第12話「おう! 任せておけ! 俺に出来る事なら、何でも協力するよ」

親友のはるか、遥のステディーな彼氏、海斗君のふたりと、

3人で楽しくわいわい冗談を言いながらランチをしていた私、りん


何も知らない人がはたから見れば、

こういうのって、どう見えるんだろう?


海斗君のハーレム状態?


そこへクラス95%女子プラス強引参加の男子とともに現れた颯真そうま君。


ランチを楽しむ私の事を「じ~いっ」と見ていた。


うわ!

視線を感じる!


間違いない!

うぬぼれとかじゃない。

颯真君、わ、私の方をず~っと見てる。


だから、私も視線を走らせ、じっと颯真君を見た。

あいさつをしたせいか、そんな事も自然に出来た。


少し離れていたから、颯真君の表情までは分からない。

だけど、なんとなく、『つまんなそうな雰囲気』を感じた。


無言で、しばらく私を見ていた颯真君。


取り巻くクラス女子たちから促され、私から視線を外し、券売機へ。

パネルを見た後、お金を入れていた。


どうやら、食券を買っているようだ。


そんな颯真君の姿を見ていたら、


さりげなく遥と海斗君もチェックを入れていた。


「ねえ、海斗。今、食券買ってる彼が……例の颯真君よ」


海斗君は、数多の女子に囲まれた颯真君を見て、素直に驚いていた。


「うわ、彼が颯真君かい? 本当に凄いな、周りが女子だらけだ」


すかさず遥が言う。


「だからあ、昔のモテモテ海斗と同じだって、言ったじゃない」


「いやあ、俺はあそこまで凄くなかったよ。でも……彼、りんちゃんの事、ず~っと見ていたな。もしかして、俺が一緒で彼に誤解されないか?」


勘の良い海斗君。

迷子事件の経緯いきさつと、今回の再会も聞いたから、

なんとなくピン!と来たようだ。


「大丈夫だよ、海斗! 取り巻き女子たちがしっかりと説明してくれるでしょ」


遥のアシストに頷く海斗君。


「ああ、そうだな。彼女たちから、ご注進があるか、俺は遥の彼氏だって、……じゃあ、大丈夫だな」


ここで、遥から提案。


「ねえねえ! ふたりとも! 今の時間だったら、まだ屋上が空いてるよ。今日はさ天気もピーカンだし、屋上へ行こうよ!」


わお!

それ大賛成!


ずっとここで颯真君を見ているわけにもいかないし、

後から来る生徒たちの為に、席を空けるのがマナーだもの。


と、いう事で、私は遥、海斗君とともに、屋上へ向かうべく、学食を出たのである。


というわけで、学食を脱出?し屋上に来た。

ウチの学校の屋上は相当広い。


昼休みを楽しむ生徒たちの姿は、はるかの読み通り、まだ少ない……


今日も天気は快晴。

雲ひとつない。

吹く風はさわやかで、とても気持ちがいい。


ウチの学校は大きな街にあるけれど、周囲に高い建物がなく、

屋上からの眺めはとても絶景。


これは昔から変わらないらしい。


卒業した女子の先輩からも聞いてるし。


特に今日みたいな日は最高だ。


頭上を見れば、一面、真っ青な大空。

遠くを見れば、美しい山並み。

大パノラマという趣きがある。


私は、屋上から見えるこの風景が、学校の中で一番好きだ。


きっと、自分の青春はって、振り返る時には、

必ず脳裏に浮かぶに違いない。


その時、私はどんな大人になっているのだろう?


将来どうなるのか、全く見えないし、分からない。

けど、充実した青春時代を過ごし、素敵な大人になりたいと思う。


さてさて!

私たちは、屋上の一角に陣取り、持ち歩いてる敷物を敷いて座った。


屋上に来る事が多いので、敷物は3人全員ひとつずつ持っている。


ウチの生徒はランチを摂る際、屋上好きや校庭の芝生好きが多いから、

敷物の所持率は高いんだ。


周囲に人が居ないのを確認し、遥が言う。


「ねえ、りん


「なあに、遥」


「この際、海斗にもさ、……凜の応援して貰うのってどう?」


「え? 海斗君に私の応援をして貰うの?」


「うん! 私もさ、男子の気持ちが、ばっちり分かるってわけでもないし、海斗にいろいろ聞けば、颯真君へのベストな作戦も万全に立てられるじゃない」


「成る程。颯真君へのベストな作戦かあ……」


詳しく説明されなくとも、私にも遥の言わんとする事は分かる。


海斗君から、いろいろ聞いて、同じ男子である颯真君への、

ベストなアプローチ方法、対応をアドバイスして貰う。


まあ、海斗君は私の迷子事件も知ってるし、

先ほどの状況で、感づいている雰囲気もある。


だから海斗君の目の前で、堂々と私に聞いているんだよね、遥は。


うん!


遥に言われ、少し考えたけど、決めた。


海斗君は優しいし、いろいろ親身になってくれそうだ。


迷惑じゃなければ、ぜひ、お願いしたい!


そこまで、ぱぱぱ!と考え、私はOKした。


「もしも、迷惑じゃないのなら、アドバイスしてくれるのなら、ぜひに」


私のOKを聞き、遥が速攻で聞く。


「海斗」


「おう!」


「私たちの話を聞いて、なんとなく分かると思うけど、凛の応援をしてあげて」


「へえ、凛ちゃんの応援かあ」


「ええ、迷子になった凛を助けてくれた颯真君、彼が凛の初恋の相手なのよ」


「おお! 初恋……懐かしいなあ。俺もあったなあ、初恋……」


海斗君が遠い目をしたので、遥がぴしゃり。


「ごめん! 余分な回想は後にして。今は凛の初恋をかなえる為、海斗にいろいろ聞きたいの、男子の心理とかね。出来れば、手助けもしてほしい」


私の為に、切々と訴え、海斗君にお願いしてくれる遥。

嬉しくなった私は、涙が出そうになる。


遥の言葉を聞き、海斗君はにっこり。


「おう! 任せておけ! 俺に出来る事なら、何でも協力するよ」


と、快諾してくれたのである。

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