第8話 椀物の作法

 仲居として大変悩ましい問題が、ひとつあります。

 それは『お椀』を下げるタイミング。


 お客様が、蓋をきっちり閉めてしまうと、仲居は食べ終えられたのか、まだ口をつけていらっしゃらないのかが、わかりません。

 冷めてしまうからと、お召し上がりの途中で蓋をされる方も多いので、下げるタイミングに苦慮します。


 ですので、お椀を食べ終えられたら、ふせる時にちょっとだけ蓋を斜めにずらして欲しいんです。

 それが蓋ものの「食べ終わりましたよ」の合図です。

 そうすれば、一目で下げていいのかどうかが判断できます。

 

 仲居が皿を引きにくいシチュエーションのトップ1は蓋物で、2番目は空の器に箸を乗せたままにしたお客様。 


 箸が器に乗せられてると、

「お箸を除けて下さい」

 的な、お声かけの手間が増える。箸は必ず箸置きに。


 3番目は御椀に出汁だけ残っているとか、お皿に付け合せだけ残されてるとか、

「食べるんか、食べないんか、ハッキリせーや!」

 と、心の中で叫びたくなるお客様。

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