第40話「子供がさりげなく気をつかわなきゃ」

運命的な再会を果たし、紆余曲折あったが、お互いの気持ちを確かめ合い、

付き合い始めて順調な颯真君との交際。

そして、深まる遥、海斗君との深く固い友情。


よしよし!

全てが順風満帆!

……とは、簡単に行かない。


何故なら、最大の難関が残っていたから。


敵?は身内に居た。


そう、娘命の溺愛パパ。

私のお父さんである。


私に彼氏が出来たと聞いたら、お父さんは良い顔をしないだろう。

頭ごなしに反対はしないだろうが、

颯真君を認めて貰い、交際を許して貰う難易度は相当高い。


起こるであろう、いろいろな事態を考えた末、

私はお父さんへ、颯真君と再会した事さえ伝えてはいない。


と、いう事で交際して約1か月の節目……


颯真君とじっくり相談し、まず、うちのお母さんに颯真君を紹介する事となった。


とりあえずお父さん説得への第一歩だ。


最初から、遥とともにお母さんは、私の味方。


既に颯真君と奇跡の再会を果たし、交際を開始した事は伝えてある。

それだけじゃなく、女子の先輩として、

遥とともに、恋の貴重なアドバイスも多々して貰った。


クラスの女子たちと折り合い、上手く行き過ぎるくらい上手く行ったと報告したら、

すっごく喜んでいた。


海斗君の部活が休みの日。


放課後、以前作戦会議を行った、隣町のハンバーガーショップにて話す事に。


私と颯真君は、遥と海斗君を誘い、お茶を飲みながら、そのむねを伝えたら……


こういう相談を受けるのは想定内!とばかりに、笑顔の遥が「はた!」と手を叩く。


「ねえねえ! 颯真君を彩乃ママへ紹介する時、私と海斗も一緒の方が良いよ、絶対! 後日、健太パパへ紹介する時は尚更なおさらだね!」


と、提案して来た。


そして、


「クラス女子たちと折り合いをつけたのと同様、しっかりと作戦を練った方が良いよ! 健太パパは、今回の件では一番の強敵、ゲームで言えばラスボスだからさ」


遥ったら、今回の件で一番の強敵がお父さんって……まあ、確かにそうだ。

ラスボスというのも否定しない。


それに、もしも6歳の頃の話が蒸し返され、行き違い等があり……


「おい、凜! なぜ、もっと早く言わない! 10年前、颯真君に助けて貰ったお礼を、先様に言わないといけないじゃないか。俺は大恥をかいたぞ!」


などと、私は勿論、

お母さんまで、お父さんから責められる可能性がある。


そんな事、絶対に起こってはならない。

避けなくてはいけなかった。


だから、ウチのクラスへ転入して来た颯真君が6歳の時、

私を助けたのが、ほんの少し前に判明したばかり……

お父さんには、そう伝えるつもり。


同じ理由で、颯真君も自分の両親に、私との再会、交際開始を伝えてはいない。


だってだって!

「ウチの両親が、すぐお礼に来ない」のを、

颯真君のご両親に「失礼な家族だな」と思われたくないもの。


そこらへんの事情を、颯真君も大いに同意し、私に気をつかってくれたのだ。


「ややこしいよね! 親同士の付き合いも大変だよ。子供がさりげなく気をつかわなきゃ」


遥は、腕組みをしてしかめっ面。


そんな遥の傍らで、海斗君が「うんうん」と納得し、頷いていた。


恋愛の先輩のふたりは、親がらみで、いろいろ経験しているようだ。


という事で、今回の件をクリアしたら、私は改めて両親を連れ、颯真君のお宅へ、

10年前のお礼へ伺うつもり!


ふたりが交際する報告も兼ねてね!


という事で、4人でいろいろ話をして、全員が了解。


遥と海斗君カップルの双方の両親対策、経験談も、ふたりからたっぷり聞き、

今後の作戦に活かす事となった。


本当にありがたい!

私も颯真君も、遥と海斗君には大感謝だ!


そんなこんなで、作戦会議が終わり、お店を出て、

私はスマホを使い、自宅へ電話。

訪問の趣旨を話し、お母さんのスケジュールを聞き、OKを取った。


こうして、海斗君の部活が次の休みの、平日の放課後に……


私は颯真君、遥、海斗君の3人を引き連れ、お母さんに会う事となったのである。

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