亡霊狩り

猫町大五

第0話

『・・・・・・ホントに来るんですかい』

「そんなん、聞くもんじゃねえ」


 東京某所。夜の海上に浮かんだ数隻の小舟に、男達が潜んでいた。


「どこでも同じさ。上がやれってんならやるしかねえ。陛下でも親父でも変わんねえよ」

『しかし兄貴、港を狙えだなんて妙ですねえ』

『しかも目標の目星までついてる。こりゃあ相当臭いですぜ』

「うるせえ。――分かってるさ。新品同様の道具と弾に豪快な前金、用意が良すぎる。だがやるしかねえ、金を貰った以上はな」


 ――皆一様に食い詰め、残ったのは銃の腕のみ、そういう連中だった。


「手筈は変わらねえ。目標が突堤の端に停まったら、軽機と重機は指示通り射撃」

「了解」

「いつも通りやれ。外さねえよ」


 ――やがて突堤に、一台の車が現れた。


『目標視認!!』

「慌てるな!・・・黒の日産、四ドアフェートン、間違いねえな。――射撃用意!!」


 無線機から慌ただしい金属音が聞こえ、止んだ。


「目標・・・第一基点、左二〇の自動車。点射二〇〇!」

『点射二〇〇!』


 四丁の機銃が目標を睨む。


「重機三連。軽機九連、四十五発!」

『『『『・・・宜し!』』』』

「・・・撃て!」


 ――豪壮な射撃音、空薬莢と保弾板が跳ねる音。


『三連撃ち終わり!』

『九連撃ち終わり!』


頭目の男は遠眼鏡越しに、蜂の巣になる自動車を見つめていた。

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