第4話天正2年の武田勝頼

 天正2年と言えば、武田信玄が亡くなった翌年の事。




 その前年。元亀4年は武田信玄逝去に伴い、これまで将軍足利義昭による包囲網に苦しめられていた織田信長が反撃。将軍足利義昭の追放に成功した信長は、近江越前へ進出。朝倉義景と浅井長政を自害に追い込んだだけに留まらず、兵を再び西へ動かし畿内を掌握。


 この動きに呼応したのが徳川家康。武田の勢力圏内にある三河北東部の国衆奥平貞能、定昌親子を寝返らせるなど巻き返しを図った年。




 織田、徳川の動きに黙っているわけにはいかなかった武田勝頼は、父信玄の遺言を破棄。翌天正2年1月から4月に掛け東美濃を席巻したのを皮切りに、6月高天神城を開城させ天竜川以東の遠江を獲得。更に天竜川を押し渡り、徳川家康の居城。浜松城下に火を放つなど


「武田勝頼ここにあり!!」


を世に知らしめた1年でありました。と言う事は……。




私「(武田勝頼の中では一番良い年だな……。でも待てよ。今は何月だ?もしこれが正月早々だった場合、美濃の東部に遠征して織田信長に戦わなければならないんだよな……。私……いくさなんかした事無いぞ……。)」


「殿。如何なされましたか?」


私「いや。何でもない。少し考え事をしていた所だ……。」


「あれだけ飲まされたのですから仕方ありませんね。」


私「どのような飲まされ方をしたのだ?」


「もし私でしたら……命を縮めていたでしょうね。なるもんじゃないですね。殿様何て……。」


私「(俺はここでも殺され掛けていたのか?)」


「殿。如何なされました?浮かぬ顔をされて……。」


私「いや。少し悪い夢を見ておって、それを思い出していた所だ。」


「いやしかし皆笑顔でありました。あの難攻不落と謳われて名高い高天神を攻略したのでありますから。それも御味方の被害もありませんでしたし、新たに頼れる味方も手に入れる事が出来たのでありますから……。」


私「ん!?高天神を落としたのか?」


「嫌ですね殿。殿の知略の賜物で手に入れる事が出来た城をお忘れになられるとは。惚けるにも程がありますよ。」


私「(高天神を落としたと言う事は、とりあえずの懸案事項は片付いている。と言う事だな……。そうなると次に待っている出来事となると……ん!?)」

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