第6話 新しい家族との確執
王女のリコは二年前に結婚の記者会見を行った。
「私は、王女様を愛しています」
リコの結婚相手のオムロン・レンは安っぽい言葉を口から吐いた。
カイは動画を見るのを止めた。
簡単に人前で愛を語る人間は、本当はその人を愛してなどいない。
愛したふりをしているだけで、少しでも嫌な面が見えたら相手が許せなくなる。
カイの母はフランス人で3回の離婚と結婚を繰り返し、今は内縁関係の夫と一緒に暮らしている。
カイには父親違いの弟ラリーがいて、父と母の間を行ったり来たりしながら暮らしている。
カイの実父はラパン人でブラジル育ちだが、今はラパンで暮らしているが元々はサンパウロ出身だ。
父親はカイが9歳の時に離婚をした。
その後カイは同時通訳をしていた母親とアメリカに移住した。
母親はカイが11歳の時に仕事で知り合った、ジョンと言うアメリカの軍人と二度目の結婚をした。
二度目の父親には連れ子がいて、カイより3歳年上のリザという女の子だった。
ジョンは息子ができて嬉しかったが、リザは二人を歓迎しなかった。
大好きなパパを再婚した継母マリーに、取られたことが気に入らなかった。
リザはマリーの代わりに、連れ子のカイを攻撃してきた。
カイは懸命に耐えたが、13歳の時に全寮制のジュニアハイスクールに入学をして難を逃れた。
激しいいじめは、カイの性格を内向的で無口な少年に変えた。
体の小さかったカイは寮生活でも最初はいじめられたが、小さい頃からラパン人の父親に教えられた空手で反撃をすると、寮と学校で一躍人気者になった。
それ以来クラスメイトから、いろんなスポーツに誘われた。
格闘技はもちろん、アメリカンフットボール、バスケットボールに陸上の十種競技などあらゆるスポーツを試して楽しんだ。
特に気に入ったのが、射撃とアーチェリーだった。
打つ前の手中と緊張感が好きになり、大会に出て何度も優勝した。
スポーツをすることで仲間ができ、チームの一員となることで絆もできた。
カイはもう、臆病ないじめられっ子ではなかった。
学校も寮生活も申し分なく楽しかったが、困ったことがひとつだけあった。
長い休みは、寮を追い出されてしまうことが悩みだった。
去年も一昨年も友人の家で過ごした。
友人の家なので、何もしないわけにもいかない。
そこで、家の芝刈りやプール掃除に車の洗車、教会でのボランティアなども参加した。
頼まれれば近所の芝刈りや、庭の手入れも買って出た。
幼い子供たちの遊び相手も積極的にした。
そのおかげで、友人の家族とも仲良くなり長い夏休みを楽しく過ごすことができた。
でも今年の夏休みは、家に帰って来て欲しいと寮にママから手紙が来た。
父親のジョンはいるが、リザは友達の家でバカンスを過ごすので心配ないと書いてあった。
カイはあまり乗り気がしなかったが、断る理由が見つからなかった。
何より半年ぶりに両親に会ってみたかった。
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