第17話
葵は「断空」の効果範囲を解除し、手のひらの中に超重力圏を形成しながら、質量の閉じ込めを始めた。
対象となる「質量」は空間そのものだ。
超高圧縮した原子などの素粒子をある一点に閉じ込め、その圧縮過程で生成された核融合反応を「重力波」として放出する。
下手を打てば学園ごと吹き飛ぶほどの威力を持つが、演習場のフィールドには強大なバリアが張られていることを見越した彼女は、失格処分を覚悟で行動に移った。
その選択をした理由は2つあった。
1つは、西園寺リョウの磁気圏内で戦うことは、相応のエネルギーが必要になるということ。
そしてもう1つは、“腹が立った”ということだ。
それもそのはずだ。
後期の授業の内容に関わる大事な一戦で、あろうことか、外部からの重大なルール違反があった。
しかもその違反者は“学園の問題児”で、犬猿の仲。
さっさと勝負を決めて、直接殴りに行きたいと思っていた。
優先順位が切り替わったのだ。
試合に勝つという目的よりも、顔面に1発いれてやりたいという「欲望」の方に。
一箇所に集めたエネルギーを放出する。
その間僅かに1秒前後。
それだけで十分だった。
フィールド全体を吹き飛ばすだけの力は。
ドンッ
という巨大な衝撃波がフィールドの中心に発生し、空間が見えなくなるほどの塵が巻き上げられる。
全方位へと放出されるエネルギー。
波のように伝っていく空気の振動。
彼女の持つもっとも危険な技の一つだ。
魔法省直属の普通科第一連隊司令部から「準特級クラス」の烙印を押されている、“学園屈指の天才”、——水崎葵の。
この戦いの後、彼女が職員室へと呼び出されたのは言うまでもない。
なにせ、前回に引き続き会場を破壊してしまったのだから…(一部ではあるが)。
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