第7話予言

武藤喜兵衛「もし私が今から話した内容によって内藤様と高坂様が不利な状況に追い込まれる事はありませんよね?」


私(武田勝頼)「約束する。」


武藤喜兵衛「それでも危害を加えるような真似をしました場合、私も罰していただけますか?」


私(武田勝頼)「心配するな。そなたも武田にとって重要な事だと思っているのだろ?」


武藤喜兵衛「はい。」


私(武田勝頼)「申してみよ。」


武藤喜兵衛「はい。内藤様は殿に……。」




 内藤昌豊が高坂昌信を伴って武田勝頼に伝えた事。


「東美濃で多くの城を攻め落とし、高天神城も手に入れれば御館様(武田勝頼)は有頂天になってしまう事でしょう。さすれば亡き御館様(武田信玄)からの家臣の意見を聞かなくなる事でありましょう。その結果、無理な決戦を行い。それが原因で多くの家臣は討ち死にを遂げ。結果、武田は滅びる事になってしまいます。」




武藤喜兵衛「内藤様と高坂様はこのように述べ、殿に考えを改めるよう訴えていました。」


私(武田勝頼)「私は彼らの事を軽んじている?」


武藤喜兵衛「いえ。そのような事は御座いません。内藤様は上野。高坂様は北信濃の重要拠点を託されている事がその証左であります。同じ事は馬場様や山県様。そして内務を担当する跡部様に長坂様にも言える事であります。」


私(武田勝頼)「だよな……。しかし何故このような事を言って来たのだ?」


武藤喜兵衛「どうやら内藤様が……。」




 内藤昌豊はこの宴席の場で長坂釣閑斎と口論。その内容と言うのが……。




武藤喜兵衛「『山県は結果を出したが、そなた(内藤昌豊)はこれまで何をして来たのだ?亡き御館様(信玄)の温情だけで出世したのでは無いのか?』と言われた事がどうにも収まりがつかなかったらしく……。」


私(武田勝頼)「実際はそうでは無いだろう?」


武藤喜兵衛「はい。比較対象となりました山県様が内藤様の事を『(昌豊は)誠の副将である。』と称している事でもわかるかと。」


私(武田勝頼)「わかっていない奴が俺の周りを侍らっている事を知らせたかった?」


武藤喜兵衛「酒に酔ったふりをして殿に伝えたかったものと思われます。」


私(武田勝頼)「しかし跡部、長坂の実務能力も?」


武藤喜兵衛「中に入って見て、跡部様長坂様の仕事ぶりには感嘆の思いであります。」


私(武田勝頼)「この1年。私は彼らとは……。」


武藤喜兵衛「美濃三河。そして遠江といくさ続きでありましたので、内藤様と高坂様との意思疎通は……。」


私(武田勝頼)「4人(内藤、高坂。馬場、山県)はまだここに居るか?」


武藤喜兵衛「はい。」


私(武田勝頼)「全員集まる機会はなかなか持てぬ。皆を集めてくれ。」


武藤喜兵衛「わかりました。」

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