何でだよっ。

Asahi-Yuhi

君が変えた口ぐせ。

──『君以外でもいいんだよ?』


 俺の口ぐせだった。


 本心で俺はずっとそう思っていたのに。


 “α”という性を利用するしかなかった。


 なのに、君─水留みと─が俺を狂わすんだ。


 無意識なその誘惑が。


 今日は、付き合って一ヶ月の記念日で、クリスマス。


 いつになったら切り出せるのだろうか。


──君と番になりたいと。

※番とは、思いの通じあったαとΩの、αがΩのうなじを噛むことで番の関係が成立すること。


 俺らは運命だから。


 水留の首筋を見るたびに、その思いが溢れていく。


 そう思いながら、俺は君との待ち合わせ場所で待っていた。


「ねーねー。もしかして、瑠色るい?」


 どこかで見たことがあるような女が話しかけてきた。


 水留に会うまで、男女問わずにずっと遊んでいたから誰だか一目じゃ分からない。


「え、誰?」


「覚えてないー?バーで遊んだじゃん」


 あー、あの女か。


 コロコロ男を取り替える遊び人だったやつ。


 俺にガチ恋したのか知らないけど、一時期うるさかったやつだ。


「あー」


「思い出した?これから、空いていたら遊ぼ?」


「無理。彼女来るから」


「瑠色に特定の女が出来たわけ~?」


「いや、男だよ」


「は?」


 そう言うと、俺の顔を見てから、女は引いたような仕草をして離れていった。


ーー


 待ち合わせ時間から三十分もたった。


 今日は待ち合わせ時間の一時間くらい前からいた。


 だから、すれ違うはず無いのに水留が来ない。


 いつも二十分くらいは遅刻するけど、こんなに遅くなることがあるのか?


 心配で、取り敢えずラインをした。


『水留?あとどれくらいで来るか?』


 そう送ると、思った通りに既読なし。


 機械音痴だからな~。


『迎えにいくからな』


 そう送って、水留の家に向かった。


ーー


「水留?いるか?」


 貰った合鍵で水留の家に入って、声をあげた。


「あれ?、瑠色くん、来ちゃった?」


 水留の声がして、声の方向に向かった。


 そこは、寝室だった。


 ドアを開けると、には、ヒート状態の水留がいた。

※ヒートとはΩが起こすαを惑わす発情期のこと。


「は?、それで外出てないよな?」


「でて、ないっ」


 俺は、水留のいつもに何倍も増した色気に負けそうだ。


 俺と水留が初めての水留のヒート。


 俺は理性が危なかった。


「水留、薬は?」


 俺はそう言って、水留に近づく。


「ここに、ないっ。ねぇっ、瑠色くんが、メチャクチャにしてっ」


 水留のヒートに煽られてる俺は、水留の言葉に誘惑される。


 水留の乱れた姿を直視して、俺の中で何かが切れた。


 天然で小悪魔な表情にクラクラする。


──、押さえられない。


「分かってるのか?」


 そう言い、水留を押し倒す。


「お願いっ」


 水留のかわいい上目遣いとおねだりに俺はもっとおかしくなった。


 君のその誘ってくる唇に、俺のそれを重ねる。


 水留のとろけた表情に俺は余計煽られる。


『もう、止めないから』


 俺の言葉に水留の全身が真っ赤に染まる。


 俺はそれに余計に調子にノリそうだ。


ーー


 だんだんと空が暗くなっていく。


 暗闇の中に甘い声が響き渡る。


 今日だけは許して。


『水留のうなじを噛んでもいい?』


 俺は君の耳元で甘い声でささやく。


『うんっ。いい、よっ』


 君の俺に全てを任せた声に俺は止められなかった。


『愛しているよ、水留』


 そう言い、俺は君のうなじに口を寄せた。


ーー


 翌日、俺は水留より早く起きた。


 かわいい水留が俺の腕の中でスヤスヤと眠っていた。


 君の首筋の跡を見て、俺のものになったことを実感する。


 俺は、世界一幸せになった気分だ。


「ふぁあ、瑠色くんだぁ。おはよ~」


 君の寝ぼけたその声に胸がいっぱいになる。


「おはよ~。水留は今日もかわいいね」


「あえっ、ありがとっ」


 真っ赤になってうつむく。


 俺はそんな無自覚な仕草にそそられて、俺は調子にのる。


「ねえ、水留からのおはようのキス、ちょうだい?」


 君は戸惑った顔を見せながらも、俺の頬に口づけをした。


「ん。ありがと」


 今日は合格って言ったところかな。


「へへ」


 君は頬を緩ませて俺を見る。


口にしてね?」


 俺はいたずらに言う。


「...うん」


 君は消えそうな声でそう答えてくれた。


──『水留以外じゃダメだから』


 それが今の俺の口ぐせ。


 君が俺を変えたんだ。



ーーーー


 読んでくださり、ありがとうございます。

 少しでもおもしろいと思ったら、星(評価)を下さい。


 作中で濁された文中であったことは皆さんの想像にお任せします。


 こちらは、ネッ友のmireiのお題小説となっています。

 チャラ男×天然というお題で書かせていただきました。私の性癖が入っている部分もありますが、たくさん考えて作りました。

 下のURLはmireiのX(旧Twitter)のものです。

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何でだよっ。 Asahi-Yuhi @asahi_yuhi

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