第36話「最高に楽しい下校タイム、帰宅タイム」

「みんな! 忘れてないと思うが、前にも言った通り、俺、クラス全員と仲良くしたいんだ。凛ちゃんと遥ちゃんと、メシくらい一緒に食べてもOKだろ?」


「皆、転入して来たばかりの俺に、いろいろ親切にしてくれてありがとう。本当に感謝してる。でも、こんな俺の考え方が嫌ならば、無理してメシに付き合わなくて構わない。普通にクラスメートとして接しようぜ」


「それに俺、他のクラスの奴とも仲良くしたいんだ。遥ちゃんの友達の松本海斗君とかさ、彼にも入って貰って構わないぞ」


「よし、いっしょに行ってもOKな者だけ、俺と一緒に行こう!」


と、真剣な表情で自分の考えをきっぱり述べた颯真君が、

クラスの女子達、そして男子達にも呼びかけた。


結果、私と遥、他クラスの海斗君も加わり……

当初から、参加していたクラスメートたちの参加は、

本人の意思、つまり任意となった。


さてさて……果たして、どうなるのか?


特に颯真君目当ての女子たちは、大半が離脱?

と思っていたら…………予想外!


何と何と!


今まで、颯真君にくっついていた女子で、離脱した子はゼロだったのである。


それどころか、今まで参加していなかった新たな女子、男子達も参加。


驚いた事に、クラスの9割以上が参加する、

大所帯のランチ行となってしまったのだ。


結果、学食の一角は、ウチのクラスメートばかりに。

その中で、違うクラスの海斗君がぽつんと居るけれど……


しかし、しかし!

その海斗君、『ぼっち』にはならなかった。


陸上部の若きエースと呼び声高い海斗君と話したかった、

そんなウチのクラスの女子、男子も相当居たらしい。


という事で、海斗君、ウチのクラスのいろいろな人たちと、

にこやかに話をしている。


何人かの女子は、海斗君に熱い視線を送っていた。


おいおいおい!

再びモテ期となった海斗君?


ちょっと、彼女である遥が気になったが……

海斗君が、ウチのクラス女子たちと話しても、さわやか笑顔!

すっごく余裕。

余裕のよっちゃん。


一方の海斗君も、遥が他の男子達と話しても、全然平気!


……と、思ったら、少し心配だったらしく、海斗君が遥をチラ見していた。

あはは、海斗君ったら、遥がちょっかい出されないか心配なんだ、可愛いなあ!


でもでも、遥は勘がすっごく良い子。

すぐ、心配そうな海斗君の視線に気づいて、笑顔で彼へ手を振っていた。


校内では公認カップルだし、ふたりをとやかく言う人は居なかったのだ。


うん!

素敵だ!

そんな信頼し合うカップルに、私と颯真君もなりたいな!


という事で、学食は、いつもより更に「わいわいがやがや」大騒ぎ。


そして、楽しそうに食事をする海斗君が居るのを見た、

他クラスの者たちもどんどん参加。


クラスの垣根を超え、一気に交流の輪が広がってしまった! ……のである。


こうして、初めてのランチ作戦……は、大大、大成功となった。


ウチのクラスの男子も女子ほとんど9割が一緒に食事。

更に他のクラスの生徒まで押しかけて来た。


私も颯真君も遥も海斗君も、いろいろな大勢の人と、楽しく話す事が出来た。


教室へ帰ってからも、ず~っとランチの話で持ち切りだった。

ちなみに、今回参加しなかったクラスメートは、その事を聞き、

大いに後悔していたようである。


不参加者は、女子も男子も、わざわざ颯真君の席に来て、


「もし明日もやるのなら、ぜひ私にも声をかけてね」


「俺も行きたい。絶対に声がけしてくれよな」


と告げて来たから。


うん!

よし、よし。


颯真君へ恋して、見える目の前の世界が、がらりと変わっただけじゃない。


私の周囲は人も、どんどん変わって行くみたい。


急激な変化を体感し、少し不安はある。


けれど、私はひとりで歩いてはいない。


大好きな颯真君が、親友の遥が、頼もしい友だちの海斗君が支え、導いてくれる。

逆も、またしかり。


私は愛する人。信じあえる親友、友人の為に頑張って支えてあげたい。


ということで……

ランチ作戦大成功の余韻もあって……


午後の授業をふたつ受け、苦手だった勉強も午前中同様、

前向きに楽しむ事が出来た。


下校は、私、遥、颯真君の3人で。

今日は寄り道せず、このまま帰宅。


颯真君ファンのクラス女子へは、丁寧に元気にあいさつしてノープロブレム。


さすがに察してくれたみたい。


颯真君は笑顔で、元気良く歩いている。


「帰りは、凛ちゃんと一緒に俺の彼女も送ってくれ、頼むぞって、部活の練習に行く海斗君から言われたよ」


と、笑った。


その遥も笑顔である。


「やっと、凛の感覚を体験出来るね」


え?

私の感覚?


何、それ?


「遥、私の感覚って? どういう意味?」


「だって! 凛にとって海斗は、私と違う意味で親友でしょ?」


遥の言う通りだ。


私にとって海斗君は、遥の彼氏の立ち位置を超えた、信頼すべき存在だ。


肯定し、私は頷く。


「うん、そうだよ!」


そして気になっている事を聞く。


「でも海斗君、……私の事、妹みたいに思ってない?」


対して、遥もあっさり認める。


「あはは、凛が海斗の妹って、そうかも! それに私も、颯真君の事が弟みたいに感じるもの」


颯真君が弟?


うわ、それって……


と思ったら、すかさず颯真君から反論。


「おいおい、何だ、それ? 遥ちゃんより誕生日は先だぞ、俺」


「あははは、仕方ないって。だってそうなんだもん」


「颯真君、諦めた方が良いかも。私と颯真君、遥たちにとっては、既にいじられる妹と弟キャラだよ」


私が諦めて言えば、颯真君も苦笑。


「はは、ま、いっか。俺も遥ちゃんの親友兼弟になれるよう頑張るから! ところで今度の土曜日、ダブルデートは『楽葉原』だろ?」


「うん! おたくの凛の、奇跡の初恋成立のお祝い記念! 『楽葉原』でダブルデートだよ~ん!」


そう!

ハンバーガーショップで、

週末、土曜日の4人ダブルデートも相談し、行先と内容を決めた。


結果、アニメとラノベ、そしてゲームもろもろの聖地。

『楽葉原』で、4人で楽しく過ごすって決めたのだ。


しかし……私のメンタルは、


「うう、面と向かって、遥から『おたくの凛』と言われると微妙」


「あはははは! いいって、いいって、今や私も海斗もおたくだし、颯真君もアニメやラノベ嫌いじゃないでしょ?」


「ああ、全然問題ない。大好きだし、楽葉原へも遊びに行きたい」


うん、この前、話して颯真君もアニメとラノベ、そしてゲームが大好きな事が判明。


ちなみにゲームに関して、私は少しうとい。

なので、颯真君にいろいろと教えて貰うつもり。


「と、いうことで、めでたしめでたし!」


姉・遥に完全に仕切られ、苦笑した私と颯真君であったが……

最高に楽しい下校タイム、帰宅タイムを満喫したのである。

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