第6話 経営が行き詰まり夫婦喧嘩

「こんにちは理香子さん、あの辰徳は」

「ああ、お義父さんとお儀母さん、いらっしゃい。辰徳さん気分晴らしに出かけていますが」

「いや最近お客さん減っているから心配でね」

「なぁに一段落してこれからですよ」

「そうかい、それなら良いが」


 理香子はまさか喧嘩したとは言えず、久し振りの休みですからと出かけて居ると帰って貰った。一方の辰徳は昼過ぎから飲み屋に出掛け、夜になると居酒屋の梯子酒をしていた。たまたま隣に居合せた辰徳の高校時代の同級生が辰徳に声を掛ける。

「よ~辰徳、パン屋を始めたらしいが景気はどうだ」

「おー幸助か、まぁまぁだな」

「ホントかよ、なんでも噂では最近客が来ないそうじゃないか、そうだろう。でなきゃあこんなに飲んだくれている訳ないよな」

「なんだと! 余計なお世話だ。五月蠅いだよ。お前」

「なんでぇ噂はやはり本当か、でなきゃあちょっと言われたくらい絡んでこないよな」


「てめぇ五月蠅いと言っているだろう。文句あるなら表に出ろ」

 同級生だから遠慮はない、本当に表に出て殴り合いの喧嘩になった。誰かが通報したかパトカーがやって来る大騒ぎになった。それから一時間して理香子のスマホが鳴った。知らない電話番号だ。おそるおそる電話に出ると警察署からだった。身元引受人が来ないと今晩泊まって貰う事になるという事だった。慌てて理香子はタクシーで警察署に向かった。事情は良く聞かされた。理香子も呆れた。でもここで怒っては夫婦に亀裂が入るグっと怒りを抑えて連れて帰った。


つづく


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る