バターになってしまう掌編集

1.浦島太郎

「いよいよ、お別れの日がやってきましたね」

 ついに、乙姫様がその言葉を口にしました。

「いやだ、お別れなんていやだ、帰りたくない!」

 浦島太郎は駄々をこねています。

「この玉手箱を……」

「いやだ、受け取りたくないよ!」

 と叫ぶと、浦島太郎は走って逃げました。

「待って!」

 追いかける乙姫様を振り切るように、浦島太郎は必死になって逃げ回ります。竜宮城の太い柱の周りを、ぐるぐると……。

 やがて二人は溶けてバターになり、竜宮城の鯛や平目たちはホットケーキを焼いて食べました。

 めでたし、めでたし。

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