怪物

@dada02121610

第一話 狐の嫁入り

「狐の嫁入り」

きつね火が並んで、嫁入りの行列の提灯(ちょうちん)を思わせるもの。

日が照りながら小雨が降る天気のこと。


 男は酔っていた。現実と夢との判別ができないほどに。ベロンベロンに酔っていた。


 男は目を覚ますと誰もいない電車の中で椅子に座っていた。

 男は異様な雰囲気を感じ周りを見渡してみたが誰もいない。

 自分の正面の窓を見てみると外には灯りが一切なくまるで田舎にいるかのような景色が見える。

 男は頭を抱えた。

 たしか上司と新宿で居酒屋を梯子していたはずなのになぜこんな田舎の電車にいるんだ。もしかして埼玉にでも来てしまったのか。そう思うほどだった。

 スマホを見てみても圏外になっており8月15日12:00の表示があるだけだ。

 今どこにいるのかも調べることができない。

 ただわかるのは今日はお盆ということだけ。

 今年は仕事が忙しくそんなことを気にしている時間が無かったなー。そんなことを思いながらボーッと景色を見ていた。


 少し時が経ち、急にアナウンスが入った。

「次は〜世川〜次は〜世川〜」

 やはり全く聞いたことがない駅だ。

 ここは山手線や東武東上線でもなく田舎のローカル線なのだろうか。

 そんなことを思っているとだんだん電車のスピードが落ちていき静止した。

 扉が開き外の空気が全身に当たる。

 少し肌寒く空気が重い。

 男性は電車から降り周りを見渡すが寂れた世川と書かれた看板があるぐらいだ。

 周りにも人はいなく駅員もいる気配もない。

 だが、とりあえず駅を出るしかないので改札らしきものを抜けた。

 少し歩くと待合室があり、そこに電車の到着時間が書かれた看板があった。

 見てみるとどうやらこの電車が最終のようで1日に2本しか通らないという限界集落のような過疎化だ。

 もう電車が来ることはないのでとりあえず駅を出た。

 駅を抜けるとそこには田んぼが広がっており、すぐ手前に川が流れている。

 男は川を眺めていると、男性は上司との飲み会の影響か胃がムカムカし始め川に向かって吐瀉物を吐き出した。飲み会で食べた焼き鳥とわかるぐらいの固形物も出てきた。


 しばらくその場で休んでいると小雨ポツポツと雨が降ってきて次第に大雨になって来た。

 男は急いで駅に戻り雨が止むのを待つことにした。

 まあ、特に曇っているわけではなく綺麗なお月様が見えるのですぐに止むだろう。

 そう思い雨宿りをしていると田んぼの方にボアッと赤い灯が長蛇の列になって動いているのが見えた。まるで何かに参列をしているかのように。

 その光はだんだん奥に奥に行くように光も次第に小さくなっている。

 男は現在周りに人がいないことを考えると、この灯を逃したら人と会うことはないだろうと考え走ってその灯の方へと向かった。

 雨が降り頻る中走り。灯もだんだん大きくなって来た。

 男は声をかけようと


「ちょっと待ちなさい!!」


と、声が聞こえると同時に突然足元の地面が消え、横を見ると電車が近づいて来ていた。

 駅員が驚いた顔をしながら男性を掴もうとするがもう間に合わない。

 グシャと聞きなれない音を聞いたあと命が飛び散った。


 ・・・あれ、なんでこの列に並んでるんだっけ・・・。

 ・・・確か電車に轢かれたはずだった気がするけど・・・。

 ・・・まあいいか・・・。

 そうして男性は灯の元へと合流することができた。

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