我が子
泣鬼 漱二郎
私は、ハルを孕んだ
春を孕む
お布団と恋愛ごっこ。スマホが怒ってるから、もうやめないと。
ぐずったお布団を引き剥がして、薬くさいお水で顔を洗う。
今日ははれている。洗濯物がよく乾きそう。カーテンを開いて、ぽっかぽかのお日様を見上げると、眩しくてくしゃみが出た。
洗濯物を干していると、彼に身体を包まれる。
朝から発情とはお盛んね。
ちゃんと避妊しておかないと。みんなおそろいの避妊具で。
でも、完璧なんてないの。外に出ればみんなぐちゃぐちゃ。
私は、もう手遅れ。
私は、ハルを孕んだ。
身体が重くて、怠くて、しかたない。
相手は浮気性で、他の人をまた孕ませたらしい。私の気も知らないで。私の苦しみも知らないで。ただ私の身体にハルを残して。
堕ろしてやろうと何度も思った。病院には何度も行ったし、薬だって飲んだ。
それでもハルは元気に私の中で暴れた。
彼との出会いは突然で、最低で、最悪。
私は麗らかな春の木漏れ日を浴びながら散歩をしてた。
暖かい風が吹いていて、スカートが靡いて、私の黒髪を撫でて。
そして私は彼に攫われて、犯された。
抵抗なんてできなくて、気付いた時には顔が彼の愛液にまみれていた。
べとべとして、ムズ痒かった。
家に帰って、お風呂に入って、全部綺麗にしたけれど、心の不快感は消えなかった。
そのままお布団に潜り込んで、全部忘れようと夢に堕ちた。何もなかった。全部気のせいにしちゃえばいいの。
でも、数日経って、ハルはとうとう気のせいじゃ済まさなくなった。
酷い怠さに襲われて、なんだか風邪っぽい。
もうどうしようもなくなって、私は諦めて、もっと大きな病院を受診した。
お医者さんには、なんでもっと早く来なかったの?って、優しく、ちょっとキツめに怒られた。
だって仕方ないじゃない。こんなの、認めなくないもの。
私はハルを愛してる。でも、私の身体をこんなにしたハルは、心から憎くて、大っ嫌い。
受け取った処方箋に綴られた「内服薬」の文字を睨んで、鼻水を吸った。ああ、目薬も買いに行かないと。
認めちゃったらもう最後。目がムズムズして、くしゃみと鼻水が止まんない。
私は、春を孕んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます