相州鎌倉平直方邸・頼義、襲撃者の正体を知るの事
「
「うむ。偶然、と言ってしまえばそれまでだが、その死に様までが符合しているとなると何やら因果関係があるのでは、と疑いたくもなる」
「例えば……『
「あり得る話ではある。都の陰陽師までとは行かずとも、こんな地方にもこういった人を呪い殺す術や、またそれをはね返す呪術に長けた方術師などがおるやもしれん」
「金平、このような呪術に心当たりは?」
頼義は金平に話を振った。十代の頃から「鬼狩り」の一員として様々な怪異に接してきた彼ならば、あるいは何か知っているかもしれない。
「わからん。
金平は同じ「鬼狩り紅蓮隊」の一人であった
「忠常が呪詛を行なったという証拠でもありゃあこちらとしてもお上に訴えて奴を処罰することもできるんだがなあ。まあもし奴が実際呪詛を行っていたとしても証拠が残るようなヘマはしねえだろう」
現代人である我々には、今の貞光の言葉には違和感を感じるが、当時の律令制において「
「まあ、呪詛うんぬんに関してはさして問題では無い。その件以降同じ目にあった者もおらぬしな。それよりももっと面倒なモノがあってのう」
「面倒?」
「うむ……時にそなたら、ここに来るまでに何者か出会ったりするような事はなかったか?」
「!?会ったどころじゃねえ、都合三度は殺されかかったぞ俺たちは!アイツらの事なんか知ってんのかとっつぁん!?」
金平が立ち上がって怒鳴る。貞光と忠通は(やはり……)といった風で顔を見合わせた。
「
「異形だ。恐ろしく手足が
金平がざっと連中の特徴を述べる。貞光たちはさもありなんとかぶりを振った。
「そうか、やはりお前たちにまで既に手をかけておったか『
「八束小脛……?それが連中の名ですか?」
「そうよ、その名の通り
「忠常どのの!?確かに『鎌倉党に与するものは殺す』というような事を言っておりましたが……」
「ふん、おそらくお主らが『鎌倉党』に加わる手勢の指揮官だとでも思ったのだろう。手の早い事よ」
「何者なんでえ、あの連中は。
金平があの賊たちの異様な動きと戦闘能力を思い出しながら言った。
「この国に古来より住み着く異形の者だ。人なのか、鬼なのか、あるいはその両方なのか知れぬ。奴らは朝廷に従わず各地で無法を行う
「土蜘蛛!?ではあの『まつろわぬ民』の末裔という事ですか!?」
頼義は敵の思わぬ正体に驚きを隠せなかった。土蜘蛛……かつて幾度となく朝廷に反旗を翻し無法の限りを尽くした「まつろわぬ民」。京においては叔父
「まったくよ、こんな
「忠常とやり合うにはそうした連中との戦闘も避けられぬ。いかんせん普通の人間とは勝手の違う連中だ。こちらもそれなりに装備を揃えて臨まねばどうにもならぬ。どうも奴らにことごとく先手を打たれていて、こちらは現在のところ劣勢よ」
忠通は頭をうなだれる。事は思っていたより深刻らしい。
「それについて、先だって朝廷より我が
「ほ、
ようやく飲み干した盃を投げ捨て、貞光は立ち上がって隣の兄弟に言う。忠通は目を
「うむ。ここに居ても自体は進展せぬしのう。ひとまずは鎌倉に向かい、『鎌倉党』の者共と合流してこちらでも軍備を整えるとしよう。ひとまずは……」
忠通もまた盃を投げて立ち上がる。
「党の次席である
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