恋の宝箱(短編集)

コーシロー

第1話 いつか、きっと・・・

1.


明後日あさって、東京駅で、会えませんか?」


SNSのDMで、急にそんなことを言ってきたのは、

福岡県在住の由美ゆみちゃんだった。


(会えませんかって・・・)


由美ちゃんと僕は、確かに仲が良かった。

でも、それはSNS上のことで、実際に会ったこともないし、

フルネームさえ、お互いに知らなかった。


「え? どういうこと?」


僕はすぐにDMを返した。

僕は都内の大学へ通う、一人暮らしの暇人だ。

だから、急に明後日と言われても、特には困らなかったが、

仲良しといっても一面識いちめんしきもない女の子に、急に会いたいと言われても・・・。


「それは、会ってから話すから。お願い、私、東京って初めてで、

 何も分からないから」

「わかった。じゃあ、東京駅の・・・」


僕はOKした。

何か分からないが、女の子が困ってるんだ。

ここで断るようじゃ、オトコじゃないぞ。


(可愛いコかな? それとも・・・)


お互いにフルネームを初めて名乗り、行き違いのないように

電話番号も交換した。

写真は、彼女が「私、美人じゃないし・・・」とのことで、

会ってからのお楽しみということになった。


そして、友人にメールして、大学の講義のノートを頼んで

(代わりに、今度の飲み代を負担することになった)、

バイト先に休みの連絡を入れた。


(さて、これでいいかな。でも、どんな用事なんだろう?)


部屋の窓から空を見上げると、秋らしい高い青空が、

静かに陽光をたたえていた。



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