第34話「遂に4人は全員集合」

隣町のハンバーガーショップ。


店の様子を良く知る遥によれば、めったにウチの学校の生徒は来ないらしい。


だから4人で話すのは目立たない、バッチリのシチュエーションだという。


万が一、目撃されて指摘されても、

「学校帰り、4人でしゃべってましたが、何か?」 で通せる……と、思うって。


ということで、このハンバーガーショップで、待ち合わせをする事にした。


でもさすがに、4人一緒に連れだって、行くのは目立ちすぎる。


時間差で、下校し、別行動をする事となった。


放課後が楽しみで、私は少し気もそぞろ。


いか~ん!

授業中は、勉強に集中!


と気合を入れ直して、授業が終わり、


「さようならあ! 失礼しま~す!」


と元気にあいさつ。


私の学校の一日はあいさつに始まり、あいさつに終わる。

なんちゃんて。


ということで、まず私と遥が下校。


一緒に電車に乗り、ふたりで隣駅へ。


そして駅前の『お店』へイン!


私と遥はいっつもふたりだから全然問題ナッシング。


続いて颯真君が「お~い!」と片手を振って現れ、

最後に海斗君も「お待たせ!」と両手を大きく挙げ、

自分の存在をアピールしながら現れた。


これで遂に4人は全員集合。


わお!

何か、探偵ごっこみたいで、楽しかった。


ちなみに颯真君は、「今日は用事があるから、一緒には帰れない、失礼するね」と、

クラス女子達へ丁寧ていねいに断りを入れたそうだ。


ここで席替え。


私と颯真君。

遥と海斗君。

カップル同士で横に並び、向かい合う。


段取りは決まっていた。

最初は、初対面同士の挨拶。


最初に颯真君が、海斗君へあいさつ、そして自己紹介。


顔は互いに見知っていたけれど、こうやって面と向かい話すのは、初めてなのだ。


「初めまして、俺、岡林颯真おかばやし・そうまです」


対して、海斗君もあいさつと自己紹介。


「こちらこそ、初めまして。松山海斗まつやま・かいとです」


そして、私は颯真君へ合図。

ふたりで一緒に、遥と海斗君両方へ、改めてお礼を言うのだ。


遥と海斗君の熱いフォローなくしては、

私と颯真君はず~っと『すれ違いのまま』だったかもしれないから。


「遥、海斗君、いろいろと本当にありがとうございました!」

「遥ちゃん、海斗君! いろいろと本当にありがとうございました!」


対して、遥と海斗君は、


「凛! 颯真君! 良いよ、そんなにかしこまらないで」

「そうさ! 俺がいたらなくて、亮が無理やり押しかけて来るとか、凛ちゃんにも颯真君にも迷惑をかけたんだ!」


「何も言わないで! 私たちの感謝の気持ちを受けて!」

「そうだよ! 俺と凛ちゃんが、こうしてちゃんと付き合えるようになったのは、ふたりのおかげさ!」


と、こんな感じのやりとりとなった。


あらら、ちょっと声が大きくなったけれど……

幸い、私たちの周囲に、他のお客さんはほとんど居なかった。


だから、注目!

されずにすんだ……のである。


遥の見立て、このハンバーガーショップを選んだのは大当たりだった。


さてさて!

私と遥は親友だし、私と海斗君も遥経由で親しい友だち。


颯真君と海斗君が初対面だっただけ。


あいさつが終わると……


海斗君が改めて、相原さんの一件を謝罪した。


「この前は本当に申し訳なかった! 亮は、二度とあのような強引な真似はしないと誓った。凛ちゃんの気持ちは颯真君にある。『俺は身を退くよ』と約束してくれたよ」


経緯けいいを聞いているから、私も颯真君も怒ったりはしない。

そもそも、相原さんの『押しかけ』は、海斗君の責任ではないし。


「ちゃんと、亮とは約束したから大丈夫とは思うが、何かあったら、すぐ俺に言ってくれ。相談でもなんでも、気軽に連絡してくれ」


と海斗君は言った。


そして遥と私の了解を得て、海斗君と颯真君は連絡先の交換をした。


海斗君は、相原さんと話した際、

「私と颯真君の出会いを知っている」と相原さんから聞いた。


そして颯真君が私をかばい……

相原さんの誘いをきっぱり断った私が、嬉しそうにした事。


ダメもとでアタックしようとしたのだが、

それで相原さんは私の事を諦め、身を引いてくれたという。


「なぜ、お前が凛ちゃんと颯真君の『出会い』を知っているんだ?」


そう、海斗君が相原さんを問いただしたら、具体的な名前は言わなかったが、


「ウチのクラスメートから聞いた」と、言われたらしい。


「仕方ない。俺がクラス全員へオープンにしたから」


と、颯真君が言い、

私も、


「颯真君が話すのを、私がOKしたから!」


と、海斗君をいたわった。


そんな3人のやりとりを見て、遥はとても嬉しそうだった。


……面倒見の良い遥は勿論、律儀な海斗君の誠実さにも触れ、


すぐに4人は、昔から長年付き合って来た友だちのように仲良くなった。


話は『今後の事』へ進んで行く。

遥の立ててくれた進行スケジュールは、4人の間で共有されるのだ。


改めて、状況を確認しよう。


私と颯真君の出会いのエピソードは、クラスメートたちは知っている。


そして昨日、颯真君が相原さんの件で、私を守ったという事実。


その上で、私への気持ちを改めて、確かめたいと、

颯真君がデートに誘ったという事にする。


でも、私は奥手で颯真君と1対1でデートするのが大いに不安。

だから遥と海斗君を一緒に誘った……4人で会おうという事にする。


そして、何回か、4人でダブルデートをする。


デートだけじゃなく、学校でのランチも一緒に4人だけで一緒に行く


クラス女子の誘いは、颯真君にきっぱり断って貰う。


ここで、大体の女子は察して、分かる、理解する。


……という流れ。


遥と私が相談した提案は、おおむね4人全員が賛成でOKだった。


それから……4人で意見交換も。


まず私!

遥が作戦を考えてくれて大感謝!

 

だけど私自身の恋なんだから、いろいろ考え、アクションを起こしたい。


自分で積極的に行かなくちゃね!


やはり、最大の問題はクラスメートたちとの折り合いだ。


「じっくり考えたけれど、最初から、ず~っと、この4人の『べったり』じゃ、まずいと思う」


私は自分の意見を述べた上で、提案する。


「学校ではしばらく4人だけでのランチは避けた方が良いかもしれない。颯真君が、私と遥も誘ってくれて、海斗君も入り、クラスの女子達も一緒のランチをするのはどうかな?」


すると颯真君が、同意してくれる。


「俺も凛ちゃんの意見に賛成だ。彼女達と話していると、なんとなく俺と凛ちゃんの気持ちを察した子が多いんだよ。ほら、皆、俺と凛ちゃんの出会いのエピソードを知ってるし、昨日の相原さんとの件を見て、納得! ……って感じなんだ」


ここで、遥が「はい!」と手を挙げる。


「じゃあ、しばらくは、週末は4人でデートするという形にして、校内のランチはクラスの女子達と一緒にしない? どうせくっつき男子も来るし、海斗にも入って貰ってさ。颯真君が転入した際に話した通り、クラスの全員と仲良くしたいというポリシーは変えず、自然に凛と颯真君の初恋を実らせて行く……という形を試してみたら」


すると海斗君が、


「ああ、俺も遥に賛成だ。凛ちゃん、颯真君、女子達への説得は大変かもしれないが、その作戦に乗ってみないか? 俺も大いに協力するよ」


と笑顔で話してくれた。


私と颯真君に異存はない。

見つめ合い、頷き合って、


「「ありがとうございます! 宜しくお願い致します!」」


改めてふたりで、遥と海斗君へお礼を告げた。


4人全員が気持ち良くなったところで、話が更に盛り上がった。

週末のデートの事も含め、いろいろ相談。


結果、ハンバーガーショップにおける作戦会議は大成功となったのである。

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