第32話
学園には、6つの学派があった。
1つは私たちのいるヴァレッタ学園領。
さっきも言った通り、街の西側にその区画が存在している。
残り5つの学派は、それぞれ北、東、南、中央、南西に分布してる。
学派の中でもとくにレベルが高いのが中央にある「テネブラエ学園領」だ。
第1から第5街区を管轄しているこの学派は、学園都市の創設当初からあるもっとも古い学派の1つで、開設当初は主に自然科学研究機構の運営や、国際関係分野の学部、外国語分野の学部などの教育を主軸に環境の整備と推進を行ってきた。
今では「20系統92分野別」に分かれた学部・学科・コースを6つの学派が分け合っており、それぞれがそれぞれの理念や思想(研究法等)を基軸に、生徒の教育と育成を行っている。
【北】 イルサバード学園領。
【東】 ハードウッド学園領。
【南】 リバティプール学園領。
【中央】 テネブラエ学園領。
【南西】 ハルモニア学園領。
【西】 ヴァレッタ学園領。
それぞれの地区、学園ごとにイメージカラーやデザインが異なり、街並みも全然違う。
私たちの街は現代都市って感じのゴミゴミした作りになってるが、例えば南のリバティプールは、全体が水上都市のような幻想的な構造になってて、自動車や自転車で走る道路は一つもない。
街の道路のすべてが水路でできてて、交通機関としては水上バスか水上タクシーを利用するようになってる。
歩くだけでもすごく綺麗な場所だ。
とくに夜は。
北のイルサバードは、“環境”をモチーフにした都市だ。
街の至る所で様々な種類の木や植物が植えられ、「グリーンタワーズ」と呼ばれる約200種類の植物で覆われたビルが、街の景色や構造のメインストリームになっている。
交通システムや公共施設、工業地帯などのさまざまな区画が、「森林都市」と銘打たれた街づくりのデザインに反映されていて、街全体が緑に溢れた景観となっていた。
各ビルには75000平方フィート(6968平方メートル)以上の木や植物が植えられているせいか、遠目からでも街の色が違うのがわかる。
アカネの部屋からも見えるんだ。
双眼鏡で覗かないとだけど。
『Nプロジェクト』と呼ばれる“科学的リテラシー(科学的能力)を全ての子どもに”と題された学園のテーマは、テネブラエ学園領の中心部にあるプラザに、今もなお石碑として掲げられている。
6つの学派は、元々は1つの『理念』のためにその活動と教育の場を広げてきた。
今となってはその理念よりも独自の思想や理念の推進活動が目立つようになってきており、1つの事柄に対する考え方や方針も違う。
とはいえ、全体を管轄する『バラム学園都市』の都市委員会が各学派の調査や監査を行っていて、学園領によって大きな方針の違いや教育の内容が逸脱しないよう、定期的に監査活動を行っているらしい。
都市内部では海外からの訪問者や事業拡大の提案も多いから、年々街の発展とその多様化が加速してるそうだった。
元々、学園都市が大きく発展したのも、外部からの協力があったそうだから(噂に聞いた程度だけど)。
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