首里散策
@inugamiden
首里散策
くれないの、うなだれるはなびらのふさが、三月早々の空へ、キスしている。
私は、石畳の道を――、いや、坂を、歩いてゆく。
二月のジャンパーを脱いで、三月のやわらかなブラウスに身をつつんだ沖縄の空はまるで、良質なフランネルだった。
私も、上着をぬいで、坂を歩く。
戦火のなか、焼かれることなく、今もなお現代の空につつまれている坂の姿は、時をかけてゆくシラサギの背だった。鉄の雨ではなく、風雨が、その白い羽根を、くすんだ色へ、変えつづけている。
ふつうの住居とまざって、史跡や、琉球のころの古民家が、顔をのぞかせる。まるで、絵巻物のなかを、歩いてゆく感じ。ふつうの巻物は、手でひろげてゆくけれど、私は、足でひろげてゆく。門柱のうえでシーサーが二ひき、あくびをしている。
私は、赤瓦の上を越えてゆく、いちわの
首里散策 @inugamiden
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