第8話
私の意識が他に移らない限りは、フィールドの内側は視界の中に捕捉できる。
ちっ
精度がイマイチだな。
ところ構わずぶつけてはいるが、狙い通りってわけにはいかない。
チラッと観客席の方に目を移した。
気を抜いたわけじゃない。
変な視線を感じて、その気配の方向に目を向けたんだ。
観客席はガラガラだ。
授業の演習にわざわざ観戦しにくるやつはいない。
各エリアのバトルはモニターでも確認できる。
いるのはクラスの連中数人と、ビショップのチームの何人かか?
…あれは?
観客席の中で、北側の最前列に座ってる生徒が見えた。
フェンス手前の柵にもたれてる男子グループ。
1人は組んだ足を乗せ、偉そうにふんぞりかえってた。
“西園寺リョウ“
学園の問題児で、同じ日本人の血を持つ私によくちょっかいを出してくる。
アイツはこの試合になんの関係もないはずだけど?
ガラの悪い金髪が遠目からでも目立ってた。
いっそアイツらも巻き込んでやりたいくらいだが、今日は失格を食らうわけにはいかないんでね。
…でも、待てよ
へんな違和感が頭の中に走った。
レザックは液体金属(メタル)の特性を持ってるが、体を変化させることができるだけで、外界の環境やその状態まで操作することはできない。
なのになんで自分の体を“浮遊させることができた”?
体を分裂できるのは理解できる。
脳幹細胞そのものを分解し、それぞれの分裂体同士を金属内の電磁波でネットワークを結べば、遠隔で操作することもできるだろう。
腑に落ちないのは、私に向けて放ったあの「リング」。
変な動きをしてた。
“変”というか、重力に逆らったような動きをしてた。
上空に飛び上がった後もそうだ。
遠隔で操作できると言っても、コントロールできるのは体の内側の組織なだけなはず。
周りの環境までは変えることができない。
地面の中にいながら、どうやって自分の体を宙に浮かせた?
私を追ってきていた。
1つ1つの金属の粒子が。
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