第50話 暗殺者、次のターゲットを定める。
「ダークさま。今週の売り上げになります」
俺は
ナンバーズ商会の王都支店が開かれてから商会を十日一週間基準で考えるようにした。異世界は休みなく、毎日働いている。店主の都合で休むのが一般的なシステムなので、店によってはシステムの効率が非常に悪く、より下位の店は上の商会に依存することになっている。
どうしてここまで悪いシステムかというと、すべては貴族が権力を握り、通常商会や店から多額のお金を吸い上げるためにこういうシステムになっている。
それを良しとしない商会がいたとしても潰される。それをやっているところこそが『王国商会連合会』。多くの貴族が参加しており、権力を使い非加入者に
「
「はいっ。意外なことにうちの商会に何か仕掛けてくる様子は見えません。おそらくですが……エンギロウ一族の一件でバタバタしているのではないかと。ただまもなく動くのではないかと推測しております」
「うむ。ゲンロウは未だ見つからないんだな?」
「はいっ。神風を動かしておりますが、どうやら王国内にはいないかと」
エンギロウ一族の一件から十日が経過したが、その間に俺の転移魔法を駆使して神風を王国各地に送ったが、残念なことにゲンロウを見つけることはできていない。
「ダークさま。ソフィアさまが戻られてしまいますが……」
「もうそんな時期か……」
「はい。今週末にはソフィアさまも帰還されます。となると、例の件を進めるのは非常に難しいかと思います」
姉がいるとどうしても行動に制限がかかる。姉が学園にいたとしても、ナンバーズ全員で動くことも難しければ、夜に別行動を取ることも難しい。彼女ほどの才能と力を持つ人の目を盗んで動くのは難しい。もし敵ならやりようはあるが、同じベッドで眠っていて常に俺の左腕に抱き付いているので、抜けるのは不可能に近い。
できるならナンバーズからではなく、別な商会を巻き込んだ方がいいと思っていたのだが……それがあだとなったか。
そのとき、扉をトントンと叩く音が聞こえる。
「入れ」
扉が開いて入ってきたのは、黒い髪をショートに揃えて、ナンバーズ護衛の衣装でもある黒い制服を着たレイが入ってきた。
彼女には神風のリーダーとしてナンバーズ商会の護衛部隊の隊長を任命している。
「ダークさま。大至急お耳に入れたいことがございます」
「ああ」
「『王国商会連合会』が動きました」
「レイさん。詳しい報告をお願いします」
「はいっ。
「やはりそうですか……ダークさま。ビヨルド商会は隣の街から王国商会連合会に黙って大量に仕入れて売り捌いている商会です」
『王国商会連合会』から我が商会が狙われて以降、わざわざ手を出さなかったのには理由がある。
あの日以来、荒くれ者たちを返した我々に手を出すはずもない。となると、他の商会から見たとき、『王国商会連合会』が
あのまま荒くれ者たちの首を刎ねてしまっては、あの手この手で王国の権力をかざしてやってくるはずだが、生かしたことで向こうも対応に遅れていたはずだ。さらに元エンギロウ一族の件で『王国商会連合会』を牛耳っている貴族は判断が難しくなると考えた。それが――――その通りになったということだ。
商人というのは非常に
現状をいち早く嗅ぎ分けて実行するはずの商会があると話していたルナ。ビヨルド商会というところがまさにそこのようだな。
「ダークさま。
「もうそこまで調べが付いていたんですね。優秀ですわ。レイさん」
「お褒めいただきありがとうございます」
「ダークさま。以前提案させていただきました――――『王国商会連合会殲滅作戦』の準備が全て整いました。許可をお願いします」
彼女が『フィーアの仮面』を受け取ってから覚悟を決めた目標。王国商会連合会殲滅はその布石でしかない。彼女の大きな一歩を――――
「ターゲット『王国商会連合会』。ナンバーズの総力を持って
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