誕生日に百合カップルにはさまれるのは許されますか?

しいず

第1話 文乃の誕生日1週間前

1週間後の11月21日はわたし、川奈文乃の誕生日。

誕生日と言っても、数少ない友達におめでとうと言ってもらって

夜に家族に祝ってもらうぐらいであったけど、今年の誕生日は今までと違う。

そう、今年は親友の百合カップルに祝ってもらえるのだ。


 とはいえ、こちらとしては2人に気を使ってもらいたくないし、平日で

学校もあるから、温海と夕はわたしの家から離れているから

当日の夜に呼ぶのも良くないかなっと思うし

共働きの両親に手間をかけさせるのも悪いと思っている。

なので、学校帰りに適当にファーストフードかショッピングモールの

フードコートにでもいって、いつもと変わらず過ごせばいいかなってと思っている。


「本当にそんなのでいいの?」


温海と夕に来週の誕生日の事を聞かれたから、この事を伝えたけど

温海が物足らなそうな反応をした。


「だって、当日は火曜日だし、かといって誕生日前に祝うのもって思ったからね」

「文乃って大雑把な割に、意外と細かい事気にするのね」

「誕生日とか記念日に関しては細かいんだよ。2人と出会ったり記念日もメモってある」

「変な事じゃないけど、文乃が言うとなんか怖い」


温海がなんか引いてるけど、2人と出会った日ぐらいメモっていいじゃない。

2人といつ出会ったかだけど、2人を初めて見たのは入学式の日で

入学式から少したってから声をかけたりはしたけど、わたしが一方的に

話しかけるだけで、ちゃんと2人と話をしたのは6月に入ってからだったりする。

その間、温海が百合カップルであるかを2か月かけてストーキ……いや、くまなく観察しをしていた。

それによって2人が百合カップルである事を確信して、たまたま3人だけでなった時


「リアル百合カップルに出会えて嬉しいです!」


て言って温海にドン引きされて、しばらく距離をとられたけど

夕は百合カップルと言う事に気づいてくれて嬉しかったらしい。

ただ、これが原因で教室でのキス事件があるまでは夕と温海が

付き合ってる事を否定して、教えてくれなかったけどね。


 この後も2人にかなりしつこい事をして、温海を怒らせたりして 

今みたく学校以外で会う事になるぐらいに仲良くなるまでは

さらに時間がかかったけど、わたしが思い切って声をかけた4月10日が

2人との出会いの日としている。

もっとも、これはわたし基準で2人がわたしが出会った日がいつなのかは知らない。


「まぁ、それはいいじゃない。誕生日はやはり当日に祝って欲しいんだよ。

でも、平日にわたしの家に来るのは大変だし、時間もないでしょ。

だから学校帰りに、何時もみたくよりみちして簡単に祝ってくればいいよ」

「確かにそうだけど……」


温海はなんかがっかりしてるが仕方がない。


「温海ちゃんは文乃ちゃんと仲良くなって、初めての誕生日だから~盛大に祝いたかったんだよ~」

「ああ、そう言う事か」


なるほど、温海は仲良くなって初めてのわたしの誕生日を祝いたかったのか。

去年はまだお互いの誕生日を祝う程の仲でなかったからね。

今のように学校で気軽に話したり、一緒に登下校するようになったのは

去年の冬休みに入る頃だから、今のように仲になるのは大分かかったんだよね。


祝ってくれること自体は嬉しいし、わたしとしてもそうして欲しいけど

温海の誕生日の時はプレゼントをあげたけど、ほとんど温海のおごりで

本当にわたしが祝ってあげたと思えなかったからなぁ。

温海本人は嬉しそうであったからいいけど、温海にまたお金を出してもらうのはね。


「温海の誕生日の時はほとんどおごりだったから、またお金を出してもらうのは

悪いかなって思ってね」

「そ、そう。べ、別に文乃の誕生日なんて、来年もあるし、今年は仕方ないわよ」


温海がテンプレのツンデレを出すけど、内心はかなりがっかりしてる。

ただ、温海の気持ちもわからなくもないけど、これはわたしが

「誕生日を祝うのは当日」と言うこだわりがあるので、温海には悪いけど今年は諦めてもらう。


「今年は仕方がないけど、その代わりに今度の日曜日に3人で出かけようよ」

「べ、別にそれでもいいわよ。ただ、この前お祭に行ったばかりだけど

文乃の誕生日だから、また行ってあげるわよ」


温海のテンプレツンデレがまた出たけど、単に素直に言えない性格だからね。

金髪(実際は黒髪だけど)ツインテールのお嬢様ってまさにツンデレキャラ

のイメージかつテンプレって感じだからね。

あと、お祭は地元の大きな神社のお祭で、5月のお祭と違って

山車がでて夜祭も行われるので、お祭としてはこちらの方が賑やか。


「もう~温海ちゃんは素直に行きたいって言えばいいのに~。

お祭に行って文乃ちゃんと別れた時『仲良くなって初めての文乃の誕生日を3人で祝いたいね』って言ってし~」

「ゆ、夕、それ言わないで」


ほうほう、温海さんそんな事言ってたんですね。

わたしの前では素直じゃないのはまさにツンデレですなぁ。

ただ、温海の場合は「デレツンデレ」って感じだけど、ツンデレの方がわかりやすいか。


「温海がそんなこと思ってたなんて知らなかったけど、ありがとね」

「し、親友の誕生日を祝うのは当りまでしょ。あたしも祝ってもらったし」

「そうだけど、わたしは盛大に祝ってもらわなくても気持ちだけでいいからね」

「文乃がそういうなら、プレゼントだけ用意するわ」

「わたしも~何かプレゼントするね~」

「ありがとう、2人とも。プレゼントは当日でいいからね」

「わかったわよ」

「文乃ちゃん、楽しみにしててね~」

「楽しみにしてるね」


こうして、夕と温海と日曜日に会う事になったけど2人にああいったけど

本音としては日曜日に3人で出かけるのは嬉しいし、本当は家にも呼びたかったけど

学校から帰ってくる時間を考えたら、1時間程度しかいられないから仕方なく諦めた。

なので、今度の日曜日がとても楽しみで、駅へ向かう足取りがとても軽かった。

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