無能な女子高生に生まれ変わった私が【運命の神】と呼ばれる？~堕ちて黒くなるはずのヒロインたちが、命をかけて私を守り、私と恋に落ちる、なんで？～

第71話 永遠の王の陰謀

「和歌子ちゃん、そろそろいいんじゃない？そろそろ動こうよ」

　高貴な泉龍シャトーの赤ワインが丸いグラスの中で左右に転がり、男はグラスを持ち上げて優雅に一口飲んだ。

　大阪市のど真ん中にある TF 総合公社（政府機関）のビルは、夜と吹雪の闇に隠れ、遠くから見ると混乱しているように見えた。

　男はこのビルの最上階に住み始めて 1 年になる。この 1 年間、大建築から一歩も出ず、用事はすべて誰かに任せ、厄介なことがあれば他の王を派遣して解決させていた。

　その男は永遠に生きる能力を持つ【第一の王】であり、その名は謎に包まれている。あまりに長生きしたため、自分の名前すら忘れてしまったと言われている。 彼は魂を操りながら命の長さを操り、死者を復活させることさえでき、その強力な能力ゆえに王たちは喜んで彼に従う。

　それぞれの王はそれぞれの信念のために行動しているが、彼らは皆、【第一の王】に認められ、【第一の王】の力を使って失った大切なものを取り戻したいと願っている。

「まあ、ご希望次第ですが……」

　男の真向かいに置かれたゴージャスなソファには、高貴な女王だけが所有するにふさわしい純紅のハイカラローブをまとった、拗ねたような見事な美女が横たわっていた。

　その女性の姿勢はとてもカジュアルで、フォーマルな場でのあるべき姿とはまったく違っていた。

「ははは、私の愛しい人、私はああ意見があったら、私はあなたに尋ねませんでした」

　男はハンサムな頬をほっそりとした手に預け、目の前の魅惑的な和歌子をそっと見つめた。

　彼女は腰をくねらせ、細い太ももをソファの肘掛けに乗せた。

「ちくしょう、迷惑だ。横にいる部下に聞けばいいじゃないか。 困らせる必要がある」

「それなら、私のこの質問に答えられる者が他にいるか見てみよう」

　男は大声で笑った後、横に立って本とテキストをめくっていた助手のダマンドに尋ねた。

「ダマンド、私のために提案してくれ！会議について、そして次に予定されていることについてどう思う？」

「王様に、今どこに情報があるのか聞いてもいいですか？封印を解いて世界を征服するという情報は……」

　男は警戒した様子でグラスを一気に飲み干した。

「突然の質問の意図は？その情報は対策と関係があるのか？」

　ダマンダーは冷や汗をかきながら慌てて説明した。

「いやいや、王様は考えすぎですよ……その情報を知っているからこそ、部下の私が王様に提案できるのです……」

「まあ、あなたがどう考えようと、世界は最終的に私のものであることを知らなければなりません、わかりますか？この点で、悪い考えを思いつかないように……たとえ他の三人の王であっても、彼らがやっていることは一時的に私のために働いているに過ぎない！わかったか？もし考え直す勇気があるなら、私は礼儀をわきまえない……」

「わかったよ、親愛なる王様。 命をかけて誓うよ！」

　男はダマンダーの怯えた小さな顔を見て、彼が絶対に忠誠を誓っていることを確信してから、話を続けようと口を開いた。

「それで、状況はこうだ。昨日、【第三の王】から情報が託され、今は私の手中にある」

「……王様にお聞きしたいのですが、ギアは目覚め、私たちは彼女をコントロールできるようになったのでしょうか？」

「まあ、それは確かにまだ問題だ。【Gear】は現在、あの光の御子の下にいる魔法少女たちによって非常に厳重に守られており、彼女を堕落させることは難しい。

　堕ちる過程が難しいというわけではない、十分な闇が彼女の心を満たすことさえ許せば、彼女の魂を揺さぶり、堕落させることに成功するだろう……魔神様の知性によれば、彼女はすでに初期覚醒しており、堕落した後、彼女は間違いなく私と主人のシャープシューターのために世界を征服することができるだろう……

　十分な闇がある、それをするのに悪い場所は、あの忌まわしい奇妙な状況だ……」

「なぜかはわからないが、我々闇の勢力はここ大阪で全力を発揮できないし、魔神は長い間、大阪のこの地域には現れない……

　だから、それがわかるまでは、今のところ光の勢力には勝てない。

　彼らから【Gear】を奪うには、その前に問題の根源を突き止めなければならない」

「まあ、私の小さなものは、現在の状況を理解している。 以前、あなたは【第三の王】と【第四の王】を派遣して、【光明の子】の勢力に調査に行かせたが、結局、彼らはすべて失敗した、見ることができる、積極的に【光明の子】の部下を倒させることは非常に難しい……

　あの人たちは、以前よりさらに強力になり、【光明の子】の組織がますます強くなっているのがわかる、より多くの人々が彼らに望むようになった、このような希望の力は、あの神秘的な保護力の源である可能性が高い……このまま組織を発展させてもいいことはないと思うので、考えているのは、謎の力で要塞化されたこの街で彼らと激しく戦っても何のメリットもないのだから、奇襲をかけるのはどうだろうか、ということだ。

【光明の子】の組織さえ密かに解き明かせば、希望の力を切って守りを崩せるかもしれないし、【Gear】を手に入れれば済む話ではないのか？

【光明の子】の組織の人間は皆若く、願いを叶えるまでにそれぞれ心に傷を負っているので、それぞれが罠を仕掛けて排除するというのはどうだろう？」

　男の瞳孔が突然、明るい金色の光を放ち、ゆっくりと目を閉じた。 男が目を開けるまで、そう時間はかからなかった。

「素晴らしいアイデアだ！自分で戦いに行こうと思っていたんだ！で、どうやって彼らを出し抜く？」

「さすが我が王樣、実に賢明である！まず第一に、懸念される領域を優先する必要がある。それは、彼らの組織のリーダー、芽衣子という魔法少女だ。彼女は特に警戒心が強いので、いざとなったらこちらの計画がバレてしまうのではないかと心配だ……

　彼女を始末するために【第二の王】を送り込めばいい、【第二の王】の幻術能力は隙がないし、あの謎の子分も非常に強力だ。潜入に成功さえすれば、魔神が用意してくれた道具を使って彼女を排除できる」

「道具？あの【神の偽片】のことか？冗談でしょう！あれは魔神様がご厚意でくださった大切な小道具だ！かつては【第四の王】のもので、魔神様から新王の補充用に託されたものだ！失敗したら間違いなく魔神様に処刑される！」

「心配しないで！あなたの心配は私の知るところです！私は彼女の弱点を知っている。それをつかめば、彼女の力を最大限に引き出せる。彼女は非常に強力なモンスターだ。

【神の偽片】をうまく芽衣子の体内に埋め込むことができれば、彼女を新たな王に堕とすことができる。そうすれば、戦闘力を飛躍的に向上させることができるだけでなく、魔法少女たちの希望も葬り去ることができ、一挙に戦いを有利に運ぶことができる。

　完璧なプランではないか？」

　男は空になったグラスをそっと置くと、不吉な笑みを浮かべ、手を振りながら、どこからともなく手に呼び起こした散乱した闇の断片をダックマンに手渡した。

「【第二の王】に暗殺の任務を伝えてください、とても期待していますよ、ダックマン」

「わかりました、部下がすぐにやります！」

　ダクマンは眼鏡を直し、本をしまうと、すぐにエレベーターに向かって走った。魔人に堕ちた彼の心には、権力を握ろうなどという気はさらさらなかったが、放射能で廃人になった妻を【第一の王】の力で復活させるという、このまたとないチャンスをつかむために、ただ命がけで戦うことしかできなかった。

「どうだった？ 和歌子、この計画は完璧じゃないか！」

　和歌子は「ふふっ」と笑い、フリース毛布を体にしっかりと巻きつけて寝転がった。

「さすが王様、計画は本当に完璧です」

「ハハハ！それはいい、愛しい和歌子よ、今回は君を新しい王にするチャンスはないが、将来またチャンスはあると思うよ！」

　男は苦しそうにボトルを掲げ、大きなグラスにワインを注ぎ、一気に飲み込んだ。