第15話 MPK被害

 「ハァ!!」


ドガッ!


 回し蹴りでトドメを刺す。リザードマンが光の粒子に変わっていく。


「ふぅ。なかなかレベル上がんないなぁ」


「この辺だとそろそろ上がらないかもな! 違う狩場を探すか!」


 今日は鉱山とは反対の湿地帯に来ていた。違う場所に移動しようとしていたガント以外の3人が妙な違和感に気付く。


「なぁ、周りが静かすぎないか?」


「変ねぇ、モンスターも見当たらないし……。」


「遠くで。何か。聞こえる」


ドドドドドドドドドドドド··········


「おい! なんか来るぞ!」


 見えたのはモンスターの大群であった。リザードマン、ワイルドボア、ロックゴーレムなどが押し寄せてくる。先頭に人が走っているようだ。


 なんか、こっちに向かってきているような……。

 あの人俺たち目掛けて走ってくるじゃないか。


 俺達のすぐ横を通り過ぎる。ローブを被っていて顔は見えないが、プレイヤーネームは見えた……レッドネームだ!


「ヤバイ! トレインを擦り付けられた! MPKを狙われてる!」


 焦りながら構えるガント。

 俺はその言葉は初めて聞いたからどういうことかが分からない。


「MPK?」


「説明してる暇はない!  これは逃げれないぞ! 死ぬ気で闘えよ!」


 目の前にモンスターの大群が迫る。モンスターが目視できるくらいに近づいてきた。腹をくくって構える。


「オレが前のやつを抑える! フーマは抜けたやつを狙え! モー二も闘いながらおれら前衛の回復を頼む! イブ、デカイの頼むぞ!」


「「「了解!」」 」


「挑発!」


 最前列を走っているモンスターのヘイトがガントへ向かう。多勢に無勢だが、ガントは諦めない。


「来いやコラァァーーッ!!」


ズッンンンッッ


 迫り来るモンスターを前傾姿勢になり、足を踏ん張って盾でくいとめるガント。

 モンスターの勢いに押されて数メートル地面を滑る。


「ヌオォォォォーーー」


 前がつっかえたことで進みにくくなったのか、モンスターの勢いが落ちた。

 今がチャンスかもしれない!


「身体強化!」


 身体に白いモヤを纏い、駆け出す。


「次いで、新スキル! 身体加速!」


 周りがスローモーションになる。

 ガントの横を抜けてきたモンスターに肉薄する。


「フッ! ……フッッ!」


 目の前の一体のリザードマンには心臓に中段突きを放つ。続いてワイルドボアには首に回し蹴りをお見舞する。

 二体とも一撃で光の粒子に変わる。


 いけるかもしれない!


 次々とモンスターを葬っていく。俺のHPは被弾することでドンドンと減っていく。


「エリアヒール!!」


 突如周りが光に包まれた。

 HPが回復したことを左上に表示されているバーを確認することで知った。

 

「モー二、サンキュー!!」


「下がって……撃つ」


 三人が一旦一斉に下がる。

 この連携の良さも俺たちだからこそできる連携だろう。


「行く。ブラックホール」


 黒い渦のようなものがモンスターの中心に出現する。


ゴゴゴゴゴ


 重低音とともにあらゆるものを飲み込んでいく。もちろん、モンスターも例外ではない。次々と飲み込んでいく。


「流石だぜ! イブ!」


「まだ来るぞ! 油断するなよぉ! ……ハァ!!」


 ガントが油断したところに喝を入れてなんとか戦線を維持する。

 次々とモンスターが押し寄せてきてキリがない。


 やべぇ、キリがない。集中力が切れそうだ。魔力も心もとない。


「魔力。切れる」


「私も魔力がもうないわ!」


 イブとモー二が、もう魔力切れだ。

 俺ももう厳しいかもしれない。


「はぁ。はぁ。っっはぁ。もう限界が近い!!」


 ガントが抑えていたが、限界を迎える。

 その先からも押し寄せるモンスター。

 あぁ、初の死に戻りかぁ……。


 その時。


 頭上から。


 何かが。


 飛来した。


「フンッ!!」


 カッッッ!


 ッッッズドォォォォォンンンンッッッッ!

 

 その衝撃に飲まれたそこら一帯のモンスターたちが光の粒子に変わる。衝撃波はおれ達が近かったこともあり、モロに受ける。


 土煙が晴れてくると、まだ残る煙の中に一人の人が佇んでいた。

 大きな背中がその存在を何倍にも大きく見せる。


 俺はア然としながら呟いた。


「なんだ? 何があったんだ!?」


「ん? みな、無事かのぉ?」


 よく見るとガタイのいいお爺さんであった。

 一体このお爺さんは何なんだ?


「みんな無事です。さっきのはお爺さんが?」


「ふぉっふぉっふぉっ。そうだが。驚いたかね。危ないところだったから飛んできたわい」


 何とか無事だったことを伝えて状況を把握しようとするが、なかなか難しい。


「助かりました。ありがとうございます」


「よい。よい。一緒に残りを倒すかのぉ」


「「「「はい!」」」」


 そのお爺さんと残りのモンスターを倒していく。大体のモンスターをお爺さんが一人でなぎ倒し、片付けてしまった。


 一撃を放てばモンスターが吹き飛ばされて光の粒子に変わっていく。

 一人で無双状態だ。


 この人は……一体何者だ?

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