18話 信者で埋まるコメント欄(Yawtubeコメント欄)
「ええー! アレそんなにするの!?」
自分のポーションが僅かな量で1兆G。日本円にして1兆円。
信じられぬ事実を聞かされたアキナは、思わず驚きの声をあげた。
「帰ってくる時に沢山作ってきたはずなんだけど……」
「パンデミックとか災害とか色々起こったせいで、もうほとんどねえってジン君、言ってったっす」
「アキさん! 商人にガツンと言ってやりましょうよ!」
「そうね。ちゃんと配信者のために使われているか、横流しされていないかを、きっちりチェックしなきゃいけないわね!」
違うと訴えかけるような表情をこちらに向けたレナが、呆れたように続けた。
「……ちげーっす。1兆円のもんを商人は5万円で買い叩いてんっすよ! そんなんぜってえおかしいっすよ!」
「うーん。でもアレ作り方はそんなに難しくないのよ。私は5万円でも高いって思うから別に良いかな」
「そんな超もってねえっす」
残念そうにつぶやいた後、レナは何かを閃いた様な表情を浮かべた。
この後なにを言おうとしているかは、だいたい想像ができる。
「でもアキさん、そんなにすげえポーション作れるなら、それを売れば、配信なんてやんなくても、すげえ大金持ちになれると思うんっすけど」
「こっちだと魔道具や魔法薬は役に立たないじゃない」
「そっか。ん? 待てよ、難病の人とかにダンジョンに来てもらって、そこで使えば……」
次にレナが言う言葉も、だいたい予想できた。
「あ! そうすれば、お母さんも簡単に助けられちゃいますね!」
「……ごめん。そういうのはしたくないの」
「ええ!? どうしてっすか?」
魔法が使えず、聖女としての名声も無いこの世界でも頑張って夢をかなえる。
そう誓ってアキナは、こちらの世界に帰ってきた。
だが、戻って来てからは、頑張っても報われない自分の無力さを痛感する情けない毎日を過ごしてきた。
なので、聖女としての力や名声が無い、こちらの世界の自分の力で、今、家族の間で起きている様々な問題を解決したかった。
勿論、聖女の力を売りに配信者をやっている事は矛盾していると分かっている。だから配信中は力を可能な限り抑えているし、必要なおカネが貯まれば直ぐにでも辞めるつもりでいる。
その為、自分が作る魔法薬や治癒魔法で儲けることなど絶対にやりたくなかった。
最もどんな状況でも、それに固執するつもりはない。
母の病状が更に悪化して、手の施しようがない状態になったら【生態系の迷宮】に連れていき自分の治癒魔法で治すつもりではいた。
だが、それは本当に最後の手段だ。
「あの、アキさん」
レナに話しかけられて、ハッとする。
レナの部屋でお菓子を食べながらミーティングという名の2人だけの女子会を行っている最中なのに、完全に自分の世界に浸ってしまった。
なにかこちらから話を振って、話題を切り替えなくては。
「ねえ、さっきアップロードした動画、評判どんな感じかな?」
「ちょっと待ってくださいね」
アキナはスマホを取り出し、レナと一緒に動画を見はじめた。
“皆さんこんにちは♡ アラフォーなつめです♡ 今日は魔法のバリアを張ったままモンスターに走って突撃したらどうなるかの実験をしたいと思います!”
“すごいです。すごいです。どんどん吹き飛んでいます! いやー私のバリア凄いですね!”
“あー止められました。ちょっと大きいサイズのモンスターでは、体重が足りなくて無理です。でもバリアは壊れていません”
“今日は私の体重が軽い事が証明できて大満足でした! この動画を見て面白いと思ってくれたならチャンネル登録と高評価をお願いします!”
動画の自分がただの馬鹿にしか思えず、恥ずかしいを通り越して呆れてしまった。
「ねえ、こんなのどこが面白いのかな?」
「面白いじゃないっすか! 再生もいっぱい回ってますしコメント欄も好評っすよ!」
FanboyGamer3000
なつめさんのバリアは世界を救うレベル!誰が何と言おうとこれは真実
ねこLove
なつめ様のバリア、いや、なつめ様自体が神々しい!次はバリアで世界平和を‼
HahaSoFun21"
爆笑して腹筋崩壊😂
でも冗談抜きでなつめさんは神。信じない者は滅びるでしょう
ウルトラファン_2040
なつめ様。あなたの体重は気になりません。
あなたの魔法が重たいんです、世界を変えるほどに
NoBrainerFollow
あなたは女神様。バリアで全てを癒してくれるなら死ぬまでついていく💕
(世代が違うからなのかな?)
ダンジョン配信の主要視聴者層は、10代後半から20代前半の男女である。
一方、アキナは30代後半の女性で、よく見るYawtube動画は料理系や宅トレ系だ。
ダンジョン配信者は自分が配信者になる前は全く見たことがなかった。
今は、トークやリアクションなどを参考にするために見る事はあるが、それでも何が良いのか分からないので楽しんでみることはない。
(魔法使えるのが私だけだから物珍しがってるのかな? どっちにしろ、ブームみたいなものだから、すぐ終わっちゃうわね。それまでに必要なおカネを稼がなきゃ!)
アップロードした動画の広告収益はどれも良い感じで、このままいけばレナに渡す分を含めても、数年分の必要なおカネが手に入ることになる。
稼げるうちに沢山稼ぐ決意を固めてアキナは、レナの部屋を後にした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ご拝読いただききありがとうございます。
アキナは実に堅実で現実的な見方をしています!
しかし、そんな予想とは裏腹にこれからもっと大金をじゃんじゃん稼いでいきます!
この小説が面白いと思って頂けましたら、執筆する励みにもなりますので、★とフォローをお願いいたします!
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