俺の影に君という光が差し込んだ〜純情過ぎる恋愛は砂糖より甘いと知った〜

アレクサンドル

序章

第1話 好きだ 〜君に届いて欲しい想い〜


 







 日が暮れ始めの空。5月で少し気温が低いがそんなことを忘れさせるくらい俺は喜んでいる



 キーンコーンカーンコーン


 「気をつけて帰れよー」


 

  チャイムが鳴り、先生のこの声が響く………よし、学校が終わった。




  よし。この後は何もない。バイトもないし用事もない。ゲームがし放題だ、よし。誰にも邪魔されずに楽しめる、よし。早く帰って……




 「あ、沢北ー」


 「!…はい」


 「このプリント、元宮に渡してきてくれるか?」


 「……………はい」


 「じゃあ、頼むなー」


 「……………」




 先生に渡されたプリントをみながら俺は正直嬉しかった




 沢北哲也(16)


 高2


 誕生日12月10日


 身長177cm


 好きなこと ゲーム、映画鑑賞(とカッコつけるが本当は大人のビデオを見ることが多い……)

 

 ・陰キャで友達は少ない。どういう陰キャかというと、体育でサッカーをしてたとすると、下手過ぎて表では特に言われないが裏で『あいつは使えないからパスを回すな』と言われるレベル。因みに明るいやつが下手の時は『お前、何やってんだよ〜(笑)』で済む(沢北談)






 「テッツ!」ガッ


 「!」


 「どうしたよ、そんな顔して。嬉しいのか?」


 「何だ、お前か」


 「何だって何だよ」


 「部活へ行かなくていいのか?」


 「素っ気ねーなぁ。何だ?欲求不満か(笑)?」

 



 肩を組んできたこいつは調月健太(つかつきけんた)。あだ名は『ツッキー』。こういうことをずけずけ言ってくる幼馴染の数少ない親友だ。サッカー部のエースで『U-17』に選ばれるであろう実力を持っていて高3の先輩方に『次に部長になるのはケン(※もう一つの呼ばれ方)しかいない』とも言われている。まぁ、当然だな




 「はぁーー…で、マジ何の用?」


 「大親友に対して冷てーなぁ…………そういや帰ったら何すんの?」


 「有意義な時間を過ごす」


 「どうせサバゲーかアダ……


 「後者は違げーよ!」


 「そ、そうか」(食い気味…)


 「ていうか、そんなことを聞きに来たの?」


 「そんな訳ないだろーが!お前、元宮にプリント渡しに行くんだろ?」



 こいつは本当によく喋るな



 「そうだけど?」


 「良かったな〜(笑)」


 「何が?」


 「『何が』って何よ!応援しに来たんだろーが」


 「応援?何の?」


 「お前、ポーカーフェイスは上手いけど嘘をつくのが下手なんだよなー」


 「……………」


 「体育のバスケの時も女子が隣でバレーをやっていた時に元宮がジャンプサーブした時に胸が揺れてるところをずっと見ていてボールが顔面に……



    バッ


  むがっ!!」


 「言うんじゃねぇ…///」


 「ま、まぁ、あれは興奮したよな〜(笑)?」


 「お前こそ体育が始まる前に教室で雨宮さん(クラスの女子)が着替えてたところを見て……


 「それは言うな!」


 そう、この変態は今日、学校に遅れてきた雨宮梓(あまみやあずさ)さんが教室で1人で体操着に着替えてたとこを忘れ物を取りに来た時に見てしまって思い切りビンタされた(手形の後が残ってた)。しかも戻ってきた時、俺に謝罪の念を話すのかと思いきや……




  『Dはあったな。ブラも派手だった』




 ふざけてんだろ。終わってんだろ




 「そんでよ、元宮に渡しに行くんだろ?」



 「あぁ、元宮は部活で武道場にいると思うからそこに向かうよ」


 「そっか………そういやお前……



  グイ



 「!」

 




       元宮にいつ告るんだ?」ボソッ



 「ああ、まだ検討中だよ。でも、2年の間中に…………は?」



 ケンが俺の顔を近づけて言ってきたことに俺は普通に返してたが…………


 

 「そっか、2年の間にか」


 「………………」


 「ヒュ〜」


 「止めろ、◯したくなる」


 「なはは、悪い悪い…………まっ、早い方がいいぞ?元宮の《倍率》は高いからなー」


 「…………そうか、ご忠告ありがとな。じゃっ」




 スタ スタ   スタ


 


 「…………………」


 「おい、ケン!永田(サッカー部の顧問)が呼んでんぞ!!」


 「おー、今行くー」









 スタ スタ スタ



 どうしようか……何て言って渡そうか…普通に『元宮さんに用があるんですが、居らっしゃいますか?』……これが無難だな。そうだこれにしよう。つまらないけど……いや、つまらないとかじゃないよな、よし……声に出して練習するか



 「元み……


 

 「あ、哲也君!!」



 「!!?」ビクッ!



 「ごめん、驚かせちゃったかな……」



 「大丈夫………………どうしてここに……」



 「教室に忘れ物しちゃって取りに行こうと思ってたんだ」


 「……………」



 夕日が入り込む廊下。そこに凛と佇む身長170cmで茶髪のロングヘアー。すらりとくびれがはっきりしていて…………あ、これ以上は俺も変態になってしまう…………そう、この人が俺と同じクラスの元宮真綾(もとみやまあや)だ



 「それで、どうしたの?」



 あぁ、首を少し傾げ聞いてくる様がもう……!



 「あぁ、これ、先生から」ピラッ


 「ありがとう」


 元宮は生徒会の仕事してるから、その類のプリントだろう


 

 「この後、部活だよね?」



 

 俺はお礼の時の笑顔を噛み締めながら、できるだけ顔に出さないよう聞いた



 

 「そうだよ。今日は筋トレメインだから大変だよー、苦手だからさぁ」





 とは言っても、俺よりは筋力あるだろうな。遅くなったけど、元宮はフェンシング部だ。幼い頃からやっていて、高校一年の頃、全国大会で個人のエペ・フルーレの部にて優勝をする実力者だ。彼女も一応、保育園から一緒の幼馴染だ。ん?そういや、何だか俺の周りってすごい人が多いな……


 


 「哲也君はこの後は何か用事あるの?」


 「いや、特に用事はないかな……帰って、家の手伝いとゲームをするくらい」


 「そうなんだ」



 あ、ここはカッコつけて10kmランニングして筋トレするとか言えば良かったかな



 「それじゃあ、そろそろ行くね。じゃあね、哲也君!」


 「じゃあね」



 スタ スタ  スタ



 「……………」


 

 ああ……やったわ、これ。あまり話せなかった。あんな普通の会話しか出来なかった。ていうか、普通なのはともかく、『部活頑張ってね』すら言えなかった……正直、緊張し過ぎて何話せばいいか分からなかったんだよな……あぁ………やったな。つまらない奴だと思われてるだろうな……










 スタ スタ  スタ



 「おー、元宮。もう練習始まるぞー、早く着替えて来い」


 「はい!」



 



 部長に言われて少女は部室に入ってった



 バタン



 「……………」




 『あぁ、これ、先生から』




 「……………」




 『じゃあね』




 「……………バレてないよね……」





 ガチャ



 少女は自分のロッカーを開けて鏡を見てこう言った




 「やばい………哲也君………

















        好き


















     好き好き好き好き好きー!!どうしよう、好きすぎる!何よあの、表情!何もしてないのに……カッコいい……反則だよ……どうしよう、緊張のあまり、急いで離れちゃったけど、顔が赤くなってたのバレなかったかな………でも、どうしよう……あんな普通の会話しか出来なかった。つまらない奴って思われてないかな……」






 ※元宮真綾……沢北哲也のことが大好きである。もうそれはずっと前から………






 「本当に好きだよ………テツ君」




 


















 ガタンゴトン ガタンゴトン



 俺は、夕日が差し込む電車に揺られながら、サバゲーをしていた。この時間帯は乗客も少ないから座れる………



 そういえば遅くなったが、俺は……






















     元宮真綾が大好きだ


 





 ケンとの会話で薄々気づかれてたかもしれないが好きだ。好きと気づいたキッカケは、ごくシンプルだった。入学式の時……







 「テッッツ!」ガバッ


 「何だ?」


 「一緒の学校になれたな!!」


 「そうだな。正直、お前が受かるとは思わなかったよ。ここの偏差値高いし」


 「お前と一緒になりたくて必死に勉強したからな!」


 「本当は?」


 「ここの女子ってみんな可愛いからな。ここに入学したらハーレムだろ?」


 「だろーな」


 「でも、お前と一緒になりたかったのは本当だぜ?」


 「………それは俺もだ」


 「ん?照れてんのか?」


 「照れてない」



 「哲也君!調月君!」



 「「!」」


 

 「やっほー!」



 「元宮!そういえばお前も同じ高校だったな」


 「そうだよー、幼馴染3人で同じ高校になれて良かったね!」


 「そうだな!」


 

 ケンと元宮が普通に話すなか、俺は話すタイミングを探していた



 「哲也君」


 「はひ!?」



 話しかけられて変な声が出た






 「また、3年間宜しくね!」ニコ


 「よ、宜しく」


 「それじゃあ、私、友達待たせてるから行くね!」


 「おう!また明日から宜しくな!」


 「うん!またね!」ふりふり



 タッ タッ タッ




 「……………」


 「テツ、変な声出てたな(笑)」


 「そこに触れんな」


 「ていうか、お前、元宮のこと好きだろ」


 「はぁ!?何でっ……


 「だって元宮と話す時、お前っていつも辿々しくなるし、顔赤くなるし、目線合わせてないし、好きの典型的なパターンじゃん」


 

 



 「い、いや、俺はただ、元宮と話すだけで、心が晴れて、笑顔が綻んで、幸せなだけだ。もう本当に話すだけで充分なんだよ。これ以上の物を求なくてもいいくらいなだけだよ。後は元宮の笑顔が見れることが俺の一番の幸せだ。ていうか、元宮を見るだけで嬉しくて嬉しくて、鼓動が早くなるだけだ………あ………

 

 



 「それを好きって言うんじゃねーの?」

 




 「………………」





 「ふ〜↑」ニヤニヤ


 「止めろ!◯したくなる」






 とまぁ、こんな経緯だ。俺は元宮が好きだったってこの時、気づいた。好きになった『キッカケ』はそのうち話そうと思う。あの子が俺の闇を照らしてくれた。本当に色々あったんだ。結構話してきたが…要するに……



 これからの俺の恋路の応援を宜しくな




















  だが、俺はまだ分かってなかったんだ。これから起こることがどんなことか






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