第26話「うん! とっても素敵!」

「告白するよ! 凛ちゃん! いや、山脇凛さん! 俺、岡林颯真おかばやし・そうまは君が好きだ! いや、大好きなんだ! 付き合って……ぜひ! 交際してくれないか?」


私の素直な気持ちを伝えたら、颯真君から、そう告白された。


やったあ!!

遂に遂に!!

10年越しとなった私の初恋は実ったのだ!!


嬉しい!!

本当に嬉しい!!

おおげさだと言われそうだけど、ここまで生きて来て一番嬉しいかも!!


私の目にはまたも、大粒の涙があふれ……


それを見て、嬉しそうに?にこにこした颯真君に言われてしまう。


「ははは、凛ちゃんは本当に泣き虫だなあ」


「うふふ、そうよね? でも今度はうれし泣き……かな」


「うれし泣き? そうか!」


「うん! でも泣いてばかりじゃ、ダメだよね。もう少し強い女子に、私はなる!」


きりっと、決め台詞ゼリフを言ったつもりなのに、更に颯真君に笑われてしまう。


「あはははは、私はなる! って何だ、それ? 凜ちゃんは、どこかのマンガの主人公かよ?」


颯真君の笑顔と笑い声に釣られ、つい私も笑ってしまう。


「あははははは、だよね、自分で言っておいて、おっかし~」 


お互いに告白し、正式に付き合う事となっても、

まだまだ一緒に居たく、別れがたくて……


なんやかんやで……

すっかり颯真君と話し込んでしまった。


かと言って、特別な話題などなく、他愛もない会話が多かった。


「びっくりしたよ。颯真君は、バスケットボール、上手だね」


と、私がたずねたら、


バスケットボールは、この街から引っ越して、小中と、しばらくやっていたそうだ。

そこそこ才能があって、中学校ではレギュラーだったそうだ。

A市の高校入学後、すぐに引っ越しの話となったので、

あちらの高校では入部しなかったという。


「いや、今日はもやもやしててさ、無心にシュートしたい気分だった」


「だよねえ」


「でも、バスケやりに公園へ来て良かった! 偶然にも凜ちゃんと会えて、お互いの気持ちも確かめ合う事が出来たから! 本当に雨降って地固まるだな!」


と、颯真君は屈託なく笑っていた。


そんなこんなで、気が付けば……

もう太陽が沈み、辺りには、夕闇ゆうやみが迫っていた。


慌てて腕時計を見たら、午後5時30分過ぎとなっている。


「うわ! 颯真君! すっかり話し込んじゃった! もう5時半だよ! 私、早く帰らないと!」


「おお、そうか!」


「うん! いつもより帰りが遅いから、お母さん気にしているかも」


「ああ、じゃあ帰ろう! 俺が凜ちゃんの家まで送って行くよ!」


「あ、ありがとう!」


という事で、ふたりで、座っていたベンチから、慌てて立ち上がった。


ここで、私は勇気を出す。


「颯真君!」


「ん?」


「あ、あの……10年前のショッピングモールみたいに、手をつないで、歩いてくれる?」


「ああ、良いよ! お安い御用さ!」


颯真君は快くOKし、手を伸ばして来た。


対して、私は勢い良く手を伸ばし、しっかりと颯真君の手を握った。


ああ! 

温かい!


颯真君の手の大きさは、変わってしまったけれど……

この手のぬくもりは……全く同じだ!!


私の記憶、そして手自体も、しっかりとおぼえていたんだ!


すっごく感動!

気持ちが弾む!

心が躍る!


そんなうきうき気分の私へ、颯真君は問う。


「ところで、凛ちゃんの家はこの近くかい?」


「うん、近いよ。……この公園から歩いてすぐのマンション……颯真君の家はどこ?」


「ああ、俺の家も、近いよ。ここから歩いて、3分くらいの賃貸マンションさ」


「あは! じゃあ、ご近所さん……みたいなものだね!」


「そうだな! ご近所さんだ。今まで離れていた距離を考えたらな」


「うん、転入して来た時、A市だって聞いてびっくりした。すっごく遠いものね」


A市は、私達が住むこの街から電車で8時間以上かかる。


「ああ、引っ越して凜ちゃんには二度と逢えない。子供の頃の素敵な思い出として、大事に胸にしまっておこうと思っていたんだ」


「でも、颯真君。私たちはまた逢えたんだよ! そして今日も助けて貰って、い~っぱい話が出来て……」


「そして、お互いの、10年間温めていた本当の気持ちに気付いて、付き合う事になった……」


「私達の出会いと再会って、そして付き合う事になったのは、不思議……だよね?」


「ああ、不思議だ! 互いの行動が少しでも違っていたら、こうはならなかった! 本当に素敵だ!」


「うん! とっても素敵!」


と、話に花を咲かせながら、道案内し、

颯真君は私のマンションの1階まで送ってくれた。


「……じゃあ、颯真君、後で必ず電話するね! 絶対メールも送る!」


「ああ、凜ちゃん、待ってる! それに俺からも電話をするし、メールも送るよ!」


とふたりで固く固く約束し、名残惜しくも、バイバイしたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る