魔王と始める四畳半からの異世界征服!
雪本 弥生
プロローグ
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『四畳半同盟』と殴りつけるように乱暴な字で書かれた薄汚い看板のかかる扉に手をかけると、中から話し声が聞こえてきた。
「ねーねー、西の魔王。そっちのマンガ取ってー」
「嫌じゃ、メスガキ!これは今からワシが読もうとしておったんじゃ!」
「このみかん美味いなぁ。ダニエル、これどこ産?」
「ハッハッハッ、何を仰る。それは青魚ではないですよ?」
「もしかして『ドコサヘキサエン酸?』って聞こえた?『どこ産?』って聞いたんだよ!ドコサヘキサエン酸が何かすらよく分かってねえし、俺」
僕が扉を開けると広がるこの光景にはいつだって慣れることはない。
大学の3年間、特に目的もなくダラダラとゲームでもして過ごしてきた四畳半の畳の真ん中に置かれたコタツと、それを囲む4人の侵略者達。
時計回りに順番に、メスガキ、メスガキ2、ゴリゴリマッチョ紳士外人、宇宙服に身を包む謎の男。
不審者達、という言葉を胸を張って言えるシチュエーションにまさか出会えるとは生まれてからついぞ20年間思ってなかった。
「あ、リンタローおかえりー。って事ではい、さようなら」
「コタツを明け渡したくないがためにこの部屋の家主を追い出そうとすんな!なにが『はい、さようなら』だ」
「うるさいなぁ。じゃあ、じゃんけんぽん!何も出さなかったからリンタローの負けね。ハイ論破ー……あがががが!?ぼ、暴力反対!!うえーん、何も言わず幼女の頭を鷲掴みにしてきたよこの人ー」
俺は嘘泣きしながらコタツの奥に隠れようとする白衣の幼女の腕を掴んで力尽くで引っこ抜こうとするがなかなか出てこない。
しかも5人いれば一人必ず犠牲者が出てしまうコタツの人数制限システムを皆理解しているためか、既にコタツの外にいる僕の事をコタツの中から蹴りで追い出そうとするクズ人間ども。
「いてっ、いてっ!ここの部屋とコタツの主が僕って事知ってる!?」
「「「「………」」」」
「無言で蹴り続けるなや!マジで嫌われてるみたいな雰囲気僕耐えられないんだけど!」
どうしてこうなったんだろうか。
思い返せば異世界転移を果たしてからというもの、ずっと平穏で平凡な堅実な生活を送るために努力をしてきたはずなのだ。
四畳半を拠点に、現地でバイトも始め生活の目途もたってきたところだ。
それがどうしてこんな不審者たちに絡まれる愉快な日常を送っているのであろうか。
いや、原因は分かっている。
あの日あの時、道端にボロボロで転がっていたあいつに目をつけられた時から僕の時間はおかしな動きで狂い始めたのだ。
そしてそれはたったの1週間前の事。
僕がこの異世界を征服するための悪の組織を結成したあの日に遡る。
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