金髪''が''いい!!!

久保田

第1話:金髪やめた



11月2日.早朝4時半、近所の家々はまだ暗く、全員が寝静まっている寒い朝、


「琴海...」


と、決して朝にはそぐわない吐息とともに、

今作品の主人公である入野将一は黙々と朝のルーチーンに勤しんでいた。


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高校生2年生(17歳)の僕、入野将一(いりのしょういち)は太っている。


だが、一概に''デブ''といった系統でまとめるのはやめてもらいたい。鉄拳のボブみたいな小汚いデブを想像されちゃ困る。

どちらかと言うと、スポンジ・ボブのパトリックみたいなぽっちゃりじゃないだろうか。

僕は愛くるしいぽっちゃり体型なのだ。

それに僕は、金髪の彼女までいる。


そう、''金髪の彼女''だ。


金髪は素晴らしい。大半の人が髪を染めると言うワードを聞いて真っ先に想像するのは金髪だろう。やはり金髪は至高なのである。

そんな金髪の彼女を持っている僕は、確実に勝ち組なのだ。


だが、太っていると一括りにされてしまえば、それまでであり、デブは基本的に魅力がない。タピオカに発情する女性なんていないだろう。


だから僕は、日々の努力を惜しまない。

彼女のことみに愛想つかされないためにも、自分磨きには手を怠らない。今もちょうど、毎朝の日課を終えたところである。


(確か1発15kcalだったはずだから、今日は30kcal痩せたな...)


そんなことを考え、朝活が終わった僕は弁当を作るために台所へ向かう。


僕は料理が得意だ。いわゆる''デキル男''なのだ。

育休とかバンバン取っちゃうタイプなのだ。


弁当を作り始めた頃は正直めんどくさくて、家を出る前に、冷凍食品を適当に詰めていただけだったが、最近は作った弁当を「X」にあげていて、これがまた、毎朝の楽しみになっている。


「今日は琴海の好きな春巻きにしようかな...」


そう独り言を呟くと、


「春巻き!!?」


と後ろからひとりの少女が抱きついてきた。


両親が仕事やらなんやらで居ない今、ただ1人の家族となっていて、唯一の彼女でもある、

妹の琴海(ことみ)だ。入野琴海である。

現在中学三年生(15歳)である。


「おい琴海!

料理中は危ないからやめ.....っ!!」


膨らんだかと表現出来るかも怪しい胸を押し付けるように飛びついてきた琴海を軽く注意しようと振り向いたが、昨日とはすっかり変わっていた彼女に、僕は言葉を失ってしまった。


「おま...その髪...」

彼女には輝きが失くなっていた。

そう、彼女の髪は真っ黒に染まっていたのだ。

唐突な展開すぎて理解が追いついていない中、


「金髪やめた」

と、春巻きをつまみ食いしながら淡々と報告してきた。


僕の自慢の金髪彼女はたった今、僕の頭の中から消え去ってしまった。



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小説の1話としてはとても短くはありましたが、読んで下さりありがとうございます。不定期的にはなりますが、更新していく予定ですので

「あーあの謎作品進んでるんかなー」

程度に見に来て頂けると幸いです。

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