビはその手を避け俺の首に顔を隠すようにしてしがみ付いた。
S「あはは〜そんなんじゃ芸能界やってけないよ?」
ソウヤさんはそう言って笑ったが目の奥が笑っていない。
J「あはは〜ですよね〜失礼しま〜す。」
焦った俺は慌てて暗証番号を押して玄関の中へ入った。
J「焦った〜。」
靴を脱いで中に入るとチビは不機嫌な顔になっている。
J「そんな顔すんなよ…腹でも減ったか?」
「ちゃあちゃんもいっしょがいい(ㆀ˘・з・˘)」
J「うん…後でな!!」
そう言って俺は誤魔化すようにしてキッチンに立つものの。
冷蔵庫の中は買い物にも行ってないから…なんにもない。
でも、チビを連れてスーパーに買い物に行くのはさすがにハードルが高すぎる。
ご飯を諦め出前でも頼もうかとソファに座り、不機嫌なチビのご機嫌を必死で取るように俺は色んな事をしてチビから笑顔を引き出そうとするが、全くチビは笑顔を見せてくれない。
困り果てた俺はアニメのDVDを取り出しテレビに付けると、やっと興味を持ったのかチビは目をキラキラとさせて俺と並んでアニメを見ている。
そんなチビの様子を見てホッとした俺は出前を取るためスマホを手に取ると…
ピンポーン
部屋のインターホンが鳴り玄関に出た。
すると、そこにはチアが大きな袋を両手にブラ下げて立っていた。
J「あれ…ソウヤさんが来てたんじゃないんですか?」
C「もう帰ったよ。これ…色々あるから食べよう。」
そう言ってチアは迷いなく俺の部屋に入る。
俺はそのチアの姿に少し戸惑いながらあとをついて行った。
「あ!ちゃあちゃんだ!!」
チビはチアの顔を見ると途端に上機嫌になり、抱きついて嬉しそうに足をジタバタさせる。
C「お腹すいたでしょ?なにがいい?お菓子もいっぱい持ってきたしチビちゃんのお洋服もタオルもお箸もお皿も買ってきたよ!」
チアはそう言って袋から出すとラーメンやらポテトチップスやらチョコレートやら…チアの大好物ばかり出てきて、もう一つの袋からはチビのサイズにピッタリな服と必要な日用品が買い揃えられていた。
それを見て俺は改めて自分の気持ちを確信してしまう。
俺はチアのことがやっぱ好きだな…って。
誰かに大きすぎる愛情を惜しむことなく与えられるチアのことが本当に好きだな…って。
そんな事を思いながら目の前で楽しそうに笑い合うチビとチアを俺は見つめた。
つづく
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