第9話


 「どこ見てんだ?」


 「は!?」



 背後から「声」がした。


 でも、そんなバカな。


 フィールド内には私とレザックしかいないはず。


 電子音のようなノイズと、悪寒。


 振り返ったんだ。


 地面への攻撃を取りやめ。


 振り返ったそこには、液体から個体に変化している段階の、モヤのような膜状の金属が円形に膨らんでいた。


 モクモクと波打ちながら膨張しては、「人」の形へと変化しようとしている。


 無数の粒子が一カ所へと集まっていく。


 粒子は四方から集まってきていた。


 その全てが、地面の中から浮かび上がってきていた。



 次第にはっきりとした輪郭を帯びてくる。


 伸びたり縮んだりしている銀色の体表。


 まるでスライムのように、不規則な形状の変化を繰り返していた。


 いつから結合が始まっていたのかはわからないが、すでにその表面積は人間の大きさくらいある。


 それが「レザック」だというのは瞬時にわかった。


 ただ、その認識の背後には、理解の追いつかない疑問点があった。


 それはさっき感じていた違和感の延長線上にあるものだった。


 地面の中から出てくるのはわかるけど、なんで自由に空中を…?




 ってか、やばッ



 凝固と変形を繰り返す“最中”から飛び出してきた「腕」の形。


 ガードが間に合わなかった。


 反転して咄嗟に腕を持ち上げたが、咄嗟のことすぎて反応できなかった。


 衝撃をうまく吸収できず、もろに被弾する。


 “金属”というだけあって表面が硬く、重い。


 アバラの下にめり込む背後からの攻撃。


 周囲に広げていた無重力状態が仇となり、そのまま地面に叩きつけられてしまった。

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