無能な女子高生に生まれ変わった私が【運命の神】と呼ばれる？~堕ちて黒くなるはずのヒロインたちが、命をかけて私を守り、私と恋に落ちる、なんで？～

第11話 光と闇が交錯する街

　これまでの経験は幻覚ではなかったことは明らかだ。何度も何度も死の瀬戸際に立たされた。

　窓から刻々と変わる景色を眺めながら、円沢香は黙り込んだ。 おどろおどろしい怪物たち、拳銃を持った少女、自分を救い続ける少女……手がかりは限られているが、この世界がとても危険なものであることは容易にわかった。

　駅で食い荒らされた気の毒な女子高生も、路面電車で被害にあった乗客も、怪物が襲ってきてからしか怪物を発見できなかったが、彼自身は最初から最後まで怪物を見ることができた……

「ねえ、愛乃、さっきトンネルの中で巨大な怪物に気づいたことある？」

　愛乃はしばらく沈黙した。

「怪物？電車の広告のこと？」

「いや、『広告』が何を意味するかは知らないが、私が尋ねているのは、私たちが乗っていた路面電車を怪物が襲うのを見たかということだ」

　愛乃は突然、雄鶏が卵を産むのではないかという質問を聞いたように笑い出した。

「もちろん、そんなことはない！あなたの中二病は軽くないですね……よく現実のどこにモンスターがあるだろう！」

　愛乃の答えによれば、彼女はこれまで怪物に遭遇したことはないはずで、その怪物は自分自身のためにやってきたに違いない。自分が幼い頃から災難体質だったからだ……

「さっき怪物を見なかったけど、私は一ヶ月前に霊異な事件に遭ったことがある……」

　さっきまで携帯電話のゲームに夢中だった翔太が、突然口を開いた。

「また、その奇怪な事件です!あなたが間違って見たと言いました！ベランダにかかっている服の影だけです!」

「あり得ない!その時私が起きてトイレに行ってベランダを通る時、母の部屋の窓から怪物を見ました!人間の姿ですが、全身が金属でできていて、その後、とげのある手に変形してお母さんを刺すところでした！

　私が携帯電話を取り出して警察に通報しようとすると、それはすぐに3階の窓から飛び出し、あっという間に消えて、そんなことは人間にできることではありませんでした!」

　愛乃は円沢香を手で引き寄せ、彼女を自分の懐に抱いて、まるで慰めているかのような口調で話した。

「彼を信じるな、彼はビデオゲームに洗脳されたんです！」

「そうじゃないって！もういい！次にあなたもその変な人を見つけたら私を信じます!」

　携帯電話ゲームを続けている翔太を頭を下げた円沢香さんは、胸を震わせました。彼が怪物に遭遇したとは知りませんでした。

　自分はもっと悪いことを招くかもしれないが、少なくとも自分は銃を持った少女の助けを受けることができます。もし、あの怪物を倒す方法がなかったら、翔太は無惨にも殺されていたに違いない。

　円沢香さんは夜中にこっそりこの家族を離れることを諦めました。

　とはいえ、あの銃を持った少女はいったい誰だったのか？ なぜ彼女は私を助けたのか？ そしてなぜ彼女は凝冬村の巫女を思い出させたのか？

　しばらくして電車が駅に到着し、駅を出るやいなや涼しい風が吹いてきた。

　暗雲に満ちた空が裂け、暗雲が徐々に散っていき、上空から柔らかな光のカーテンが降り注ぎ、まるで滝のように街の片隅に流れ落ち、黄金色に輝き、暖かく拡散していった。

　景色は素晴らしかったが、通りの光景はまったく違っていた。 ひどい身なりの人々が歩道に列をなして座り込み、通行人に物乞いをしていた。 中には皮膚が黒く斑点があり、手足がない者もいた。

　男の子の1人が一番可哀想で、顔全体が腐っていて、片方の目しか見分けられませんでした。

　突然、警官服を着た何人かの男がライフル銃を持ってホームレスの足元の地面を掃射し、彼らは驚いて逃げ出したが、少年だけは虚弱に頭を抱えて地面に伏せた。

「ちょっと待て、私のためにその子を解放してやってくれ！」

「チェ、あなたは国貿部部長の娘でしょう、いいでしょう！この男の子は運がいい！」

　男は力を入れて男の子を置き去りにした。彼は風に吹かれて倒れたヨシのように地面に落ちた。

　怒った円沢香は口を開けようとすると愛乃に手で口を押さえられた。

「あいつらには絶対に手を出すな。あいつらは【第三の王】の厳冬騎士団（げんとうのきしだん）の警備部員で、意のままに殺す権利を持っている」

「【第三の王】？厳冬騎士団？あれは何ですか？」

　愛乃は周囲を注意深く見回し、誰もいないことに気づいてから、あえて小声で言った。

「厳冬騎士団は軍閥勢力の一つで、彼らの首領は【第三の王】と呼ばれる竜石だった。

　政府が崩壊し、見せかけのものとなった今、多くの過激派が権力を求めて戦いたがっている」

　愛乃は頭を下げて地上の少年を見た。少年は突然憎悪の表情を浮かべ、指で愛乃の太ももをひどく掻いて、体を回して虚弱な姿勢でビルの闇の中に逃げ込む。

「しまった！あなたの太ももは出血し！」

「大丈夫です。これは普通のことです。ホームレスを相手にすれば、このような末路になるだろう」

　愛乃は男の子が逃げるところを見て、表情がだんだん重くなった。

「彼は放射能の影響をたくさん受けて、まもなく死ぬだろう」

「嘘でしょ！なぜ彼は死んだの?誰も彼を救えないの？」

　円沢香の瞳は震えながら、いつのまにか目元に涙が流れた。これは漫画の中の世界ではないのか？ なぜ漫画のように素敵ではないのか？ 怪物、災害、階級の抑圧さえも！

「仕方ないですね、彼らは【圏外（けんがい）】から密入国したホームレスで、最も的存在歧视された存在です」

「【圏外】大阪市以外では、何らかの理由で放射線が氾濫し、人，の生存に不向きだと言われており、生き残った人たちはみな神秘の力で守られている大阪市に逃げ出して生き残った」

「まさか、この世はもう終わりだというのか？」

　衝撃の中に失望した円沢香を眺めながら、愛乃は慰めの表情を浮かべた。

「実は大丈夫です！この都市は暗いが、依然として幸せで明るいです」