2.ワシントン

 ワシントンの父親が怒鳴りました。

「おい、この桜の木の枝を切ったのは誰だ!」

 少年のワシントンはダッシュで逃げました。

 父親が「待てー!」と追いかけ、二人は桜の木の周りをぐるぐると走り、速度を上げていきます。

 目にも止まらない速さとなった二人はやがて溶けて、バターになりました。

「こりゃ驚いたぞ、人間がバターになるだなんて!」

 父親がそう叫ぶと、息子は黄色い声で叫びました。

「そうだ! 人間からバターを作って、大きな工場にしようよ!」

 バターになった親子は力を合わせ、どこからか連れてきた大勢の人々を工場で走らせては次々とバターにして、売り飛ばして大儲けしました。

 その後、数十年に渡ってバターの売り上げは伸び続けたそうです。

「大統領なんかより、ずっと儲かるわい」

 とほくそ笑み、ワシントンは満足して死んだそうです。アメリカン・ドリームの終焉でした。

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