第2話 黒ギャルが好きです!

真緒と出会ったのは、部活帰りの電車内だった。


陸上部の長距離担当の俺は、毎日、とにかく走る。

何のためにこんなことをしてるのか、うっかりしていると忘れそうになるのだが、理由は簡単。運動部という肩書きのためだ。


学校の中でのポジションは大切で、そこに何の部活に入っているかは、は大きく影響する。

クラスで権力を持つのは、いつだって運動部だ。たまに、帰宅部のヤンキーくんも権力争うに絡んでくるが、サッカー部や野球部のイケメンくんには敵わない。所詮は声がデカいだけだからだ。


さて、本題。


その日も俺は、クラスの立ち位置を保つために、好きでもない長距離走の練習をしていた。


クタクタで帰りの電車に乗る。


(今日の夕飯はカレーだっけか。やっぱりカレーが最強の食べ物だよな。ラーメンと寿司も良いけど、身近って意味だとダントツだ。)


カレーに想いを寄せて電車に揺られること10分。


グンッ。


手すりを掴んでいなかったら、放り出されたであろう急停止。


(‥‥‥まさか)


そのまさかで、人身事故である。


<人身事故の影響により、急停止しました。乗車している皆様にはご迷惑を‥‥‥>


経験上、この手のアナウンスは役に立たないという持論を持っているので、碌に聞かなかった。


結論を言うと、俺達はその電車に2時間閉じ込められた。


ふと、視線を車内の乗客に向ける。

仕事帰りのサラリーマンやOL、遊び終わり風の大学生。中には、塾帰りであろう小学生もいる。

みんな、今日という1日を戦い抜いた戦士だ。そして、その戦いは明日も続く。それが生活というものだ。

誰一人、こんなところで何時間もいることになって嬉しい人間など存在しない。


しかし、その中、キラキラした顔でスマホにポチポチと何かを打っている女の子がいた。


「‥‥‥神崎真緒?」


その変わった女の子は、俺が目指しているクラスカースト最上位の黒ギャルだった。

\



神崎真緒。


女子バレー部の主戦力選手の一人であり、俺が所属する1年5組の中心人物。

普段は金髪にピアスと、攻めた格好をしているが、女子バレーの試合の際には髪を黒く染めているらしい。

黒髪姿を見た奴は、口を揃えて「そっちの方がいい」と言う。


俺も写真を見たことがある。

一言で言うなら、「清純派女優」ってところか。

でも、俺は黒ギャル姿の方が好きだ。


何故か。

性癖だ。


昔から、ギャルと呼ばれる女子に惹かれている。勝手に喋ってくれているところも楽で良い。

あと、シンプルに派手な見た目が好きなのだ。

そんな俺の好みのど真ん中に、神崎真緒はいた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る