第29話 女子がいなくなった教室と演奏会

(女子がいなくなった教室と演奏会)


 翌日の給食の時間……

 

 教室には、女子が誰一人いなくなった。


「なんだー! これは、女子はどこに行ったっ!」


 この中学校では、担任も教室で生徒たちと一緒に給食を食べる。


「先生が、あんなこと言うから、女子はみんなプールに行っちゃいましたよ!」


 男子ばかりの教室の中、担任の傍にいた男子が言った。


「そんなにプールがいいのかー?」


 担任は、教室を見回した。


「それは知りませんけど……」


 傍にいた男子が言った。


「ちょっと、様子を見に行ってこようか?」


 担任は、振り返った。


「先生っ! 駄目ですよ! 覗きは……、先生も男ですから……」


 別の男子が言った。


 担任は、もう一度振り返り……


「バーカー、何を言う! 俺は教師だっ!」 


「最近、ヘンタイ教師が多いから……」と、別の男子が言った。


「もうー、いいー! もうじきプールも終わる……」


 担任は、呆れながら教机の給食の前に座った。





 その頃、更衣室では……


「もーうー、何やっているのよっ! ここはGL(ガールズ・ラブ)クラブじゃないのよっ!」

と、真理子の激が、今日も更衣室に飛ぶ!


 しかし、今日は雪子の周りの女子が離れない。

 

 みんな裸になって、雪子の体に触ったり、抱き着いたりしている。


「凄い、ぷよぷよ、つるつるで、温かいー!」と、感嘆の声。


「ほんと、何でこんなにおっぱい大きいの? 乳首、透き通ているー!」


 他の女子が、雪子の胸を撫でながら言った。


「もー、離れてよー! 雪子は私のものよ!」


 今日は志穂ですら、雪子に近づけない。


「早く、着替えないと、休み時間終わるわよー!」と琴美も叫ぶ。


「……、ここは、女風呂かっ!」と、裸で騒いでいる女子を見て真理子も叫ぶ。


 あきれ返った、三人は仕方なく着替えて、更衣室を出た。


 今日もいい天気で、太陽が眩しい。

 遠くの山の彼方に積乱雲が沸き立っているのが見えた。


 プールサイドに少しずつ女子が集まってきたころ、ようやく雪子がバスタオル片手に現れた。


「雪ちゃんっ!」と、志穂が雪子に駆け寄る。


 雪子は、走ってきた志穂にバスタオルを投げると、そのまま駆けてプールに飛び込んだ。


 それを見て、多くの女子がプールの周りに集まり雪子の泳ぎに注目した。


「綺麗っ! ……」と、感嘆の声が上がった。


 雪子が、プールから上がると、志穂がすかさず雪子の体をバスタオルで拭く。

 それを見て、また幾人かの女子がバスタオルを持ってきて、雪子の体に触れようと集まってくる。


「もー、雪子はアイドル歌手じゃないのよっ! 早く給食食べなさいー!」と、昨日と同じように真理子が叫ぶ。


「いったい、毎日毎日、何をやっているやら……」と、真理子は怒り気味。


 そして、女子が散ると志穂が雪子に抱き着きながら、やっと真理子たちが用意した給食の場所にたどり着いた。


 雪子がバスタオルの上に座ると、志穂が、今日は自分から雪子の太股を抱きかかえて頬擦りして寝ている。


「志穂っ! もう、いい加減に離れなさいっ! あんた給食まだ残っているでしょうー?」

 今日も、琴美の激が飛ぶ。


「あたし、まだ今日、雪ちゃんのおっぱい触ってない……」


 志穂は、起き上がると、雪子の右の肩掛けを下ろして、おっぱいを出した。

 上半身、半分だけ、はだけて出ている乳房は、太陽の光に明るく照らされ、いつも見慣れたおっぱいよりも、更に大きく見えた。


 志穂は、それを片手で掴んで口の中に入れる。


「志穂っ! もー、何やっているのよっ!」


 琴美は、志穂を無理やり、雪子から引き離し、雪子のはだけた水着を元に戻した。


「雪ちゃんも、志穂に脱がされてちゃー駄目でしょうー!」と琴美。


「あら、そうなの……? 真理子はいつもやっているわよ……」

 まったく脱がされることに抵抗のない雪子を不思議に思いながら、琴美はその視線を真理子に向けて、睨んだ。


「わ、わたしは、ちがうわよっ!」と言って、真理子は視線を反らす。


 志穂は、雪子のおっぱいに触れて満足したのか、ニコニコして残った給食を食べだした。


「ねー、そう言えば、今度、演奏会があるんだけど、見に来ない? 隣の町の学校と合同でやるのよ……」


 志穂は、雪子を見ながら言った。


「そう、そう、おいでよっ! わたしと志穂も出るから……、それに、指揮者にあの土佐正司先生が来るのよー! 凄いでしょうー!」


 琴美は、嬉しそうに自慢げに言う。


「えっ! 凄いー! よくテレビで出ている人ねー!」と真理子。


「そうよー、世界一の指揮者よー!」と琴美。


「それは、褒め過ぎでしょうー」と真理子。


「でも、ちゃんと演奏できるの……?」と雪子は、疑い深く二人を見る。


「もちろんよー! 毎年、この地域の文化事業で、五校の中高からの選抜で特別オーケストラを組むのよー、夏休みの合宿から始まって、十一月の文化の日が、演奏会。うちの学校から五名、一年は私と志穂だけ選ばれたのよ。バイオリンできる人、少ないから……」


「へー、それは見ものだねー!」と、真理子。


「だから、人がたくさん来るから、一様、入場は無料なんだけど、整理券がいるのよ。来るならもらっておいてあげるわー!」


「じゃー、三枚もらっておいて、うちのお兄ちゃんの分も……」と雪子。




 給食をだべ終わった女子が、プールの中で騒いでいる声がする。


 何人かの女子もプールに入って泳ぎだした。


「お、なかなか水泳部らしくなってきたじゃん……」と琴美が言った。

 

 しかし、しばらくすると幾人かの女子が、誰が持ってきたのかビーチボールで遊びだした。


「……、あれもいいいの?」と琴美。


「もー、何でもやってよ!」と、真理子は投げやりだー




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