第82話誰?

私(武田勝頼)「気になる事とは?」




 主立った家臣らが武田勝頼本陣に到着。




高坂昌信「本当に奥平の使者かどうかでありますか?」


山県昌景「高坂の働きにより、貴重な情報。織田信長が岡崎に到着している事。を得る事が出来ましたし、恐らく事実である事も理解しています。そして徳川家康と共にこちらに向かって来る事も事実でありましょう。そして奴を捕獲した場所が、狼煙台として活用されて来た事実も把握しています。ただ……。」


内藤昌豊「何か引っ掛かる点でも?」


山県昌景「長年、三河で活動している私であるが……鳥居強右衛門なる者を私は知らない。」


私(武田勝頼)「三河に携わった経験のある馬場はどうだ?」


馬場信春「う~~~ん。山県以上の知識は私にはありません。」


私(武田勝頼)「鳥居強右衛門なる人物を知って居る者は?」




 答える者無し。




私(武田勝頼)「他に不審者は?」


山県昌景「確認していません。」


私(武田勝頼)「となると……。」


山県昌景「狼煙を使って城に合図を送っていた事は認めていますので、鳥居が使者であった事は確かであります。ただ気になる事が……。」


私(武田勝頼)「どうした?」


山県昌景「鳥居は奥平の直臣では無く、此度のいくさに参戦している某かに従って。正確には個人的に城に入った。奥平から見て陪臣となるかも怪しい者であります。」


馬場信春「我らの包囲網を突破する事が出来る。土地勘があるから選抜された可能性は?」


高坂昌信「(ん!?地場の者か……?しまった。菅沼正貞に確認しておくべきだったか……。)」


山県昌景「可能性があるとすれば、それでありましょう。ただ……。」


馬場信春「どうしたのだ?」


山県昌景「使者として機能するかどうかも怪しい所がありまして……。」


馬場信春「どう言う事だ?」


山県昌景「まず他家に赴く際に必要な儀礼を把握していません。これは彼の能力に問題があるでは無く、単に知らないだけであります。もし岡崎に信長。変な者をたくさん抱えている織田信長が居なかったら、援軍要請は失敗に終わった可能性が高かったのでは無いか?と。


 加えて上司が誰であるのかも定まっていない。謂わばいくさで稼ぐために城に入ったような人物を奥平貞昌が何故抜擢したのか?城の中には、徳川家康は勿論の事。織田信長とも面識のある者。それも貞昌の直臣も入っていますし、家康から派遣された家臣も居ます。


 貞昌が何故彼らを使者として立たせなかったのか?私には理解する事は出来ません。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る