ボーイッシュ系女子を助けたら学年一の美少女だった件

夜桜さき

プロローグ ボーイッシュ系女子を助けたら学年一の美少女だった件

「やばい、やばい遅刻だ!」

 いつも通りの朝だったはずだったのになぜか今日は目覚ましのアラームが鳴らなかった。急いで学校の準備をするが間に合うかわからない。

 (学生諸君の一部は思うかもしれないがなんで母親が起こしてくれなかったって?)

(それは両親共々海外で働いているからだ!)、というよくわからない自問自答をしているうちに学校の準備が終わり、トースターに入れておいたパンが焼けた音がしたのでリビングへと向かった。


「やっぱ朝はパンだよな〜」


 そんな呑気なことを言っている暇はなく刻一刻と遅刻への時間は迫っている。

 高校までかかる時間は歩いて20分、走れば10分ぐらいで着くかもしれないが今の時刻は8時38分。学校の校門が閉まり遅刻扱いになるのが8時50分。大分焦らないとまずいことに気がついた。

 とりあえず焼けたパンジャムを塗って口に咥えて学校に行くことにした。

「ひってひまふ(いってきます)」と誰もいない家に挨拶をして学校に行った。

 (誰もいないと言ったが一人暮らしではなく一個下の高校生の妹がいるけど、妹はちゃんと目覚ましで起きて学校に行ったみたいだから誰もいないと言っている)、とまたよくわからない説明を誰かにしていた。


(てか、パン咥えたまま登校って漫画かアニメの世界でしかみたことないわ!あと、これパン咥えたままだと走るのきついし息がしづらすぎる!)


 そんなことを思っていると目の前に膝を抑えながらしゃがんでいる高校生くらいの男の子を見かけた。

 遅刻がかかっているが、怪我をしてそうな人を見て見ぬできる性格ではないので事情を聞くことにした。


「だいひょうふでふは?どふぉかけがひてまへんは?(大丈夫ですか?怪我してませんか?)」


 ついうっかりパンを口に咥えているのを忘れてしまい、そのまま喋ってしまった。


(おおぉぉぉ!やらかした〜いくら焦ってるからってパン咥えたままはないやろ、これが女の子の前だったら人生終わってた...)



 そんなことを思いながら咥えているパンを手に持ち男の子の方を見た。男の子の制服は膝らへんが破れており膝から少し血が出ていて、そして走るのが慣れていなかったのか靴擦れも少ししていた。


「絆創膏入ります?」


 そんなこと言っているうちにふと気がついた


(あれ、この制服うちの高校と一緒じゃね?もしかしてこの子も遅刻ギリギリで焦ってたら転んだのかな?)


 そんなこと思っていると可愛いらしい、か細い声が聞こえてきた。


「大丈夫です.....でも、絆創膏はくれるとありがたいです......」


 あまりにも声が想像より可愛く、顔は見えていないが、髪も短くスカートではなかったので芯のある低い声などを勝手に想像していたから不意打ちで少し固まってしまっていた。


「あっ、うん待ってて今絆創膏あげるから」


 そう言って俺は急いでカバンの中を漁ってその男の子にあげた。


「ありがとうございます....あとは自分でできるので......」


 そう言われると自分は遅刻ギリギリだったこと思い出し腕時計を見たが8時47分だったので、男の子に

「高校一緒だと思うから何かあった言って!!」と言い残してパンをまた咥え学校に行くことにした———


     ◇


 なんとか学校に着くことはできたが時間は8時51分

(最悪だ....遅刻だ)門には学年主任である鈴木恭介すずききょうすけが立っていることに気がついた。

(鈴木先生めっちゃ怖いから嫌なんだよな〜)とそんなことを思いながら遅刻したことは仕方がないので咥えてるパンを食べ終え門に立っている鈴木先生に謝りに行った。


「小林ぃ〜お前また遅刻したのか〜?」


(今更だが俺の名前は小林蓮というぜ!)とよくわからない説明を誰かにし、鈴木先生に遅刻したわけを説明しようとした。


「今回はちゃんと理由があるんです!!」

「お前今回で8回目だろ信用できるか。」

「はい....そうですね。」


 説明すらさせてもらえず今回は反省文を書かせられることになってしまった。

(みんなはちゃんと遅刻しないようにね!!)と誰かにアドバイスをしながら自分の2-4と書かれた教室へ向かった。


 クラスにつくと友達の一ノ瀬海斗いちのせかいと

「お前また遅刻かよ〜」と元気な声で話しかけてきた。

「そうなんだよ、道で人を助けててさ〜」

「嘘つけ〜、お前が人を助けるわけがないじゃん〜」

(友達にも信用されてないとか泣いていいか?)そんなことを話しているうちに海斗がいつも通りどこから聞いたかわからない情報を話してきた。


「そういえば蓮、知ってるか?」

「何が?」

「学校一の美少女の佐藤凛さんが学校遅刻したらしいぜ?」

「へぇ〜」

「なんだよお前興味ねえよのかよ〜」

「だってあんま知らないし見たことない」


 本当に知らなく、佐藤凛という名前は聞いたことあるが、勉強やスポーツができることがこの学校で有名だからであって、尚且つクラスも違うし顔も見たことのないので海斗の話にはあまり興味がなかった

(てか、学校遅刻しただけで噂になるってどんだけ有名で人気なんだよ!俺もそんくらい有名になりたい!!)と切実な思いを思っているうちに担任が入ってきて朝のホームルームが始まった——

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