白の王国(マイナーチェンジ)

路傍土

生まれたての都市〈まち〉

『次は、学園都市駅。学園都市駅。終点です。ご利用ありがとうございました。お忘れ物なきよう、お手回り品のご確認を宜しくお願い致します』

「・・・フニュン、アァウ?」

 車内アナウンスで目を覚ましたしとかは、背伸びを1つすると、荷物を纏め始めた。

「・・・ここが、生まれたてホヤホヤの学園都市、か」

 駅に降り立ったしとかは、駅の目の前に聳え立つ建設途中の塔を見上げた。

「あれが、〈白い教会〉の子供、か。・・・取り敢えず、何か食べるか」

 発展途中の都市だけあって、店舗も新しく、どこか瑞々しさを感じさせた。

「すみません、テイクアウトでコレをお願いします」

 とはいえ、全国展開をしているチェーン店の味は変わらず、安定の値段と味を提供している。

 しとかは、芝生のある広場で、周囲を眺めながらサンドウィットを頬張った。

 約束の時間までまだ少しある。

 しとかは、立ち入りの出来るギリギリの所まで〈白い教会〉を見てみようと歩き出した。

「すみません、ここから先は関係者以外、立ち入り禁止となっています」

 教会を見てみようと行ってはみたが、教会を囲むように建てられた塀の前で警備員に引き留められた。

「ちょっとだけ、ちょっとだけですから。ホンット、チラッて見て、すぐ出て来ますから」

「駄目なものは駄目です。大体、あなた、何者ですか?」

「わ、私ですか?私は、こういう者です」

 しとかは名刺を取り出すと、警備員に渡した。

「・・・遺伝子解析学、津雲しとか。それじゃあ、ここに呼ばれて来たンですか?」

「はい、そうなんです!ねっ、分かったでしょう?だから」

「だからと言って、通す訳にはいきません。数ヶ月もすれば、立ち入る事が出来るかもしれませんから」

「本当ですか、それ?本当に、後、数ヶ月したら、入っても大丈夫なンですか?」

 しとかは粘りに粘ったが、遂に、入れて貰える事は叶わなかった。

 約束の時間が迫って来て仕舞ったからである。

「また、来ます。名刺、とっておいて下さいね!」

 それだけ警備員に伝えると、しとかは待ち合わせの場所に向かって歩いて行った。

「・・・何なンだ、アレ」

 警備員は取り敢えず、受け取った名刺を上着の内ポケットに仕舞った。


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