ごるご伝説

希藤俊

第1話 見たら殺しゅ

 このお話に登場する主人公について、予め読者の皆さんだけにこっそり教えておこう。


 なお以下については、主人公に関するマル秘情報であり、情報元は内閣調査室に秘蔵されている『国家的危険人物情報』によるものである。


●氏名・・・・・ごるご さぃてい

●危険度・・・Sレベル(最上級)

●年齢・・・・・不詳

●性別・・・・・小さめではあるが付いている

●出身・・・・・ロシア生まれフランス育ちの噂

●家族・・・・・不明。闇一族か?

●住所・・・・・品川界隈

●職業・・・・・サラリーマン、殺し屋?

●性格・・・・・スウィート

●行動・・・・・ミステリアス

●体格・・・・・マッチョ

●服装・・・・・ファッショナブル

●趣味・・・・・女装

●口癖・・・・・殺しゅ

●髪型・・・・・マルガリータ(稲妻剃り込み有り)

●ペット・・・タイガー

●必殺技・・・浣腸ぼんばぁ

●得意技・・・稲妻押し

●愛読書・・・広辞苑


 髪型は青々とした五厘刈りのマルガリータ。しかもすっきりぐっきりの稲妻ライン有り。目つきは広瀬すずを見詰める童貞男性ファンのように鋭く、顔は渋くそしてことさらに怖い。


 全身まるで筋肉マンのようにマッチョりしている。例え相手が橋本環奈であってもけっして利き手で握手などしない。そして静かに孤独を愛する。


 まるであの伝説の殺し屋ゴルゴ13そのものである。


 同じ職場で顔を合わせて既に5年も経つが、ヤツの過去を知る者は誰もいない。


 酒はどんな酒をいくら飲んでも、まったく酔うことなどない。ヤツから愚痴など聞いたことはないし、私生活についてはいっさい語る事などない。


 ゴルゴ13と同様に後ろに立たれるのを嫌う。ヤツはけっして背中を見せない。誰であっても。例え床屋のオヤジであっても。


 いつの頃からだろうか?いつの間にか、知らぬ者が誰一人いない職場の恐怖伝説となっている。


『ヤツの後ろに、けっして立ってはならない。命を惜しむ者なら・・・・・』


 ヤツの後ろに立って、翌日の朝陽を見た者など未だかっていない。


 ある眠気を誘いそうな暖かな春の日の昼休みのことである。喉の乾きにふと一口含んだお茶に睡眠薬が仕込まれていたのだろうか、ヤツが机上で気絶していた。


 ヨダレをしどけなく垂れ流したままに。


 職場では凄腕と呼ばれるキレ者の男子職員が、すかさず音も立てず忍び寄り、禁じられた恐怖世界、ヤツの背後をロックオン。


 キレ者は思わず見てしまった。ヤツの清楚なピンクのシルクブラウスの広い背中を二分する、漆黒のブラジャーの跡を・・・・・


 小さな前を見事に膨らませ、呆然と立ち尽くすキレ者の耳に、いつの間にか目を覚ましたヤツの、まるで糖尿のような甘い声が流れた。


 「見たら殺しゅ・・・・・」


 その日の午後のとこである。トイレの個室を開いた部長の絶叫が職場に響き渡った。


 ヤツの後ろに立ったあの男子職員が、真っ白な洋式トイレの上で、限りなく太いのを漏らしながら息絶えていたのだ。


 モクモクとひとり、仕事をこなすヤツのさり気なく漏らした独り言が、凍りついた職場にクサ臭とともに流れた。


 『死して太いの流すことなし』


 伝説は続く・・・・・

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