文豪ストレイドッグス~村上海賊編~
ちむ
第零話 プロローグ
月夜の大海原に、大小様々な島が連なって浮かんで
目に映る海は、
突如、侵入者を示す鐘の音が鳴る。
「異能力―
青年は自身の体を加速させ、城の屋根を駆け抜け
「
目の前には、頭に思い浮かんだものと全く同じ光景が浮かび上がっていた。腹を刺され、血を流す城主。返り血で赤く染まった部屋。そして、血で濡れた剣を拭く、一人の人物。だが一つ、青年が完全に予想していない事が起きていた。本来なら今すぐこの敵を腰に挿した小刀で手傷を負わせ、城主を治療が出来る場所へ運ばなければならない。だが青年は動けなかった。
「
「そんな、
老人は呟く。
「誰にも判りますまい。この気持ち、この憎悪、、、」
老人の眼には、苦楽を共にしたあの時の様な輝きは宿っていなかった。
ふと老人は外の様子を確認する。見ると、この城に飾られたものと同じ旗を掲げた船が三、四隻向かってきている。騒ぎを聞きつけた仲間の船だ。
「おや、流石村上の端くれか。この時間帯だというのに来るのが早い。ではこれにて、私はお
すると老人は、青年が声を上げる間も無く煙の様に消えてしまった。
呆然と立ち尽くす青年の足元で、小さく
青年ははっと我に返り、うずくまる男に声を掛ける。
「
「早く、、蔵へ、、、奴、、鍵を、、、」
「承知しました。急ぎ向かいます。」
青年はそう
「っやられた、、、!」
青年は絶望した。本来この蔵の中には、「
青年は立ち尽くすだけだった。結局、
どれ位時間が経っただろうか。ふと、蔵の外から青年を呼ぶ仲間の男の声が聞こえる。
「
男は、懐から紙を取り出す。
「これは、、、!」
青年は目を見開いた。今まで深い絶望で埋め尽くされていた心が一気に晴れるような、そんな気分がした。一体
その紙とは、名刺だった。
武装探偵社、探偵―
青年が長年探し求めていた人物であり、唯一の兄弟。双子の姉だった。
男は続ける。
「先日、任務のため兵庫へ訪れていた際に頂いたものです。あまりはっきりと確認したわけではありませんが、
青年は溢れそうな涙を必死に堪える。ようやく見つかった、唯一の姉。心の底からの安堵と嬉しさが、青年の涙腺を緩ませる。
暫くして落ち着きを取り戻してきたころ、青年は名刺の隅に書かれた小さな文字列に気がつく。
「横浜、、、」
そこには探偵社の住所が書かれていた。神奈川県横浜市。この地よりも遥かに発達した都市。其処に、姉がいる。
舟斗と呼ばれた青年は決意した。
「姉上に逢い、この惨状を打開する。」
青年の目は力強かった。遠くの方で微かに見える海はもう、白波を立てては居なかった。
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