第5話 初めての街探索

カランコローン


 目の前には瓶詰めされた色とりどりの瓶が並んでいる。

 少し薬臭いようなそんな匂いを感じる。

 なんか薄暗い。


 初めて道具屋に来たけど、凄い怪しげな感じだな。


「いらっしゃいませー! 何かお探しですかー?」


 うおっ。

 この店員さんなに!?

 NPCの筈なのに仕草が人間とかわらない。

 違和感がないなぁ。一体どうやって動いてるんだろう。


 ぼーっと考え事をしていると。

 

「お客様? 大丈夫ですか?」


「あっ! ゴメンなさい! なんでもないです! 大丈夫です!」


 こんな対応もするのか。

 すげぇなVR。

 というかCWOが凄いのか?


「な〜に見惚れてんのよぉ。早く回復薬買いなさいよ! ジッと瓶を見てれば上に薬の名前が表示されるから、店員さんに持っていくのよ。はい。これが回復薬よ」


 おぉー。モー二が優しい。

 あまりない事だからこっちも動揺するわ。


「あ、あぁ。ありがと」


 回復薬を二個受け取り、それをカウンターにいた店員さんに手渡す。

 ちゃんと買うのを予想してカウンターに入ったぞ。


 なんだか感心する所ばかりだ。

 これはNPCに惚れる奴も出てくるんじゃねぇか?

 あっ、そういう遊び方もありって事なんだろうか?


「これ、お願いします」


「はい。一本1000マニーなので、合計で2000マニーになりま〜す」


 えっ。これ、お金どうやって出すんだ?

 初期で5000マニーはあるから、あるにはあるけど……。


「2000マニー払おうと意識してみて。手元に出てくるから」


 2000マニー払うよぉー。……おっ。手元に出てきた。


「はい。これでお願いします」


「ありがとうございましたー! またお待ちしてますねー!」


 笑顔の店員さんが見送ってくれた。

 パチッとウインクしてくれる。


カランコローン


 店を出たところで、ガントとイブが待っていた所に合流する。


 ウインクされちゃったよ。かわぃ……なんか隣から黒いオーラが……


「あんのNPCなんなのよ……」


 めっちゃ不機嫌〜。ガントが寄ってきて。

 慌てたように肩を引っぱられる。

 少し離れると。


「えっ。なんで不機嫌なの!? おまえ何した!?」


「おれは、何もしてないよ。店員さんにウインクされたからか?」


 なんで、あんなことされたんだろ。

 不思議だなぁ。

 特別なにかしたわけじゃないんだけどなぁ。


「あー。NPCからの好感度が良かったんだな。丁寧な言葉遣いとかで対応してると、好感度があがって特殊な反応したりするんだってよ」


 そんなことあるのかぁ。すごいなぁVRMMOって。

 あんな感じでアクションを起こされるんだったらみんないい対応をしたくなるんしゃないか?

 そんなことないのか?


「他にもなんか買っておいた方がいい物とか必要な物あるか?」


「後は無くても大丈夫だけど、少し街を案内してやるよ! そうだ! 冒険者ギルドに登録しておかねぇと!」


 また何やら重要な事を忘れていたようでガントが焦っている。


 しばらく歩くと剣が二つ交わっているマークのある建物が見えてきた。


「ここが、冒険者ギルドだ! クエストこなしたりすると、報酬が貰えるんだ!」


 重そうな扉を開ける。

 重さまで再現されている。

 また感心しつつ中に入ると。


「フーマはあそこの窓口で冒険者登録して来てくれ! 俺達は掲示板を見てくる!」


「あぁ。わかった」


 受付にいる女の人に声を掛けた。


「すみません。冒険者登録したいんですが」


「こんにちは。冒険者登録ですね。……はぃ。完了しました。クエストを受ける際にはお気をつけて」


 ガント達がいる方に歩いていく。

 クエストは紙で貼ってはるようだ。

 それぞれがピンで止められている。

 

 掲示板の紙の内容を眺めると、色々あった。

 グリーンウルフの毛皮とかホーンラビットの毛皮とかが多いなぁ。

 しばらく見ていると。


「登録は終わったか!? 終わったなら他を見て歩こうぜ!」


 ギルドを出ると次は武器屋に向かった。


 武器屋には屈強な強面のおじさんが店番をしていた。

 なんか凄い武器を作りそうだなぁ。


「俺達はこの武器屋で世話になってたんだ! でも、レベル的にもっと上の武器に変えちまったんだけどな!」


 なるほど。

 それぞれレベル帯にあった武器があるわけか。


「あっ……ここ……グローブある」


 イブがグローブの所を見つけてくれた。


「おぉ。ありがとイブ」


 拳の指の部分に鉄のプレートが仕込んであるグローブだった。

 初期のグローブは鉄のプレートはない。

 これで攻撃力が違うよと言いたいのだろう。


 レベルが上がったら考えよう。


 強面のオジサンから逃げるように店を出ると次は防具屋に向かった。


 ここにも屈強なオジサンがいた。

 兄弟かよ。


「ここでは一番防御力があるのはこのアイアンアーマーなんだ。素早さを重視するならこのウルフ系の皮鎧だな」


 なるほど。

 防御力を重視して素早さを落とすか、素早さを活かして防御力を落とすか。

 選択は自分で出来るというわけだ。


 なんでも自分で出来るから面白い。

 NPCと恋愛もできるだろうし、武器と防具だって好きなのが着れる。


 なんか……このゲームだけで色々な欲求が全部満たされる気がするな。

 ある意味、危険な気もする。


 その後も四人でしばらく街を探索するのであった。

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